高山陣屋[2]式台。白州。曲がった木は梁。土縁庇。榑葺き。 ~高山シリーズ第3回(3)
[第353回]高山シリーズ第3回(3)
前回、高山陣屋(群代官所)の床の間について述べましたが、高山陣屋(群代官所)は床の間しかないわけではありません。
↑ 「高山陣屋」(群代官所) 玄関正面。
高山市八軒町1-5
伝統的建造物群保存地区の「さんまち」とか高山市政記念館などが宮川の東にあるのに対し、「高山陣屋」は宮川より西にあります。
↑ 「式台」
式台とは いったい何のためにあるのか。 床の高さは低いよりも高い方が床下の空間がとれて床下の通風がよくなり、腐り・シロアリの被害が出にくくなるという面があるものの、床が高いと入る際に段差が大きくなるので、そこで1段設けたというものか。 そういうケースも現在の戸建住宅ではあるでしょう。 しかし、式台がある家での挨拶のしかたとして、外来者は三和土(たたき)に立ち、出迎える方は床に正座して挨拶をすると目の高さが同じようになる、という説を読んだのだが、同じになるかな・・・とも思ってきたのだ。
ここの式台なら、たしかに、内部から出てきた者は正座して出迎え、外来者は立って挨拶をすると、目の高さは同じくらいになるようにも思う。
玄関を入り、「玄関の間」の右に「御役所」「御用場」があり、左手に「吟味所」がある。 「順路」に従って進むと、初めの方と終わりの方になるので離れているような感覚になるが、実は玄関の左右である。この「御役所」「御用場」の前と「吟味所」の前の両方に「白洲」がある。
↑ 「御役所」「御用場」の前の「白州」。 ≪御白州(北) 高山陣屋内には当時の裁判所にあたる「御白州」が2つある。そのうち、民事関係の裁判を扱ったのがこの御白州(北)≫(エディマート編集『ことりっぷ 高山 白川郷』2008.7.昭文社)
↑ 「吟味所」の前の「白州」。 ≪吟味所・御白州(南) 刑事関係の裁判を行った御白州も復元されている。拷問も行われ、下には大きな「ぐり石」が敷かれている。≫≪囚人を江戸に運ぶ唐丸駕籠も展示≫(エディマート編集『ことりっぷ 高山 白川郷』2008.7.昭文社)
2か所に「白洲」があるが、玄関に向かって右手の「白州」は砂敷きで、左手の「吟味所」の「白州」は砂利敷で、かつ、今は建物はないが、白洲の前にかつては「仮牢」があったらしい。 ということは、玄関の右手、「御役所」「御用場」の前の「白洲」は民事で、玄関の右手の「吟味所」の前の「白州」は刑事事件用ということだろうか・・と思って『ことりっぷ 高山 白川郷』(昭文社)を見ると、やはり、そうだった。
観光案内書などというものは何冊読んでもネタ元は同じで同じようなことしか書いていない場合が多いと思って来たが、高山ではそうでもなく、
『アイじゃぱん 高山・奥飛騨・白川郷・五箇山』(2004.JTB)・
『ことりっぷ 高山 白川郷』(2008.昭文社)・
『hitomi(ひとみ) 別冊 飛騨・高山』(2011.まちなみカントリープレス)・
『楽楽 飛騨 高山 白川郷・上高地』(2014.JTBパブリッシング)
『飛騨高山 観光ガイドブック 2015』(2015.高山市商工観光部観光課)
吉野 準『飛騨への旅』(1970.7.1.創元社) と6冊読むと、こちらには載っていないが、あちらには載っているというものがけっこうある。
「hitomi(ひとみ)」とは、「ひだ(飛騨)」と「みの(美濃)」の「飛と美」⇒「ひとみ」 らしい。〔⇒《hi+omi》http://www.nao-magazine.jp/cp/online/hitomi/index_main.html 〕
