慶應日吉・三田新図書館、関学、東大法科大学院棟、マレキアーレの家他―自然・先住建物と調和する建築。
〔第136回〕
前回のブログに挿入して、自然・先住建物に調和する建築について述べました。 そこで触れた 慶應義塾 日吉・三田キャンパスの先住建物と日吉新図書館・三田新図書館(槇 文彦)、関西学院のヴォーリズ設計の建築群とその後に建築された一粒社ヴォーリズ設計事務所の建物、東大本郷キャンパスの法科大学院棟(槇 文彦)について、文章だけでなく、実際の写真も見ていただいた方が、理解していただきやすいかと考えたのですが、前回のブログ 〔第135回〕≪先輩社員に質問する場合のマナーを知らぬ女は仕事の邪魔。 設計事務所の図面は一見、きれいに出来ている。≫https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201209article_9.html は、基本的には、職場における社会人としてのあり方について述べたもので、話の趣旨が異なる為、今回、別の稿として独立させた上で、写真を添付して述べ直させていただくことといたしました。
↓ が、千葉市中央区星久喜(ほしぐき) のN設計事務所 設計、新華ハウジング有限会社施工の建物、 “ 星久喜(ほしぐき)の家 ” です。↓
↑ N設計事務所。“ 星久喜(ほしぐき)の家 ”(千葉市中央区星久喜)↑
外壁材の色合いも、「いかにも建売」という感じで。 「モデルハウス」なら、もうちょっと、センスのいい配色・外観を考えられないの? ・・・・と思うのですが、考えられないのでしょうね・・・・。
特に、後ろの樹木の色合いとも合わない。
数年前、東京都江東区有明 の大塚家具のショールームに、大塚家具に実施していただいたブランド家具についてのインテリアコーディネーター対象の講習で、サポリティ=イタリア の家具について、「この家具のブランドは、特に、“建築家”の方が好まれるブランドで、よく、“建築家”の方とお施主様が一緒に来られて、“建築家”の方が、これを勧められ、“建築家”の方が離れられた時に、お施主様が『私は他の方がいいと思うのですが、先生がこれがいいと言われるもので・・・』とこぼされる・・ということが多いブランドです。」と説明していただいたことがありました。 確かに、サポリティ=イタリアの家具は魅力的なデザインではあるのですが、しかし、実際に住んで使うことを考えた時には他の物の方がいいと思う方もいておかしくないと思われるもので、実際に住んで使う施主の立場を考えない「建築家」は困ったものだとも思い、又、「建築家の作る家」なんて、ろくなもんじゃねえ、とも思ったものでした。
しかし、一方において、建築とは、建物だけで構成されるものではなく、家具の場合、作りつけの家具は建物をどうするか決める際に一緒に決めるのが普通ですが、置き家具の場合、一般の戸建住宅の場合、建物ができあがってから決めるか、せいぜい、建物の間取り図面が決定してから決めるということが少なくないようですが、建築とは、建物と置き家具とが合わさったものが建築と考えるべき性質のものであり、そうなると、せっかく、設計者がよくよく考えたデザインのものを作っても、最後の最後に、その建物に合わない置き家具を施主に選ばれてしまったのでは、せっかくのデザインが台無しになってしまう・・ということもありうるのです。 それを考えると、置き家具を選ぶ際にも、“建築家”がこれを選んでほしいと主張する気持ちもわからないわけではありません。
建物そのもののデザインを決める場合も、設計者・建築屋が、これはこの場所に合わない、こうした方がこの場所に合うと思っても、施主がそれをきいてくれない場合はあるわけです。 施主の家である以上、最終的には、設計者・建築屋が決めるのではなく、施主が決めるものなので、その場所に合わないと思えるものでも断れない場合が少なくありません。 「世界的芸術家」なら自分が納得いかないデザインのものを作るのは拒否するかもしれませんが、一般の建築屋はそうもいきません。
その点、「モデルハウス」と「建売住宅」は、設計者・建築屋として、普段より少ない制限のもと、腕の振るいどころ、腕の見せ所として、「これでどうじゃ~い!」というものを作ることができるし、又、そういうものを作るべきはずなのですが、・・この“ 星久喜の家 ” は、なんとも安物くさい貧相な外観になってしまっています。
電車・列車のデザインと建築のデザインには共通するものがあります。 日本の大学では、建築学科は工学部・理工学部にある大学と、芸術学部・造形学部にある大学があり、工学部・理工学部にある大学の方が多いのですが、〔工学部にある大学・・・東大、京大など。 理工学部にある大学・・早稲田大など。 芸術学部にある大学・・東京芸大<厳密には、東京芸大美術学部にあります>など。〕、ヨーロッパの大学では、芸術学部・造形学部にある大学の方が多いらしく、そして、建築学科卒業者で建築以外のデザインの仕事につく人もあるそうです
私は小学生の頃、電車が好きで、自分で、こういうのが格好いいのじゃないかとか考えて、自分で電車のデザインを書いたりしていたことがありました。 最近の電車についてですと、阪急の新しい車両を見て、外の色は阪急カラーのあずき色で、決して派手な色ではなく・・というより地味系の色なのですが、中は茶色・黄土色など茶系の色で壁・床を構成して、そして、茶系の色に合う緑系の色で座席を設け、全体として、地味系の色ばかりを使用しているにもかかわらず、なかなかおしゃれなインテリアとなっているのを見て、なかなかやるな!と感動もし、やっぱり、阪急はいいなあ、とも思いました。
乗りものとしては、今となっては10年以上前、英国航空(ブリティッシュエアウェイズ)に乗った時、座席のデザインが「バーバリー」で、私が持っていたバーバリーのネクタイと同じ柄だったのを覚えています。
同じころ、アリタリア航空に乗った時、アリタリア航空の機内のデザインはミラノの新進デザイナーによるものと説明がありましたが、深緑系の色合いで統一されており、乗務員の服も深緑系で、ふと見ると、スチュワーデスのマニキュアも緑でした。おお~っ(!)と感動したのですが、他の服を着た時、あのマニュキュアはどうするのかな・・とも、ふと思いましたが、さすが、というか、飛行機は乗るもの・移動するものだから乗れればいい・移動できればいいという発想ではなく、機内のデザインにおいても、最高のものを作り上げようという意欲があふれていました。
