飛騨国府駅・国府交流センター・「耳付き片流れ屋根」-高山シリーズ第2回(6)、 屋根の形状の適否

[第283回]
【23】  高山市国府町 「こくふ交流センター」
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    飛騨国府駅は無人駅で、駅の北側は何もないが、南側に、高山市国府町出張所(かつての国府町町役場か?)などがある。 こくふ交流センター は、高山市飛騨国府町、飛騨国府駅のすぐ南側にあるが、木の国・飛騨だけあって、外壁に板壁を使用している。 こくふ交流センター のホームページ http://www.takayama-cb.jp/shisetsu/shisetsu_17.html を見ると、≪音響効果に優れた600席のホールを主体に 会議室、図書館も備えた複合施設です。≫と出ている。
    静岡大学農学部が実験をしたという「マウスを使った居住性実験」というのを、木質系住宅メーカーはしばしば引用する。 木の箱・鉄の箱・コンクリートの箱に木屑を入れて、そこでマウスを飼育したところ、木の箱で育てたマウスが最も生育がよかった。 コンクリートの箱で育てたマウスは母ネズミが子ネズミを食い殺したりもした、という話。 木質系住宅メーカーのカタログには、ここから、木質系住宅の方が鉄骨造やコンクリート造の住宅よりも居住性がいいですよお、鉄骨造やコンクリート造の家なんか建てたらいい子が育ちませんよお~お、コンクリート造の家なんかに住んでお母さんが育児ノイローゼになっても知りませんよお~お、ということが遠回しに述べられる。 鉄骨造・コンクリート造の住宅は、木構造の住宅以上に、内部に木・紙・布といった自然素材を多く使用することを考慮した方がいいということかもしれない。
    1960年代、私が小学生の途中まで暮らした大阪市東住吉区の住宅街を、最近、歩いてみた。 私が住んでいた家は今も建っていたが東隣の家は取り壊され、西向かいの家も建て替えられていた。 私が住んでいた家は外壁はモルタル壁だったが、東隣の家、西向かいの家は板壁で、その付近の家には、モルタル壁の家と板壁の家が併存していた。 モルタル壁の方が火災が発生した際に耐火性が良いと評価されて普及した。 ハウスメーカーの住宅では、1980年代の後半に私が住宅建築業界に入った頃は、モルタル壁と サイディング壁(窯業系サイディング)の両方の施工があったが、モルタル壁は竣工・入居後は使用するモルタルの内容や施工状態により差もあるが、ひび割れが起こることがあると言われ、又、おそらく、サイディング壁の方が施工が楽だということもあったのではないかと思うが、年々、サイディング壁が多くなり、現在ではサイディング壁(サイディングには金属系サイディングと窯業系サイディングがあるが、新築の場合は、窯業系サイディング)がほとんどになった。 東京・大阪などでは、法令で家の外周に燃える素材を使用できない、もしくは、使用する場合は隣地と相当離さなければならない、という地域が多く、時々、ログハウスを建てて住みたいという方があったりするが、ログハウスや板壁の外壁にすることは難しいようだ。
    ロシア連邦のイルクーツクに行った時に見たが、イルクーツクでは戸建住宅はたいてい木造であったが、この場合の「木造」は日本でいうところのログハウスで、ログハウスでもティンバーフレーム構法(軸組構法)のログハウスではなく、組積造、丸太を横にして積み上げる方式のログハウスだった。 太い丸太を積み上げたログハウスは、冬の平均気温が冷蔵庫の下ではなく上の方(冷凍庫)の中の温度くらいになるという場所では断熱性にも優れ、適していたようだ。 日本ではログハウスを建てるとなると外壁も丸太が積みあがった状態を見せるが、イルクーツクでは構造と断熱からログハウスが選ばれており、ログハウスの外側に装飾豊かな外壁が貼られている場合がしばしばあった。 日本でも、ログハウスは市街地では法令上、無理だと思っている人がいるが、イルクーツクの民家がやっているように、ログハウスの外側に外壁を貼り、かつ、その外壁材を耐火性能のある窯業系サイディングにするなどすれば、法令上、ログハウスを市街地に建てることはできるのではないかと思う。 但し、イルクーツクなどの人たちは、断熱性能がいいことからログハウスを選んでいるのであって丸太を積み上げた外壁を外にだしたいからログハウスを建てているのではないのだが、日本でログハウスに魅力を感じる人は、たいていの人が、内部とともに外部も丸太を積み上げた状態を出したいと思って、そこに魅力を感じているので、内部はキッチンなど火を使う部屋以外で丸太をだすことができたとしても、外回りには一般の軸組構造の木造やツーバイフォー工法などの木構造の建物と同じく窯業系サイデディングを貼るのは嫌がる人が多いのではないかと思う。