今も、日本の裁判所では、裁判官は民事裁判では原告・被告・傍聴人、刑事裁判では被告人・検察官・傍聴人よりも高い場所に座っているが、↑のように、江戸時代の「白洲」と同じ発想なのだろうか。 動物園の猿山と一緒で高い所に座ればエライとでも思っているのか(⇒[第309回]《市川動植物園にて。羊の年、2015年(平成27年)。あけおめ。 裁判所て動物園の猿山に似てる・・ 》https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201501article_1.html の猿山の写真を見てください。裁判所と似てますでしょ。)。 なんとも、ちっぽけな野郎だな・・て感じがする。 かつ、日本の裁判所の建物にはからくり屋敷のように一般に知らせていない通路があるらしく、裁判官というのは、質屋の入口みたいな所からヒョイとでてきて、また質屋の入口みたいな所から逃げていく。 やましいところがあるから質屋の入口みたいな所から出入りして逃げるのかもしれない。 東京地裁高裁なんか、入口で空港の搭乗口みたいな手荷物検査までやっているが、命を狙われてもおかしくないようないいかげんな裁判をやっているということを示すものかもしれない。
↓ 奥の「土間」には天井が貼られていない。 梁の架工が見える。↓
(↑ 写真はすべてクリックすると大きくなりますから、ぜひ大きくして見てください。)
↑ ここで見てもわかるように、梁桁材には曲がった木を使用して上が凸になるように入れており、柱にはまっすぐな木を使用している。梁でも曲がった木をそのまま野物として入れているのは屋根を支える上の方の梁であって、その下の梁は角材の梁を使用している。 居酒屋の「はなの舞」「花の舞」「炎」などの居酒屋をチェーン展開するチムニー株式会社http://www.chimney.co.jp/ で、「はなの舞」の店の内装で、明らかに梁に使用されていたことがわかる仕口加工の跡が残っている曲がった松丸太を柱もどきに縦に設置していた店があり、「なんだ、こりぁあ~あ?」と思ったことがあった。 チムニー(株)の「デザイナー」は木造の構造を理解せずに「民家風」の店の内装工事の設計をやっているらしい。2005年、 「1000万円超」の「デザイナー」のひとりに、「普通、ああいう木は梁に使用しても柱には使いませんね」と言って見たところ、当然、「そうですね。あれは変ですよね」という返事がかえってくると思っていたところ、その若造がなんと言ったかというと、「あの曲がっているのがいいんですよお~お」と・・・・・・。 ハア~あ?!? ハア~あ!?! チムニー(株)の「1000万円超プレーヤー」の「デザイナー」様は、木造の構造がまったくわかっていらっしゃらないらしい。 チムニー(株)の店(「はなの舞」「花の舞」「炎」など)は、木造の構造がわかっていない人が「木造古民家風」の内装を設計している、「高山風」と称する似非高山風の内装を設計をしている。そういう人をチムニー(株)は「デザイナー」とか言ってもちあげていらっしゃる。バッカじゃなかろかルンバ♪ て感じがする。(⇒《YouTube-野村監督「バッカじゃなかろかルンバ」(原曲入り)》https://www.youtube.com/watch?v=ewJ6WwU76Rs ) そういう人が「1000万円超プレーヤー」で、私にはその3分の1も払わなかった。チムニー(株)からよっぽど私はなめられていたということらしい。
↓ この部屋何の部屋かわかりますか?