日本の電車では、南海の関空特急「ラピート」というやつ、あれは、なんといいましょうか、良いか悪いかはさておき、どう見ても、鉄人28号じゃないのお~お・・・て感じで、“鉄人28号のイメージ” が 関空特急とどうつながるのかしらんと思ったものです・・・
(↑ 南海電鉄 関空特急「ラピート」
〔南海本線「住之江」駅ホームより車両基地停車中のものを撮影。〕
どう見ても鉄人28号。色だって「鉄人色」だし。 発車する時には「がお―」と叫ぶかというと、さすがにそれはない・・。)
・・・・が、南海の電車でも、↓↓この写真を見て、これはいいわあ・・・と思ったのです。 「週刊現代」に乗っていた南海 高野線の観光列車「天空」の写真を見て。↓↓
< ↑クリックすると大きくなります。↑>
↑ 「週刊現代」(講談社)に、「鉄道 お立ち台」として、毎号、日本の鉄道の写真と説明書きが掲載されており、2012年10月6日号には、第127回 として、南海 高野線 の「高野下」―「九度山」間、和歌山県伊都郡九度山町、丹生川にかかる橋梁を越える観光列車「天空」が掲載されています(241頁。 撮影:野沢 敬次。)。 電車・列車のデザインも、なかなかいいと思うものもあれば、奇をてらっただけで好感のもてないものもありますが、この写真に出ている観光列車「天空」は、周囲の緑にとけこみ、かつ、完全に埋没するのではなく横の赤のラインが適度なアクセントとなり、なかなかいいと思います。 難波駅あたりに停まっていたのでは、なぜ、この色合い、なぜ、このデザインなのかわからないかもしれませんが、南海高野線のこの場所で見てこそ、この電車のデザインの本領発揮となるのではないでしょうか。 この橋梁の色もまた、周囲から浮き上がらず、適度な色合いで作られているように思います。 (野沢啓次 氏の写真の撮り方がいいという面もあると思いますけれども。)
※「ラピート」と「鉄人28号」を知らない方は、たとえば、
「ウィキペディア―ラピート(列車)」http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A9%E3%83%94%E3%83%BC%E3%83%88_(%E5%88%97%E8%BB%8A)
「YouTube―【南海電鉄】特急ラピート 動画」http://video.search.yahoo.co.jp/search?rkf=2&ei=UTF-8&p=%E3%83%A9%E3%83%94%E3%83%BC%E3%83%88
「YouTube―鉄人28号」http://www.youtube.com/watch?v=kj3Em_R2BsM など御参照ください。
「ラピート」が鉄人28号そっくりであっても、だから良いということもなければ悪いということもありません。 しかし、「天空」の場合、南海高野線の大阪府と和歌山県の府県境付近から高野山にかけての高野線の周囲の自然環境を考えて、それと調和するような配色を考えて作られているのに対して、「ラピート」は、難波―関空を最短で結ぼうという関空特急に、なぜ、このデザインなのか、なぜ、この色なのか、という点で、「天空」と同程度の理由があるようには思えない、というその点において、「天空」の方が「ラピート」よりもデザインとして優れているように私は思います。
周囲との調和を考えるという点では、電車・鉄道も建築も共通するものがあると思います。 1997年に最初にナポリに行って、ナポリの海岸沿いの道を歩いた時、海岸沿いの道のガードレールの色がナポリの海の色と共通する深緑で構成されているのを見て、ここの街は街の景観をこういうところでも考えているんだと感動しました。 それは、既存の自然環境に対して浮き上がらない工夫だと思うのです。
逆に、オーストラリアのシドニーのオペラハウスなどは、既存の自然環境を単に維持するのではなく、新しく自己主張の強いものを加え、そして、新しく作った自己主張の強いものと既存のものとの組み合わせによって、それまでよりも優れた景観を作りだそうとするものと思います。
ナポリでも、マレキアーレの住宅で、ピンクの外壁に白の窓枠、それに、深緑のガラリ雨戸の住宅を見ました。ピンクと白は相当に自己主張が強いのですが、そばに生えている松の葉とナポリの海の色の深緑と共通するガラリ雨戸の深緑、松の幹の濃茶、空の青と調和して、ロマンチックな外観を作りだしていたのでした。
建築というものは、周囲の自然や先住建物を無視して作るべきものではなく、周囲の自然や先住建物との調和を考えて、
(1)そこに溶け込むような外観 とするか、
(2)既存の自然や先住建物を尊重しながらも、新しいものを加えて、それまでとは異なる優れた景観を作り出すもの とするか、いずれかを考慮してつくるべきものであり、それをやってこそ、「プロの仕事」と言えます。 その点で、↑↑の千葉市中央区“星久喜の家”は、残念ながら、「しろうとの仕事」と言わざるをえないでしょう。
慶應義塾大学の日吉新図書館と三田新図書館は、いずれも、槇文彦氏の設計によるものですが、日吉新図書館は白系統の外観で三田新図書館はエンジ色系の色合いの外観でできていますが、なぜ、日吉と三田で色合いが違うかというと、日吉キャンパスは、既存の先住建物が白・グレー系でできており、三田は、重要文化財になっている旧図書館他、多くの建物がエンジ系の色あいのものなので、おそらく、それに合わせた色合いの建物としてのでしょう。
<↑↓すべて、写真はクリックすると大きくなります。↑↓>
↑ 慶應義塾大学 日吉キャンパス(横浜市港北区日吉。最寄駅:東急東横線・横浜地下鉄グリーンライン「日吉」) 日吉新図書館 (槇 文彦 1985.) 左側の建物。右側の建物は、第4校舎A棟。
↑ 慶應義塾大学 日吉キャンパス 日吉新図書館(右よりの建物)。
(その左)第4校舎A棟。
(さらに左)第4校舎独立館。
日吉新図書館は、第4校舎A棟より後、1985年(昭和60年。バースが三冠王になって阪神が優勝した年。<・・・別にそれを記念して建てられたわけではないけれども・・・。>)に建てられたが、左よりの「独立館」は、新図書館よりも後で建てられたもの。
↑ 慶應義塾大学 日吉キャンパス 第4校舎B棟。
↑ 慶應義塾大学 日吉キャンパス (左)第2校舎。 (右)日吉記念館。
↑ 慶應義塾大学 三田キャンパス 三田新図書館(東京都港区三田。最寄駅:都営三田線・浅草線「三田」、JR山手線・京浜東北線「田町」) (槇 文彦 1982.)