   話がそれたが、大阪市東住吉区の私が小学校の途中まで住んだ場所に、最近、行ってみると、今も住宅街であったが、私が住んでいた角地であった家の前の道は、かつては一方は舗装された道だが他方は土の道で、土の道の方にはクルマが入ってくることはなかったので、そこでよく遊んだものだが、その道も舗装され、土の道などどこにもなくなっていた。 そして、かつてはほとんどなかったコンクリート造の集合住宅が何軒か建ち、その付近の家の外壁はすべてがサイディング壁となっていた。 1軒ごとに見ると、かつてよりも、敷地に対して延べ床面積の広い家がいくらか多くなったかもしれないが、一方で、家を取り壊して有料駐車場にしている所もあり、全体としては、それほど住宅の密度は高くなってもいないように思うのだが、屋外を歩いた時の「居住性」は前に比べてずいぶんと悪くなったような気がした。 畑であったところは畑ではなくなったし、かつて遊んだ公園だった場所にマンションが建っていたといったことはあるが、「屋外の居住性が悪くなった」と思った大きな原因は、土の道がアスファルト舗装の道になり、板壁だった家の外壁が窯業系サイディングになりして、土や木でできていた環境がアスファルトや窯業系サイディングという石かコンクリートの仲間のようなものに変わったというところだと思う。 モルタル壁や防火サイディング壁は火災からその家を守る、火災が広がるのを防ぐには良いが、街の屋外での「居住性」という点では板壁が多い町に比べると良くはないのではないかと思った。 特に火災があって消防車が来るとでも言ったことでもない限りクルマが入ってくることはない土の道というのは、道自体が公園のようなものでもあり、土の道は雨の時は舗装された道に比べれば歩きにくいとしても、「街の居住性」としてはコンクリート舗装の道・アスファルト舗装の道の多い街よりも良いと思えた。
   高山市では、「さんまち」など伝統的建造物群保存地区などの江戸時代や明治初期から残っている建物でなくても、最近、建てられた公共建築物でも木を多く使ったものをよく見かける。 木の国をアピールするだけではなく、「街の居住性」という点でも優れているように思うが、条例が建てやすい内容になっているのか、隣地との距離を十分にあけることができるのか。
   見た目も、コンクリートばかりの外壁よりも木の外壁は親しみを感じる・・のだが、↑の写真を見ると、現地では気づかなかったが、木の外壁に痛みもでてきているようで、木を外に使う場合は、雨や日差しによる痛みにどう対処するかという課題がやはりあるようだ。 板壁はモルタル壁やサイディング壁に比べて火災に弱いが、雨や日差しによる影響もある。 もっとも、私が小学生の途中まで住んだ大阪市東住吉区の家の周囲では、我が家は板壁ではなかったが、板壁の家が外壁をしょっちゅう補修していたようにも思わなかったが、あれはどういう処理をしたものだったのだろうか。 伐採した時の木肌より黒っぽいようにも思ったが「焼き杉」を板壁に使っていたのだろうか。 どうしていたのか・・・。


【24】 「耳つき片流れ」の屋根
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↑ これは、名所旧跡でも有名寺社でもなんでもなく、一般の賃貸住宅らしいので、場所は示さない。 高山市内、最寄駅は飛騨国府駅のある所である。
   屋根の形状として、四方に屋根が下りる寄棟、二方向に分かれる切妻の2つが一般的で、寄棟と切妻をミックスした(だけというわけでもないのだが)入母屋、「ぺったんこの屋根」の陸屋根(ろくやね)、切妻の片方だけの片流れ、切妻で途中で傾斜が変わる腰折れ屋根、マンサードといったものがある。
   屋根は、雨や風、雪を防ぐためのもので、又、小屋裏部分をとることで、夏場、日に照らされた屋根の下の小屋裏部分が暑くなるかわりにその下の階の温度がそれほど上がらないようにする効果もある。 又、庇がある程度の長さがあると、南側の部屋では、夏の高い日差しはさえぎり冬の低い日差しは部屋の中まで入れる効果があり、梅雨時など、少しくらいの雨なら、庇が長ければ窓を開けたままにして過ごすこともできるが庇が短ければ小雨でも窓を閉めなければ雨が部屋中に入り込む。
   この住宅は、切妻の片方だけの「片流れ」の屋根で、しかも、両側に「耳」がついている。 「片流れ」は一般的な用語で、「耳」は私がここで名づけたものだが、けっこう妥当な表現ではないかと思う。
   最近、都市部では、屋根とは、家の一番上についている単なる装飾だと思っている建築主がおり、同時にそんな認識しか持っていないアホ建築屋がいる。 住宅は、建築は、机の上に乗せる装飾品、彫刻などとは違い、デザインだけで成り立つものではない。 構造と機能(使い勝手)とデザインと経済性、この4つが合わせ実現されて建築であり住宅である。 屋根は屋根としての機能を果たした上でデザインも優れたものとする必要があるのだが、屋根としての機能という点に認識がない住宅屋と言えない住宅屋が最近はいるようだ。