↑ 女中部屋だそうです。 女中部屋でも、さすがに群代官所の女中部屋だけあって、けっこう広い・・・が何人で使ったんだろ・・・・。
(↑ どうも、「右に90度回転」させた写真をアップロードすると、回転していない状態でアップロードされてしまうようです。 「右に90度回転」させたものを想定して考えてください。)
↑ 「土縁庇(どえんひさし)」。 下の方も見てください。雪が入り込むのを防ぐためだそうです。 上からの雪を防ぐだけでなく、下の部分でも庭から内側に雪が入ってこないようにしているようで、積雪地の知恵でしょうか。 (インターネットで検索しても、土縁庇とはどれを指すとはっきりと図示したものが見つかりません。 非積雪地の人間にはなじみがなく取り付けることもないもので、積雪地の方にとっては土縁庇は当たり前のものなのかもしれません。「土縁庇」は、高山陣屋で、最初上を見たのですが上は特別の庇でもないようで、上ではなく下の土との縁(ふち)の木のことを言っていると思います。)
屋根とか軒・庇というのは、単に飾りとしてついているのではないのです。 機能上・構造上の目的があって存在するのです。そのあたりをまったく理解できず、「アホの一つ覚え」みたいに「ガルバリウム鋼板による片流れ屋根」で「軒のない家」ばかり設計しているフリーダムアーキテクツデザイン(株)http://www.freedom.co.jp/ の自称「設計士(さま)」に見せてやりたい。「ガルバリウム鋼板による片流れ屋根の軒のない箱型のコンテナ倉庫みたいな家」、それしか知らない。そうしなければならない場所でもなし、そうしなければならない必然もないのにわざわざ「ガルバリウム鋼板による片流れ屋根で軒のない箱型のコンテナ倉庫みたいな家」ばかり作っている、それしかできない。にもかかわらず、それを称して「世界でただひとつの家」とかHPに出している。 屋根・軒は飾りとしてだけ存在するのではない、機能上の目的があって存在する、ということは建築の基本であると思うのだが、基本の「き」がわかっていない自称「設計士(さま)」が多い・・というより、そんなヤツ、設計と言うに値しないと思うのだが・・。
ついでに、「ガルバリウム鋼板」とは何ぞやというと≪1972年にアメリカ合衆国のベスレヘム・スチールが開発したアルミニウム・亜鉛合金めっき鋼板の名称。日本国内ではガルバと略称されることも多い。また、ガリバリウムとも呼称される場合もある。≫(「ウィキペディア―ガルバリウム鋼板」https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AC%E3%83%AB%E3%83%90%E3%83%AA%E3%82%A6%E3%83%A0 )で、トタンとは何かというと≪亜鉛めっき鋼板のうち、主に建築資材として使われているものを指す。亜鉛鉄板、亜鉛鍍鉄板(あえんとてっぱん)などと呼ばれることもある。≫(「ウィキペディア―トタン」https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88%E3%82%BF%E3%83%B3 )で、要するに、トタンは亜鉛メッキ鋼板で、ガルバリウム鋼板はアルミニウム・亜鉛合金メッキ鋼板。 荒っぽい表現かもしれないが、亜鉛メッキ鋼板にアルミニウムが入っているかどうかの違いみたいなもんだ。 ところが、「トタン」と言うと、「トタンなんてえ~え」というくせに、「ガルバリウム鋼板」というと、矢鱈とありがたがって喜ぶ客も客だとは思うぞ。 別にガルバリウム鋼板が絶対に悪いとは言わんが、絶対にいいというものでもないと思う。他にも屋根材はあるし、「ガルバリウム鋼板による片流れのぺったんこ屋根」だと天井裏が低いから入居後に電気の配線をやり直そうと思っても天井裏に入ることもできない。 ぺったんこ屋根にするしかない敷地でやるならしかたがないかもしれないが、なにゆえ、十分な広さのある敷地で、わざわざ、トタンもどきのぺったんこ屋根の軒のない家を作りたがるのか、その発想、おかしいと思う。 これから家を建てようかと考えている人、「トタンもどき(ガルバリウム鋼板)によるぺったんこ屋根の軒のない家」がかっこいいなどと思っているなら、ほんとにそうか、もう一度考えてみた方がいいと思うぞ。 嘘いつわりなく住宅建築業20年超え選手の私が言うんだから。ほんとによく考えた方がいいと思うよ。
↑ 「蔵」 蔵の中は撮影禁止。
↑ 蔵の北側に、何種類かの木材での屋根の葺き方が示されている。写真は「石置長榑葺(いしおき ながくれぶき)」。 乾燥させた「榑(くれ)」は木の目が溝のようになり、木の目が上下になるように貼るらしく、溝のようになった木の目にそって雨水が流れ、雨漏れを起こしにくくなるらしい。
他に、「半榑熨斗葺」「柿(こけら)葺」など展示されている。
↑ 「鬼板」。 鬼瓦にあたるものだが、積雪地なので、瓦は使用せず、木材の屋根材で鬼瓦に該当するものを作っているという。
屋根材にしても、その場所にふさわしいものを選ぶというのは、建築の基本、設計の基礎のはずだが、「アホの一つ覚え」で「ガルバリウム鋼板によるぺったんこ屋根の軒のない箱型住宅」ばっかり、その場所がどういう立地かも考えずに設計するしか能がないフリーダムアーキテクツデザイン(株) の「設計士(さま)」に見せてやりたい・・・が見にこないだろうな・・。 「ガルバリウム鋼板によるぺったんこ屋根の軒・庇のない倉庫みたいな家」がいいと信念もってるヤツというのは。
↑ 「大広間」の西側の廊下から見える庭と池。
※ 高山陣屋について、
《岐阜県公式ホームページ 高山陣屋》http://www.pref.gifu.lg.jp/kyoiku/bunka/bunkazai/27212/
《高山市公式観光サイト 高山陣屋》http://kankou.city.takayama.lg.jp/2000002/2000026/2000203.html
《ウィキペディア―高山陣屋》https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%AB%98%E5%B1%B1%E9%99%A3%E5%B1%8B
(2015.10.4.)