↑ 慶應義塾大学 三田キャンパス 三田旧図書館 (重要文化財) 明治45(1912)竣工。 曾禰 中條建築事務所 設計。≪慶應義塾の築地開学50周年を記念して建てられたもので、・・ モニュメントを意識した設計 ≫(『建築探偵術入門』1986.文春文庫)
↑ 慶應義塾大学 三田キャンパス構内。右端の建物が三田新図書館。中央の木が「大いちょう」。(左よりの建物)第1校舎。 (中央の建物)塾監局。
※ 慶應義塾大学 日吉新図書館、三田新図書館の場所については、
「慶應義塾大学」ホームページ「日吉キャンパス案内」http://www.keio.ac.jp/ja/access/hiyoshi.html
「慶應義塾大学」ホームページ「三田キャンパス案内」http://www.keio.ac.jp/ja/access/mita.html 他参照。
兵庫県西宮市の関西学院の校舎は、当初、ウィリアム=メレル=ヴォーリズが設計して「スパニッシュ・ミッション・スタイル」で建てられたようですが、その後、周囲に新しく校舎が増築されていきましたが、新しく周囲に建てられたものも、一粒社ヴォーリズ設計事務所の設計によるものらしく、「スパニッシュ・ミッション・スタイル」ではないものの、先住の「スパニッシュ・ミッション・スタイル」の建物との調和を考えて作られています。
↑ 関西学院大学 西宮市 上が原キャンパス(兵庫県西宮市上が原。 最寄駅:阪急今津線「仁川」「甲東園」) 時計台(旧・図書館)と芝生広場 (ウィリアム=メレル=ヴォーリズ 1929 登録有形文化財)
↑ 関西学院大学 西宮市 上が原キャンパス ヴォーリズ建築群(1929.)
正面・・時計台(旧・図書館) その右・・文学部棟 その手前・・神学部棟
時計台の左側・・経済学部棟 その手前・・中央講堂
<↑写真はクリックすると大きくなります。↑>
↑ 関西学院大学 西宮市 上が原キャンパス 神学部棟(ウィリアム=メレル=ヴォーリズ 1929.)
↑ 関西学院大学 西宮市 上が原キャンパス B号棟・C号棟 (一粒社ヴォーリズ設計事務所)
↑ 関西学院大学 西宮市 上が原キャンパス 社会学部棟(・・だったように思うのだけれども・・。違ったらごめん。)(一粒社ヴォーリズ設計事務所)
※「関西学院大学」ホームページ 「キャンパスマップ(西宮上が原)」http://www.kwansei.ac.jp/pr/pr_001086.html 参照。 (24)の建物が時計台(旧・図書館)
上の3枚の写真の建物は、関西学院の西宮市上が原キャンパスができた時にウィリアム=メレル=ヴォーリズが設計して建てられた建物で、下の2枚の写真の建物は後に一粒社ヴォーリズ設計事務所の設計で建てられたものらしい。 上の3枚のものと下の2枚の建物では微妙に傾向に違いはあるようだけれども、先住建物である上の2枚の建物に調和することを考えて下の2枚の建物のデザインも考えられている。
ヴォーリズさんの建物は、「優しい」印象の建物で、私の個人的知り合いでは、関学の建物は、特に、女性の人気が高い。
夏目漱石『三四郎』(岩波文庫、角川文庫他)に≪「それから、この木と水の感じがね。――たいしたものじゃないが、なにしろ東京のまん中にあるんだから――静かでしょう。こういう所でないと学問をやるにはいけませんね。近ごろは東京があまりやかましくなりすぎて困る。これが御殿。」と歩き出しなたら、左手(ゆんで)の建物をさしてみせる。≫という寺田寅彦がモデルではないかと言われるらしい「野々宮さん」の発言があります。 東大の本郷キャンパスは、私が高校を卒業するころ、した頃(1970年代後半から1980年前後)は、それほど、背の高い建物はなく、慶應などは私立大学だけに学生数が多くて人口密度が高く、平日はどうしてもざわざわした雰囲気になるのに対し、国立大学だけに私立大学に比べて学生数が少なく人口密度が低いこともあり、たしかに、『三四郎』の中で「野々宮さん」が言うように、≪近ごろは・・あまりやかましくなりすぎて困る≫≪東京のまん中にある≫にもかかわらず、静かないい雰囲気だと思ったのですが、最近は、かつては建物が建っていなかった場所に新しい建物ができ、前から建物があった場所も高層の建物に変わり、30年くらい前のような雰囲気はなくなってきたように思います。 正門を入ってすぐの槇文彦設計という 法科大学院棟(法学政治学総合教育棟) は、スケルトンというのかの建物で、自己主張を抑えてめだちすぎず、それでいて、よく見ると、デザインをよく考えてつくられているという建物で、すでに建物が敷地に対して飽和状態になってきた本郷キャンパスの現状を考慮したものかと思えるものでした。
↑ 東京大学 本郷キャンパス(東京都文京区本郷。最寄駅:東京メトロ丸の内線・都営大江戸線「本郷3丁目」) 法科大学院棟(法学政治学系総合教育棟)(槇 文彦 2004年)(http://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/cam01_01_06_j.html )
↑ 法学部3号館(http://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/cam01_01_03_j.html ) 法科大学院棟(法学政治学総合教育棟)の東側向いにある。
法科大学院棟(法学政治学総合教育棟)は、向いの建物との調和も考えてデザインされていると思われる。
↑ 東京大学 本郷キャンパス 法科大学院棟(法学政治学系総合教育棟) 外の道路から見たもの。右寄り、樹木の向こう。 左は正門。
↑ 構造的には、東側南北方向には廊下の内側に鉄骨の柱を、東西方向には外壁ラインのすぐ内側に鉄骨の柱を建てた「カーテンウォール」の作りの鉄骨造のようです。
(上写真)東側南北方向
(下写真)南側東西方向 内部の階段手すりなども外壁ラインと同様のデザインで構成されている。
↑ ある程度、近づいて見た印象は、最初の写真のような全体を見た印象とは異なり、2つの顔があるとも言えます。