   この屋根の家を見て感心した。 なぜ、この形状になっているか。  
   高山市訪問は、私は今回3回目だが、3度とも夏から秋にかけてで、冬に訪問したことはないのですが、これは、冬場の雪を考えて作られたものでしょう。
↓ の図を見てください。
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  積雪地では、寄棟ではなく切妻の屋根にする家がけっこう多い。 私が一条工務店に在籍した時、福島県会津若松市で建てていただいた方の家も、切妻(きりづま)の屋根にしました。 「寄棟(よせむね)」の屋根は、方向性がなく雨・風に対してどの方向に対しても強いという長所がありますが、雪が屋根に積もった場合、四方に落ちます。  それに対して、「切妻(きりづま)」の屋根は方向性はありますが、雪が屋根に積もった場合、平(ひら)側に落ちる量が多く、妻(つま)側に落ちる量は少ない。
   たとえば、南道路で南北が長い長方形の敷地なら、切妻の屋根にすれば、北側を積雪地でない地域に比べていくらか広めにあければ、東西はそれほど広くあけなくても、隣地に雪を落としてもめるということもない。 寄棟の屋根にすると、雪も四方に落ちるので、北側だけでなく東・西も隣地境界との距離を広めにあけないと、雪が隣地に落ちることになり、隣地ともめることになる可能性がある。 だから、このような場合、寄棟よりも切妻の屋根にすることが多い。
   北側が高い「片流れ(かたながれ)」の屋根にすれば、雪は南側に多く落ち、北側にも東・西と同じく落ちる量は少なくなるので、雪に関しては北側もそれほど広くあけなくてよいことになるが、↓
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↑  しかし、片流れとすると、小屋裏部分が広くなって、小屋裏物入れを大きく取りたいという場合などはよいが、片流れの高い方は相当の高さになるので、(1)北側隣地の日照を相当妨げることになる。 又、(2)その下の窓には「庇の効用」はあまり期待できない。 (3)風の力は風が吹いてくる側の壁の面積によって変わるので、片流れ屋根の屋根が高い側は壁面積も大きくなり、その面にかかる風の力も大きくなる。 (4)テレビのアンテナを屋根の上に建てたい場合、片流れの屋根はテレビのアンテナをつけにくい、という点がある。
  ひとつの敷地に賃貸住宅を何棟か建てるというケースで、↓のように、2列に建てたい場合、中央に通路を取り、北側の棟は北が下がる片流れ、南側の棟は南が下がる片流れとすると、雪は中央の通路、出入り口ではない側に多く落ちることになる。↓ 左の図。
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↑ しかし、左の図のように、「耳」がない片流れの場合、「平(ひら)」側に多く雪が落ちるとはいっても、「妻(つま)」側にもいくらかは落ちるので、雪、もしくは、雪が屋根の上で凍った氷の塊のようなものが隣の棟の2階の窓ガラス、もしくは、1階の窓ガラスを直撃する危険がないとは言えない。氷の塊がぶつかった場合、それは石がぶつかった場合とあまり変わらないと思え、相当危険である。 それを防ぐため、片流れの屋根の「妻(つま)」側の隅に「耳」をつけて妻側に雪が落ちるのを防ぐようにしたのが、↑図の右側であり、↑この写真の住宅(賃貸住宅らしい)です。  よく考えてあるなあ、と感心しました。

   最近、私が住んでいる千葉県から東京都、あるいは埼玉県といった首都圏で、屋根というものを住宅の一番上についている装飾物としか考えていない戸建住宅を見ることがしばしばあります。 なぜ、そうなるかというと、ひとつには、それまでマンション住まいだった施主は戸建住宅についてわかっていないので、施主がこのあたりを理解できていない。 そして、住宅建築業の会社の従業員、特に営業がそのあたりをわかっていない場合がある、ということです。
   住友不動産が、グッドデザイン賞を受賞したガルバリウム鋼板を屋根材として使った陸屋根(ろくやね)の立方体のような住宅、「Jアーバン」というヤツ(http://www.j-urban.jp/products/j_urban/j_urban.php )にけっこう魅力を感じる人があったようですが、
(1)「ぺったんこの屋根」(「陸屋根(ろくやね)」)の場合、小屋裏がないので夏場は小屋裏のある建物に比べて2階の部屋は暑いはず。アパートでは2階と1階なら2階の方が防犯上良い、洗濯物を干しやすいといった長所があり、一般に他の条件が一緒なら2階の方が家賃設定が高い場合が多く、同じ家賃なら2階の方が入居者が決まりやすいが、しかし、賃貸の建物というのは屋根の部分の断熱にそれほど力を入れていない場合が多いので、2階は夏場は暑い。その点、1階の方が夏場の厚さは緩やかである。小屋裏がない「ぺったんこの屋根」(「陸屋根(ろくやね)」の建物の場合、それが小屋裏のある建物より顕著になることが考えられる。