次回は、高山市政記念館をとりあげます。
☆☆☆ 高山シリーズ第3回
1.藤井美術民芸館 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201510article_1.html
2.高山陣屋(群代官所)[1]床の間。釘隠し。朝市。https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201510article_2.html
3.高山陣屋(群代官所)[2]式台。白洲。土縁庇。榑葺き。 〔今回〕
4.高山市政記念館。 「むくり」のある屋根。変形折上格天井。https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201510article_4.html
《番外 宮川にかかる加圧注入木材を欄干に使用した橋 と防腐防蟻剤について https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201510article_5.html 》
5.桜山八幡宮 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201510article_6.html
6.桜山八幡宮 摂社 天満神社 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201510article_7.html
7.山桜神社、古い町並美術館、手長足長 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201510article_8.html
8.安川交番、高山警察署、市役所 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201510article_9.html
9.飛騨国分寺 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201510article_10.html
10.新宿‐高山のバスの予約をインターネットで「後部」を希望すると。「労災」のおかげで歩行困難にされた話 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201510article_11.html
☆☆ 高山シリーズ第2回は、
(1)国府町村山天神参拝1上枝駅から宮川沿い。https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201409article_2.html
(2)同2 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201409article_3.html
(3)同3浸透桝で雨水処理 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201409article_4.html
(4)あじめ峡、あじか、廣瀬神社、国府小学校https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201409article_5.html
(5)国府大仏、阿多由太神社https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201409article_6.html
(6)飛騨国府駅周辺。「耳付片流れ屋根」https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201409article_7.html
(7)松本家住宅・ヒラノグラーノhttps://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201409article_8.html
(8)松本家住宅・宮地家住宅https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201409article_9.html
(9)宮地家住宅・平田記念館https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201409article_10.html
(10)飛騨民族考古館1 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201409article_11.html
(11)同2 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201409article_12.html
(12)同3 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201409article_13.html
(13)同4 喫茶ばれん、質屋の入口から逃げる裁判官 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201409article_14.html
(14)飛騨高山まちの博物館https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201409article_15.html
(15)東西反転プランでは玄関だけ移動するのかhttps://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201409article_16.html
〔(16)~(20)の前提、権威主義的パーソナリティーの「デザイナー」が「建築家」の名前で敬意を表した慶應日吉(新)図書館について https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201409article_17.html 〕