※ 東京大学 法科大学院棟 の場所は、
「東京大学」ホームページ 「キャンパスマップ 法学政治学系総合教育棟」http://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/cam01_01_06_j.html
建築のデザインは、常に成功するかどうかはさておき、自然環境との調和・先住建物との調和といったことを考えてやるものです。
かつて、ヤクルト・阪神の監督をやっていた時の野村克也が、キャッチャーに「なぜ、あそこであの球を投げさせたのか」と質問して、答えられないと、「理由のないことをするな」と言ったそうですが、↑↑の“星久喜の家”の外観について、この場所にこのデザインであることに何か理由があるかというと、何もないと思います。
槇 文彦 氏設計の慶應三田新図書館・日吉新図書館については、私は不満を感じている部分もあるのですが、槇 文彦 氏の建物については、私が今まで見学させてもらったものに関しては、周囲との調和を考えてこうなったのかなというものが多いように思えます。その点について、評価したいと思っています。
周囲の建物などまったく気にしないで、あくまで、自分が作る建物に周囲が合わせるべきだという意識の建物を作る「世界の丹下健三」の建物よりは、その点で良いと思っています。 デザインについては、好みの問題もあるとは思うのですが、それにしても、新宿西口のコクーンタワーなるものの趣味の悪さはなんでしょうか・・・と私は思うのですが、けっこう、あれを評価する方もあるようなので、やはり、好みの問題もあるのかもしれません。
ところで、建築屋においては、特に、「営業は頭のない人間がいい」とか「営業は知識なんかいらない」、さらには、「営業は知識なんかない方がいい」などという人があります。 〔第73回〕≪「『インテリアコーディネーターなのに売れた』って、すごい と思わない~い?」というF社のすごい認識! ≫https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201110article_5.html で、四国・徳島市の 株式会社フィット が、「インテリアコーディネーターでしかないのに売れた」「インテリアコーディネーターなのに売れた」などと「すごい」ことを言っていたことを紹介させていただきましたが、同社に限ったことではなく、「営業は頭のない人間がいいんだ」とか「営業はバカが向いているんだ」とか思っている経営者・口に出す経営者は住宅建築業の会社にはけっこういるようで、「住宅や建築の知識のある人間は営業にはだめだ」とか言う人は、実際問題として少なくありません。 しかし、私が大学を卒業して最初に勤めた木質系のK社では、「営業は、まず、住宅・建築の知識を蓄えること。 知識のまったくない人間が、営業技術だけ身につけようなどとは絶対に考えてはいけない」と最初に教えられたものですが、この点については、その会社の特色、ターゲットとする客層などによって多少の違いはあるとしても、基本的にはどの会社においても、住宅建築業においては変わりはない、と私は思っています。
いつであったか、ラジオの野球中継において、解説者の 張本 勲 が 「野球のピッチャーが練習するのに、ボール投げずにいったい何やるんですか。 野球のバッターが練習するのに、バット振らずにいったい何やるんですか。」 と話していたことがありましたが、住宅屋・建築屋の人間が実力を身につけようとするのに、知識を蓄積しようとする努力なしにいったい何やるんですか、という気がします。
又、いつであったか、ラジオの野球中継で、誰であったか解説者が、 「この選手はどこのポジションを守れるとか守れないとかいいますが、それは、あくまで、プロとしてのレベルの守備ができるかどうかという話で、『プロとしてのレベルの守備』でなくてよければ、プロの運動選手ですから、みんな、どのポジションでも守れるんですよ。」と話していたのを聞いたことがあります。 建築屋・住宅屋の人間であれば、「プロとしてのレベル」ではどうかはさておき、営業でも設計や工事管理の仕事をある程度はできる、設計でも工事管理や営業の仕事はある程度はできる・・という方が普通であり、「営業だから図面はわからなくていい」などというのはおかしいし、「設計だから、営業上どうかなど知ったことではない」などというのはおかしいと思います。
そして、有名建築物などについて知ったことで、業務上、どうなるものでもないと思っている人が、ときどきありますが、そういう認識の人が担当した建物と、有名建築物についても関心を持っている人間が担当した建物であれば、関心のない人間が担当したものは、関心のある者が担当した建物に比べて、はっきり言ってブサイクなものが多い! と断定してよいと私は思います。
だから、建築・住宅・インテリアに関する仕事についている者・つこうとする者は、やはり、建築全般に関心を持つべきものだと思います。 どんな職種であれ、「バカの方がいい」などという職種はないと思います。
建築屋に勤めて、建築工事現場を見に行かない、図面の見方も分からない・・・、それが悪いとまったく思っていない・・という人は、その部分において、先行きは良いとは言えないと、私は思います。 というより、勤めるなら、他の業種に勤めた方がその方のために良いと思いますよ。
※ 「マレキアーレの家」の写真は、行った際に撮ってきたのですが、アナログカメラでなので、スキャンの方法をもっと習得できれば、いずれ、公開させていただきたいとも思います。
今回掲載の写真は、関西学院の建物の写真、東大の法科大学院棟などの写真は2012年、慶應日吉・三田の写真は2010年撮影のものです。
(2012.9.23.)
「たけ」様へ
しろうとの撮影した写真ですが、どうぞ、ご使用ください。 どのように使っていただけたか、使用されたWebを私も拝見したいので、トラックバック・コメント欄、いずれでもよいので、URLを載せていただけますでしょうか。
(2013.4.21.)