(2)庇がほとんどないので、庇がある建物なら梅雨時でも、小雨なら窓を開けて通気をはかることができるが庇がほとんどないので少しでも雨が降れば窓を閉めなければならない。
(3)南側の庇が長ければ、最上階は夏場の高くて暑い日差しはさえぎり、冬場の低い日差しは部屋の中まで入れるということができるが、ほとのど庇の出がないこの建物はその効用を生かせない。
(4)庇の出のない建物というのは庇がある程度以上ある建物に比べて、壁と屋根の境目部分が弱いはずで、その分、耐久性は低いのではないかと思われる。
(5)庇がある建物に比べて、窓にあたる雨は多く、引違ガラス戸のレール部分にたまる雨水も多いことが考えられる。
(6)棟のない屋根はテレビアンテナを建てにくい。
   これらの点を考えると、実際に住まない人間が賞を与えたとしても、実際に建てて住む人間にとってはあまり良い建物とは言えないのではないかと私は思ったのだ。 ある総合住宅展示場にある住友不動産の住宅展示場に行って、そこの営業にそれを話してみたところ、店長だというおにいちゃんは、「建てられたものがないことはありませんが、実際には多くないです。 他のデザインのもので建てられる方の多いですね」と答えてくれた。 そうだろうなあと思った。どこの住宅メーカーでも、販売戦略として自社に注意をひきつけるためのものを展示場に建てたり、モデルとして発表したりすることはあるが、人の注意をひきつける点ではよくても、実際に建てて住むには問題点もあるという場合、良心的な営業、良心的な会社なら、そのあたりをきっちりと見込客に説明し、説明して問題点もあることを十分に理解してそれでもそれで建てたいと施主が言うのであれば建てるが、そうでなければその問題点のない建物で建てるようにするものだ。 だから、住友不動産のある住宅展示場で、店長だというおにいちゃんが、「このデザインで建てる方は実際には多くないですね」と言った点で(住友不動産の戸建て新築住宅部門というものを私はあまり高く評価していないのだが)私はその営業は、その点においては悪くない営業だと評価した。
   それに対して、「Jアーバンもどき」の建物をよく建てているようなのが、アイダ設計である。 なぜ、アイダ設計が「ぺったんこの屋根」で庇の出がない住みやすいとは思えない「Jアーバンもどき」を建てるかというと、営業の質が低いからだ。 かつ、経営者もそれとたいして変わらないからだ。 はっきりしている。 
[第155回]《住宅建築業の営業は見込客を他社に紹介して良いか悪いか についての一考察 》https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201301article_5.html  、
[第240回]《住宅業界職歴詐称を見破る(10)―自社展示場・店舗に来場した見込客を他社に紹介してよいか? 》https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201402article_7.html 
で述べた、自社に来場した見込客を友人がいる工務店に連れて行って契約させようとするような営業は、見込客・契約客に対してその程度の対応しかしないということだ。
   今となっては25年以上前、私が大学4年の時、ある外資系銀行に会社訪問で行った際、三井銀行から顧問としてその外資系銀行に行かれていた方に会っていただいたが、その方が私と同じ大学の出身であったことから、応募と直接は関係のない話も聞かせていただいたりしたことがあった。 その時、「銀行というのは、たとえば、窓口に、普通預金に100万円預けたいと言って来た人があったとしても、そのまま預かってはいけないんです。 『ほかにこういう方法もありますが』といった話をしないといけない。 普通預金よりも金利が良いもの・有利なものはあるのに、そのまま預かって、その時は預金をもらえたとしても、後で、『どうして教えてくれなかったんだ』『あいつのおかげで損した』『あいつにえらい目にあわされた』と思われてはいけないんです。 その時、その人に有利なものを説明することで、言わなければそのまま預けてもらえた預金を失うかもしれない。銀行というのは、特に支店長などは上からどれだけ取ってこいとプレッシャーをかけられるもので、100万円の普通預金というのはのどから手が出るほど欲しいけれども、他にもっと有利なものがあるのに言わずにそのまま預かるということは絶対にしてはいけないんです。 