前回のブログに挿入して、自然・先住建物に調和する建築について述べました。 そこで触れた 慶應義塾 日吉・三田キャンパスの先住建物と日吉新図書館・三田新図書館(槇 文彦)、関西学院のヴォーリズ設計の建築群とその後に建築された一粒社ヴォーリズ設計事務所の建物、東大本郷キャンパスの法科大学院棟(槇 文彦)について、文章だけでなく、実際の写真も見ていただいた方が、理解していただきやすいかと考えたのですが、前回のブログ 〔第135回〕≪先輩社員に質問する場合のマナーを知らぬ女は仕事の邪魔。 設計事務所の図面は一見、きれいに出来ている。≫https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201209article_9.html は、基本的には、職場における社会人としてのあり方について述べたもので、話の趣旨が異なる為、今回、別の稿として独立させた上で、写真を添付して述べ直させていただくことといたしました。
↓ が、千葉市中央区星久喜(ほしぐき) のN設計事務所 設計、新華ハウジング有限会社施工の建物、 “ 星久喜(ほしぐき)の家 ” です。↓
↑ N設計事務所。“ 星久喜(ほしぐき)の家 ”(千葉市中央区星久喜)↑
外壁材の色合いも、「いかにも建売」という感じで。 「モデルハウス」なら、もうちょっと、センスのいい配色・外観を考えられないの? ・・・・と思うのですが、考えられないのでしょうね・・・・。
特に、後ろの樹木の色合いとも合わない。
数年前、東京都江東区有明 の大塚家具のショールームに、大塚家具に実施していただいたブランド家具についてのインテリアコーディネーター対象の講習で、サポリティ=イタリア の家具について、「この家具のブランドは、特に、“建築家”の方が好まれるブランドで、よく、“建築家”の方とお施主様が一緒に来られて、“建築家”の方が、これを勧められ、“建築家”の方が離れられた時に、お施主様が『私は他の方がいいと思うのですが、先生がこれがいいと言われるもので・・・』とこぼされる・・ということが多いブランドです。」と説明していただいたことがありました。 確かに、サポリティ=イタリアの家具は魅力的なデザインではあるのですが、しかし、実際に住んで使うことを考えた時には他の物の方がいいと思う方もいておかしくないと思われるもので、実際に住んで使う施主の立場を考えない「建築家」は困ったものだとも思い、又、「建築家の作る家」なんて、ろくなもんじゃねえ、とも思ったものでした。
しかし、一方において、建築とは、建物だけで構成されるものではなく、家具の場合、作りつけの家具は建物をどうするか決める際に一緒に決めるのが普通ですが、置き家具の場合、一般の戸建住宅の場合、建物ができあがってから決めるか、せいぜい、建物の間取り図面が決定してから決めるということが少なくないようですが、建築とは、建物と置き家具とが合わさったものが建築と考えるべき性質のものであり、そうなると、せっかく、設計者がよくよく考えたデザインのものを作っても、最後の最後に、その建物に合わない置き家具を施主に選ばれてしまったのでは、せっかくのデザインが台無しになってしまう・・ということもありうるのです。 それを考えると、置き家具を選ぶ際にも、“建築家”がこれを選んでほしいと主張する気持ちもわからないわけではありません。
建物そのもののデザインを決める場合も、設計者・建築屋が、これはこの場所に合わない、こうした方がこの場所に合うと思っても、施主がそれをきいてくれない場合はあるわけです。 施主の家である以上、最終的には、設計者・建築屋が決めるのではなく、施主が決めるものなので、その場所に合わないと思えるものでも断れない場合が少なくありません。 「世界的芸術家」なら自分が納得いかないデザインのものを作るのは拒否するかもしれませんが、一般の建築屋はそうもいきません。
その点、「モデルハウス」と「建売住宅」は、設計者・建築屋として、普段より少ない制限のもと、腕の振るいどころ、腕の見せ所として、「これでどうじゃ~い!」というものを作ることができるし、又、そういうものを作るべきはずなのですが、・・この“ 星久喜の家 ” は、なんとも安物くさい貧相な外観になってしまっています。
電車・列車のデザインと建築のデザインには共通するものがあります。 日本の大学では、建築学科は工学部・理工学部にある大学と、芸術学部・造形学部にある大学があり、工学部・理工学部にある大学の方が多いのですが、〔工学部にある大学・・・東大、京大など。 理工学部にある大学・・早稲田大など。 芸術学部にある大学・・東京芸大<厳密には、東京芸大美術学部にあります>など。〕、ヨーロッパの大学では、芸術学部・造形学部にある大学の方が多いらしく、そして、建築学科卒業者で建築以外のデザインの仕事につく人もあるそうです
私は小学生の頃、電車が好きで、自分で、こういうのが格好いいのじゃないかとか考えて、自分で電車のデザインを書いたりしていたことがありました。 最近の電車についてですと、阪急の新しい車両を見て、外の色は阪急カラーのあずき色で、決して派手な色ではなく・・というより地味系の色なのですが、中は茶色・黄土色など茶系の色で壁・床を構成して、そして、茶系の色に合う緑系の色で座席を設け、全体として、地味系の色ばかりを使用しているにもかかわらず、なかなかおしゃれなインテリアとなっているのを見て、なかなかやるな!と感動もし、やっぱり、阪急はいいなあ、とも思いました。
乗りものとしては、今となっては10年以上前、英国航空(ブリティッシュエアウェイズ)に乗った時、座席のデザインが「バーバリー」で、私が持っていたバーバリーのネクタイと同じ柄だったのを覚えています。
同じころ、アリタリア航空に乗った時、アリタリア航空の機内のデザインはミラノの新進デザイナーによるものと説明がありましたが、深緑系の色合いで統一されており、乗務員の服も深緑系で、ふと見ると、スチュワーデスのマニキュアも緑でした。おお~っ(!)と感動したのですが、他の服を着た時、あのマニュキュアはどうするのかな・・とも、ふと思いましたが、さすが、というか、飛行機は乗るもの・移動するものだから乗れればいい・移動できればいいという発想ではなく、機内のデザインにおいても、最高のものを作り上げようという意欲があふれていました。
日本の電車では、南海の関空特急「ラピート」というやつ、あれは、なんといいましょうか、良いか悪いかはさておき、どう見ても、鉄人28号じゃないのお~お・・・て感じで、“鉄人28号のイメージ” が 関空特急とどうつながるのかしらんと思ったものです・・・
(↑ 南海電鉄 関空特急「ラピート」
〔南海本線「住之江」駅ホームより車両基地停車中のものを撮影。〕
どう見ても鉄人28号。色だって「鉄人色」だし。 発車する時には「がお―」と叫ぶかというと、さすがにそれはない・・。)
・・・・が、南海の電車でも、↓↓この写真を見て、これはいいわあ・・・と思ったのです。 「週刊現代」に乗っていた南海 高野線の観光列車「天空」の写真を見て。↓↓
< ↑クリックすると大きくなります。↑>
↑ 「週刊現代」(講談社)に、「鉄道 お立ち台」として、毎号、日本の鉄道の写真と説明書きが掲載されており、2012年10月6日号には、第127回 として、南海 高野線 の「高野下」―「九度山」間、和歌山県伊都郡九度山町、丹生川にかかる橋梁を越える観光列車「天空」が掲載されています(241頁。 撮影:野沢 敬次。)。 電車・列車のデザインも、なかなかいいと思うものもあれば、奇をてらっただけで好感のもてないものもありますが、この写真に出ている観光列車「天空」は、周囲の緑にとけこみ、かつ、完全に埋没するのではなく横の赤のラインが適度なアクセントとなり、なかなかいいと思います。 難波駅あたりに停まっていたのでは、なぜ、この色合い、なぜ、このデザインなのかわからないかもしれませんが、南海高野線のこの場所で見てこそ、この電車のデザインの本領発揮となるのではないでしょうか。 この橋梁の色もまた、周囲から浮き上がらず、適度な色合いで作られているように思います。 (野沢啓次 氏の写真の撮り方がいいという面もあると思いますけれども。)
※「ラピート」と「鉄人28号」を知らない方は、たとえば、
「ウィキペディア―ラピート(列車)」http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A9%E3%83%94%E3%83%BC%E3%83%88_(%E5%88%97%E8%BB%8A)
「YouTube―【南海電鉄】特急ラピート 動画」http://video.search.yahoo.co.jp/search?rkf=2&ei=UTF-8&p=%E3%83%A9%E3%83%94%E3%83%BC%E3%83%88
「YouTube―鉄人28号」http://www.youtube.com/watch?v=kj3Em_R2BsM など御参照ください。
「ラピート」が鉄人28号そっくりであっても、だから良いということもなければ悪いということもありません。 しかし、「天空」の場合、南海高野線の大阪府と和歌山県の府県境付近から高野山にかけての高野線の周囲の自然環境を考えて、それと調和するような配色を考えて作られているのに対して、「ラピート」は、難波―関空を最短で結ぼうという関空特急に、なぜ、このデザインなのか、なぜ、この色なのか、という点で、「天空」と同程度の理由があるようには思えない、というその点において、「天空」の方が「ラピート」よりもデザインとして優れているように私は思います。
周囲との調和を考えるという点では、電車・鉄道も建築も共通するものがあると思います。 1997年に最初にナポリに行って、ナポリの海岸沿いの道を歩いた時、海岸沿いの道のガードレールの色がナポリの海の色と共通する深緑で構成されているのを見て、ここの街は街の景観をこういうところでも考えているんだと感動しました。 それは、既存の自然環境に対して浮き上がらない工夫だと思うのです。
逆に、オーストラリアのシドニーのオペラハウスなどは、既存の自然環境を単に維持するのではなく、新しく自己主張の強いものを加え、そして、新しく作った自己主張の強いものと既存のものとの組み合わせによって、それまでよりも優れた景観を作りだそうとするものと思います。
ナポリでも、マレキアーレの住宅で、ピンクの外壁に白の窓枠、それに、深緑のガラリ雨戸の住宅を見ました。ピンクと白は相当に自己主張が強いのですが、そばに生えている松の葉とナポリの海の色の深緑と共通するガラリ雨戸の深緑、松の幹の濃茶、空の青と調和して、ロマンチックな外観を作りだしていたのでした。
建築というものは、周囲の自然や先住建物を無視して作るべきものではなく、周囲の自然や先住建物との調和を考えて、
(1)そこに溶け込むような外観 とするか、
(2)既存の自然や先住建物を尊重しながらも、新しいものを加えて、それまでとは異なる優れた景観を作り出すもの とするか、いずれかを考慮してつくるべきものであり、それをやってこそ、「プロの仕事」と言えます。 その点で、↑↑の千葉市中央区“星久喜の家”は、残念ながら、「しろうとの仕事」と言わざるをえないでしょう。
慶應義塾大学の日吉新図書館と三田新図書館は、いずれも、槇文彦氏の設計によるものですが、日吉新図書館は白系統の外観で三田新図書館はエンジ色系の色合いの外観でできていますが、なぜ、日吉と三田で色合いが違うかというと、日吉キャンパスは、既存の先住建物が白・グレー系でできており、三田は、重要文化財になっている旧図書館他、多くの建物がエンジ系の色あいのものなので、おそらく、それに合わせた色合いの建物としてのでしょう。
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↑ 慶應義塾大学 日吉キャンパス(横浜市港北区日吉。最寄駅:東急東横線・横浜地下鉄グリーンライン「日吉」) 日吉新図書館 (槇 文彦 1985.) 左側の建物。右側の建物は、第4校舎A棟。
↑ 慶應義塾大学 日吉キャンパス 日吉新図書館(右よりの建物)。
(その左)第4校舎A棟。
(さらに左)第4校舎独立館。
日吉新図書館は、第4校舎A棟より後、1985年(昭和60年。バースが三冠王になって阪神が優勝した年。<・・・別にそれを記念して建てられたわけではないけれども・・・。>)に建てられたが、左よりの「独立館」は、新図書館よりも後で建てられたもの。
↑ 慶應義塾大学 日吉キャンパス 第4校舎B棟。
↑ 慶應義塾大学 日吉キャンパス (左)第2校舎。 (右)日吉記念館。
↑ 慶應義塾大学 三田キャンパス 三田新図書館(東京都港区三田。最寄駅:都営三田線・浅草線「三田」、JR山手線・京浜東北線「田町」) (槇 文彦 1982.)