たとえ、その預金を失うことがあっても、『あの人のおかげでいいことがあった』『あの人にもうけさせてもらった』『あの人のおかげで助かった』と思ってもらえば、その後、『同じことならあの人の所に預けよう』と思ってもらえるかもしれない。 そう思ってもらえるようにしなければいけないんです。『あいつにえらい目にあわされた』と思われてはいけないんです」と、そう話された。 私は、その話を聞かせてもらって、それ以来、それは銀行に限ったことではなく、営業・商売・ビジネスにおいては一般的にそういうものであるはずだと思ってやってきた。 しかし、そう思わない人もいるらしい。 自分の会社に来場してくれた見込客を自分自身も内容がよくわかっていない工務店に連れて行って契約させようとするような男にはこういう認識はないでしょう。 アイダ設計の営業は「Jアーバンみたいなものをそれより安い価格で建てたい」という人が来場したなら、そのいいところとともに問題点もきっちりと説明して、その上で、どうしますかと話を持っていくのではなく、「Jアーバンみたいなものをそれより安い価格で建てたい」と言われれば、「はい、そうしましょう。ありがとうございます」と受けるようだ。(私はそれを自分の眼で目撃したことがある。) だから、アイダの建物にはへんてこりんなものが多いのだ。 もちろん、どの会社にも担当者によって違いはあるだろうし、そうでない営業も300人に1人か400人に1人くらいいるのかもしれないが、住友不動産の営業は「実際には、あまり建てる人は多くないですね」と言うケースのものを、アイダ設計はそのまま建てる、ということは、それだけ営業のレベルが低い、経営者も同様だということだ。
  片流れ屋根もそう。↑この写真の屋根の住宅はこの場所においてはよく考えて作ってあると感心するが、それはこの場所の条件を考えればである。 デザインについてどう思うかは人ぞれぞれであるが、たとえば、この写真の住宅を見てかっこいいと思う人もあるらしい。そう思って、東京近郊の雪なんか年に1度積もることがあるかないかの場所でこういう屋根形状のものを作りたいと思う人もでてくるらしい。最終的に建てるのはお施主様であるとしても、その前に、住宅屋の営業は、これはこうこうの条件の場所であるから、その条件を配慮してこの屋根形状にしてあるのですよということを説明しないといけない。 「片流れ屋根」というのは、基本的な屋根ではなく変則の屋根だ。 なぜ、寄棟や切妻ではなく片流れにするのか。 きっちりと理由があるならば良い。 ↑の写真の賃貸住宅にはきっちりとした理由がある。だから、これは良い。 それに対して、アイダ設計は理由なくその場にふさわしくない屋根形状の家を建てる。 なぜか。 営業の質が低いからで、経営者も同程度だからだ。 この点で、私はアイダ設計の営業を軽蔑している。
   


【25】 高山本線「飛騨国府」駅
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↑ 昨年だったか大阪府南部で、近鉄の駅だったように思うが、高校生がプラットホームから向こう側のプラットホームへ線路を横断しようとして電車にはねられて死亡したという事故がインターネット上のヤフーニュースだったかに出ていたのを見た。 この飛騨国府駅でも、「線路を横断しないでください」と書かれた看板が出ていた。しかし、線路を横断するべきだと言うつもりはないが、こういう北向きも南向きも30分ほどしないと来ないような駅だと、陸橋を階段登って向こうのプラットホームに行くのではなく、線路を渡りたいという気持ちになっても、その気持ちはわかる(というより、昔は、こういう駅では線路を横断する経路が設けられていたような気がするのだが)。
   で、何分まてば電車は来るかというと、一日待っても電車は来ない。なぜかというと、電化されてないから。来るのは、↓みたいな車輛。 「気動車」というのか「ディーゼルカー」というのか。
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↑ 20年少々前、一条工務店の松戸の営業所にいた時、宮崎県出身の男が「山手線の汽車に乗って・・・」と口にして、周囲にいた人間が「おい~、『山手線の汽車』てなんだよ~」と言うと、彼は「宮崎県では『汽車』て言うんです。 宮崎県では『電車に乗る』なんて言うと、『おめえ、すかした言い方すんなよなあ』と怒られるんです」と言ったことがあった。 だから、彼は東京から宮崎に行った時、宮崎から東京に移動した時、両方の時に表現に苦労するようだった。 それで、↑は「汽車」か「電車」かというと、どっちも違うように思うのだ。 電化されてない以上、「電車」ではない。 「汽車」というのはシュッポシュッポと煙を吐く蒸気機関車のことを「汽車」と言う。 となると、「列車」か。 「列車」というのは、電気機関車なりディーゼル機関車なり蒸気機関車なりが引っ張って、ガチャコンガチャコンと音を立てて引っ張られていくその車輛自体には動力がついていないやつのことを言うと思うのだ。 となると、これは何か。 「ディーゼルカー」「気動車」と言うと間違っていないと思うのだが、「電車が来た」「汽車が来た」とは言っても、「ディーゼルカーが来た」「気動車が来た」とは日本語の表現としてあまり言わないと思うのだ。 だから、宮崎県では宮崎県でも蒸気機関車は走っていないはずだが「汽車」と言っていたのではないかと思う。
   で、この写真は北向きの「ディーゼルカー」だが、私は南向きの「ディーゼルカー」に高山まで乗った。 実に快適だった。 ≪高山本線は山間を走るためカーブが多く、スピードは出ないが、風景は◎≫と『楽楽 飛騨高山 白川郷・上高地』(JTBパブリッシング)には出ているが、飛騨国府から高山までの間はそれほどカーブは多くなく、「気動車」は一生懸命走る。 
   高山駅に着くと、隣に名古屋行の「ワイドビューひだ」という特急が停車していたが、いっぱい乗客が乗って混雑していた。 私が乗ってきた高山行きの普通はすいていたこっちの方が快適だった。 「やっぱり、旅行は鉄道中心が王道。 かつ、特急料金のかかる列車ではなく普通運賃で乗れる電車が王道」だと思った。 高山本線の普通はいいわあ・・・・。

 
  建築探偵団は、高山本線に乗って高山駅まで行く。 
建築探偵団の歌を歌っても、車両はすいているのでそれほど怒られないかもしれないが、やっぱり、人は乗っているので心の中で歌うことにする。 ヨーロッパで電車に乗ると、車内で楽器の演奏をして帽子とか持って「御祝儀」を集めて回る人がいるが(支払いは強制ではなく、日本のNHKのように、「テレビ持ってません」と言っても「どうして持ってないんですか」と言い、「『どうして』と言われても、特別見たいとも思わないし、欲しいとも思わないから持ってないんですよ」と言っても、飛び上がったりしゃがんだりして部屋の中を覗き込んだり、「本当にもってないんですか」とか食い下がったりと、それ、プライバシーの侵害だぞ、というような態度はとらない。断れば納得してくるので「料金」ではなく「御祝儀」のようなものかと思う)、日本でそれをやっても、たぶん、誰も払ってくれないだろう。 又、たしか、講談社現代新書の『ロシア語のすすめ』に、列車内で歌を歌う男がおり、その歌は人の心を打ちすばらしく涙を流して感動するもので、ぜひ、歌手としてデビューするべきだと人が勧めたところ、その男が自分の名前を明かしたところ、それがフョードル=シャリアピンだったとかいう話が載っていたように思うが、あいにく、シャリアピンではないから、「うるさい」と怒られるのではないかと思うので、あくまで心の中で歌うことにする。
⇒《YouTube-◆少年探偵団(ひばり児童合唱団) 歌唱:亀太郎》https://www.youtube.com/watch?v=SNdkgi50p_o

※ シャリアピンの歌は、YouTubeなどにも、たとえば、
《YouTube-モスコーの街の唄 シャリアピン 》https://www.youtube.com/watch?v=_Fx89s9bGGk 
《YouTube-ヴォルガの舟歌&蚤の歌 -Chaliapin 蓄音機HMV-163 -007 》https://www.youtube.com/watch?v=Z-Eb8la7r1c
など、公開されているものがあるようです。
    (2014.9.17.)

   次回 、高山シリーズ第2回(7)https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201409article_8.html から、 高山市の民家を検討します。 次回は、旧・松本家住宅訪問です。ご覧くださいませ

☆ 高山シリーズ第2回は、
(1)国府町村山天神参拝(1)上枝駅から宮川沿い https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201409article_2.html
(2)同(2) https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201409article_3.html
(3)同(3)浸透桝で雨水処理 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201409article_4.html
(4)あじめ峡、あじか、廣瀬神社、国府小学校https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201409article_5.html