↑ 慶應義塾大学 三田キャンパス 三田旧図書館 (重要文化財) 明治45(1912)竣工。 曾禰 中條建築事務所 設計。≪慶應義塾の築地開学50周年を記念して建てられたもので、・・ モニュメントを意識した設計 ≫(『建築探偵術入門』1986.文春文庫)
↑ 慶應義塾大学 三田キャンパス構内。右端の建物が三田新図書館。中央の木が「大いちょう」。(左よりの建物)第1校舎。 (中央の建物)塾監局。
※ 慶應義塾大学 日吉新図書館、三田新図書館の場所については、
「慶應義塾大学」ホームページ「日吉キャンパス案内」http://www.keio.ac.jp/ja/access/hiyoshi.html
「慶應義塾大学」ホームページ「三田キャンパス案内」http://www.keio.ac.jp/ja/access/mita.html 他参照。
兵庫県西宮市の関西学院の校舎は、当初、ウィリアム=メレル=ヴォーリズが設計して「スパニッシュ・ミッション・スタイル」で建てられたようですが、その後、周囲に新しく校舎が増築されていきましたが、新しく周囲に建てられたものも、一粒社ヴォーリズ設計事務所の設計によるものらしく、「スパニッシュ・ミッション・スタイル」ではないものの、先住の「スパニッシュ・ミッション・スタイル」の建物との調和を考えて作られています。
↑ 関西学院大学 西宮市 上が原キャンパス(兵庫県西宮市上が原。 最寄駅:阪急今津線「仁川」「甲東園」) 時計台(旧・図書館)と芝生広場 (ウィリアム=メレル=ヴォーリズ 1929 登録有形文化財)
↑ 関西学院大学 西宮市 上が原キャンパス ヴォーリズ建築群(1929.)
正面・・時計台(旧・図書館) その右・・文学部棟 その手前・・神学部棟
時計台の左側・・経済学部棟 その手前・・中央講堂
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↑ 関西学院大学 西宮市 上が原キャンパス 神学部棟(ウィリアム=メレル=ヴォーリズ 1929.)
↑ 関西学院大学 西宮市 上が原キャンパス B号棟・C号棟 (一粒社ヴォーリズ設計事務所)
↑ 関西学院大学 西宮市 上が原キャンパス 社会学部棟(・・だったように思うのだけれども・・。違ったらごめん。)(一粒社ヴォーリズ設計事務所)
※「関西学院大学」ホームページ 「キャンパスマップ(西宮上が原)」http://www.kwansei.ac.jp/pr/pr_001086.html 参照。 (24)の建物が時計台(旧・図書館)
上の3枚の写真の建物は、関西学院の西宮市上が原キャンパスができた時にウィリアム=メレル=ヴォーリズが設計して建てられた建物で、下の2枚の写真の建物は後に一粒社ヴォーリズ設計事務所の設計で建てられたものらしい。 上の3枚のものと下の2枚の建物では微妙に傾向に違いはあるようだけれども、先住建物である上の2枚の建物に調和することを考えて下の2枚の建物のデザインも考えられている。
ヴォーリズさんの建物は、「優しい」印象の建物で、私の個人的知り合いでは、関学の建物は、特に、女性の人気が高い。
夏目漱石『三四郎』(岩波文庫、角川文庫他)に≪「それから、この木と水の感じがね。――たいしたものじゃないが、なにしろ東京のまん中にあるんだから――静かでしょう。こういう所でないと学問をやるにはいけませんね。近ごろは東京があまりやかましくなりすぎて困る。これが御殿。」と歩き出しなたら、左手(ゆんで)の建物をさしてみせる。≫という寺田寅彦がモデルではないかと言われるらしい「野々宮さん」の発言があります。 東大の本郷キャンパスは、私が高校を卒業するころ、した頃(1970年代後半から1980年前後)は、それほど、背の高い建物はなく、慶應などは私立大学だけに学生数が多くて人口密度が高く、平日はどうしてもざわざわした雰囲気になるのに対し、国立大学だけに私立大学に比べて学生数が少なく人口密度が低いこともあり、たしかに、『三四郎』の中で「野々宮さん」が言うように、≪近ごろは・・あまりやかましくなりすぎて困る≫≪東京のまん中にある≫にもかかわらず、静かないい雰囲気だと思ったのですが、最近は、かつては建物が建っていなかった場所に新しい建物ができ、前から建物があった場所も高層の建物に変わり、30年くらい前のような雰囲気はなくなってきたように思います。 正門を入ってすぐの槇文彦設計という 法科大学院棟(法学政治学総合教育棟) は、スケルトンというのかの建物で、自己主張を抑えてめだちすぎず、それでいて、よく見ると、デザインをよく考えてつくられているという建物で、すでに建物が敷地に対して飽和状態になってきた本郷キャンパスの現状を考慮したものかと思えるものでした。
↑ 東京大学 本郷キャンパス(東京都文京区本郷。最寄駅:東京メトロ丸の内線・都営大江戸線「本郷3丁目」) 法科大学院棟(法学政治学系総合教育棟)(槇 文彦 2004年)(http://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/cam01_01_06_j.html )
↑ 法学部3号館(http://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/cam01_01_03_j.html ) 法科大学院棟(法学政治学総合教育棟)の東側向いにある。
法科大学院棟(法学政治学総合教育棟)は、向いの建物との調和も考えてデザインされていると思われる。
↑ 東京大学 本郷キャンパス 法科大学院棟(法学政治学系総合教育棟) 外の道路から見たもの。右寄り、樹木の向こう。 左は正門。
↑ 構造的には、東側南北方向には廊下の内側に鉄骨の柱を、東西方向には外壁ラインのすぐ内側に鉄骨の柱を建てた「カーテンウォール」の作りの鉄骨造のようです。
(上写真)東側南北方向
(下写真)南側東西方向 内部の階段手すりなども外壁ラインと同様のデザインで構成されている。
↑ ある程度、近づいて見た印象は、最初の写真のような全体を見た印象とは異なり、2つの顔があるとも言えます。