(5)国府大仏、阿多由太神社https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201409article_6.html
(6)飛騨国府駅周辺。「耳付片流れ屋根」  今回。
(7)松本家住宅上・ヒラノグラーノhttps://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201409article_8.html
(8)松本家住宅下・宮地家住宅上https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201409article_9.html
(9)宮地家住宅下・平田記念館https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201409article_10.html
(10)飛騨民族考古館1 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201409article_11.html
(11)同2 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201409article_12.html
(12)同3 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201409article_13.html
(13)同4 喫茶ばれん、質屋の入口から逃げる裁判官 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201409article_14.html
(14)飛騨高山まちの博物館 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201409article_15.html
(15)東西反転プランでは玄関だけ移動するのかhttps://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201409article_16.html
〔(16)~(20)の前提、権威主義的パーソナリティーの「デザイナー」が「建築家」の名前で敬意を表した慶應日吉(新)図書館について https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201409article_17.html 〕
(16)高山の町家で曲がった松をわざわざ柱に使用するか? 1 JR日光駅はライトの設計でなければ価値はないか? https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201409article_18.html
(17)同2 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201409article_19.html
(18)同3 マーケティング的発想のない店 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201409article_20.html
(19)同4 店のコンセプトが理解できない建設部長 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201409article_21.html
(20)同5 「酒が飲めない人にも飲める酒」を勧められない「日本酒ソムリエ」 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201409article_22.html 
(21)飛騨総社 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201409article_23.html

☆ 高山シリーズ第1回 は、
上 [第202回]飛騨天満宮、松本家住宅他https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201309article_7.html
中 [第203回]「天神」考察。居酒屋はいいかげんhttps://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201309article_8.html
下 [第204回]高山市の白山神社。高山市役所https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201309article_9.html 
ご覧くださいませ。 


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