※ 東京大学 法科大学院棟 の場所は、
「東京大学」ホームページ 「キャンパスマップ 法学政治学系総合教育棟」http://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/cam01_01_06_j.html
建築のデザインは、常に成功するかどうかはさておき、自然環境との調和・先住建物との調和といったことを考えてやるものです。
かつて、ヤクルト・阪神の監督をやっていた時の野村克也が、キャッチャーに「なぜ、あそこであの球を投げさせたのか」と質問して、答えられないと、「理由のないことをするな」と言ったそうですが、↑↑の“星久喜の家”の外観について、この場所にこのデザインであることに何か理由があるかというと、何もないと思います。
槇 文彦 氏設計の慶應三田新図書館・日吉新図書館については、私は不満を感じている部分もあるのですが、槇 文彦 氏の建物については、私が今まで見学させてもらったものに関しては、周囲との調和を考えてこうなったのかなというものが多いように思えます。その点について、評価したいと思っています。
周囲の建物などまったく気にしないで、あくまで、自分が作る建物に周囲が合わせるべきだという意識の建物を作る「世界の丹下健三」の建物よりは、その点で良いと思っています。 デザインについては、好みの問題もあるとは思うのですが、それにしても、新宿西口のコクーンタワーなるものの趣味の悪さはなんでしょうか・・・と私は思うのですが、けっこう、あれを評価する方もあるようなので、やはり、好みの問題もあるのかもしれません。
ところで、建築屋においては、特に、「営業は頭のない人間がいい」とか「営業は知識なんかいらない」、さらには、「営業は知識なんかない方がいい」などという人があります。 〔第73回〕≪「『インテリアコーディネーターなのに売れた』って、すごい と思わない~い?」というF社のすごい認識! ≫https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201110article_5.html で、四国・徳島市の 株式会社フィット が、「インテリアコーディネーターでしかないのに売れた」「インテリアコーディネーターなのに売れた」などと「すごい」ことを言っていたことを紹介させていただきましたが、同社に限ったことではなく、「営業は頭のない人間がいいんだ」とか「営業はバカが向いているんだ」とか思っている経営者・口に出す経営者は住宅建築業の会社にはけっこういるようで、「住宅や建築の知識のある人間は営業にはだめだ」とか言う人は、実際問題として少なくありません。 しかし、私が大学を卒業して最初に勤めた木質系のK社では、「営業は、まず、住宅・建築の知識を蓄えること。 知識のまったくない人間が、営業技術だけ身につけようなどとは絶対に考えてはいけない」と最初に教えられたものですが、この点については、その会社の特色、ターゲットとする客層などによって多少の違いはあるとしても、基本的にはどの会社においても、住宅建築業においては変わりはない、と私は思っています。
いつであったか、ラジオの野球中継において、解説者の 張本 勲 が 「野球のピッチャーが練習するのに、ボール投げずにいったい何やるんですか。 野球のバッターが練習するのに、バット振らずにいったい何やるんですか。」 と話していたことがありましたが、住宅屋・建築屋の人間が実力を身につけようとするのに、知識を蓄積しようとする努力なしにいったい何やるんですか、という気がします。
又、いつであったか、ラジオの野球中継で、誰であったか解説者が、 「この選手はどこのポジションを守れるとか守れないとかいいますが、それは、あくまで、プロとしてのレベルの守備ができるかどうかという話で、『プロとしてのレベルの守備』でなくてよければ、プロの運動選手ですから、みんな、どのポジションでも守れるんですよ。」と話していたのを聞いたことがあります。 建築屋・住宅屋の人間であれば、「プロとしてのレベル」ではどうかはさておき、営業でも設計や工事管理の仕事をある程度はできる、設計でも工事管理や営業の仕事はある程度はできる・・という方が普通であり、「営業だから図面はわからなくていい」などというのはおかしいし、「設計だから、営業上どうかなど知ったことではない」などというのはおかしいと思います。
そして、有名建築物などについて知ったことで、業務上、どうなるものでもないと思っている人が、ときどきありますが、そういう認識の人が担当した建物と、有名建築物についても関心を持っている人間が担当した建物であれば、関心のない人間が担当したものは、関心のある者が担当した建物に比べて、はっきり言ってブサイクなものが多い! と断定してよいと私は思います。
だから、建築・住宅・インテリアに関する仕事についている者・つこうとする者は、やはり、建築全般に関心を持つべきものだと思います。 どんな職種であれ、「バカの方がいい」などという職種はないと思います。
建築屋に勤めて、建築工事現場を見に行かない、図面の見方も分からない・・・、それが悪いとまったく思っていない・・という人は、その部分において、先行きは良いとは言えないと、私は思います。 というより、勤めるなら、他の業種に勤めた方がその方のために良いと思いますよ。
※ 「マレキアーレの家」の写真は、行った際に撮ってきたのですが、アナログカメラでなので、スキャンの方法をもっと習得できれば、いずれ、公開させていただきたいとも思います。
今回掲載の写真は、関西学院の建物の写真、東大の法科大学院棟などの写真は2012年、慶應日吉・三田の写真は2010年撮影のものです。
(2012.9.23.)
「たけ」様へ
しろうとの撮影した写真ですが、どうぞ、ご使用ください。 どのように使っていただけたか、使用されたWebを私も拝見したいので、トラックバック・コメント欄、いずれでもよいので、URLを載せていただけますでしょうか。
(2013.4.21.)
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