(16)高山の町家で曲がった松をわざわざ柱に使用するか? 1 JR日光駅はライトの設計でなければ価値はないか? https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201409article_18.html
(17)同2 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201409article_19.html
(18)同3 マーケティング的発想のない店 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201409article_20.html
(19)同4 店のコンセプトが理解できない建設部長 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201409article_21.html
(20)同5 「酒が飲めない人にも飲める酒」を勧められない「日本酒ソムリエ」 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201409article_22.html
(21)飛騨総社 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201409article_23.html
☆ 高山シリーズ第1回 は、
上 [第202回]飛騨天満宮、松本家住宅他https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201309article_7.html
中 [第203回]「天神」考察。居酒屋はいいかげんhttps://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201309article_8.html
下 [第204回]高山市の白山神社。高山市役所https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201309article_9.html
前回、高山陣屋(群代官所)の床の間について述べましたが、高山陣屋(群代官所)は床の間しかないわけではありません。
↑ 「高山陣屋」(群代官所) 玄関正面。
高山市八軒町1-5
伝統的建造物群保存地区の「さんまち」とか高山市政記念館などが宮川の東にあるのに対し、「高山陣屋」は宮川より西にあります。
↑ 「式台」
式台とは いったい何のためにあるのか。 床の高さは低いよりも高い方が床下の空間がとれて床下の通風がよくなり、腐り・シロアリの被害が出にくくなるという面があるものの、床が高いと入る際に段差が大きくなるので、そこで1段設けたというものか。 そういうケースも現在の戸建住宅ではあるでしょう。 しかし、式台がある家での挨拶のしかたとして、外来者は三和土(たたき)に立ち、出迎える方は床に正座して挨拶をすると目の高さが同じようになる、という説を読んだのだが、同じになるかな・・・とも思ってきたのだ。
ここの式台なら、たしかに、内部から出てきた者は正座して出迎え、外来者は立って挨拶をすると、目の高さは同じくらいになるようにも思う。
玄関を入り、「玄関の間」の右に「御役所」「御用場」があり、左手に「吟味所」がある。 「順路」に従って進むと、初めの方と終わりの方になるので離れているような感覚になるが、実は玄関の左右である。この「御役所」「御用場」の前と「吟味所」の前の両方に「白洲」がある。
↑ 「御役所」「御用場」の前の「白州」。 ≪御白州(北) 高山陣屋内には当時の裁判所にあたる「御白州」が2つある。そのうち、民事関係の裁判を扱ったのがこの御白州(北)≫(エディマート編集『ことりっぷ 高山 白川郷』2008.7.昭文社)
↑ 「吟味所」の前の「白州」。 ≪吟味所・御白州(南) 刑事関係の裁判を行った御白州も復元されている。拷問も行われ、下には大きな「ぐり石」が敷かれている。≫≪囚人を江戸に運ぶ唐丸駕籠も展示≫(エディマート編集『ことりっぷ 高山 白川郷』2008.7.昭文社)
2か所に「白洲」があるが、玄関に向かって右手の「白州」は砂敷きで、左手の「吟味所」の「白州」は砂利敷で、かつ、今は建物はないが、白洲の前にかつては「仮牢」があったらしい。 ということは、玄関の右手、「御役所」「御用場」の前の「白洲」は民事で、玄関の右手の「吟味所」の前の「白州」は刑事事件用ということだろうか・・と思って『ことりっぷ 高山 白川郷』(昭文社)を見ると、やはり、そうだった。
観光案内書などというものは何冊読んでもネタ元は同じで同じようなことしか書いていない場合が多いと思って来たが、高山ではそうでもなく、
『アイじゃぱん 高山・奥飛騨・白川郷・五箇山』(2004.JTB)・
『ことりっぷ 高山 白川郷』(2008.昭文社)・
『hitomi(ひとみ) 別冊 飛騨・高山』(2011.まちなみカントリープレス)・
『楽楽 飛騨 高山 白川郷・上高地』(2014.JTBパブリッシング)
『飛騨高山 観光ガイドブック 2015』(2015.高山市商工観光部観光課)
吉野 準『飛騨への旅』(1970.7.1.創元社) と6冊読むと、こちらには載っていないが、あちらには載っているというものがけっこうある。
「hitomi(ひとみ)」とは、「ひだ(飛騨)」と「みの(美濃)」の「飛と美」⇒「ひとみ」 らしい。〔⇒《hi+omi》http://www.nao-magazine.jp/cp/online/hitomi/index_main.html 〕
今も、日本の裁判所では、裁判官は民事裁判では原告・被告・傍聴人、刑事裁判では被告人・検察官・傍聴人よりも高い場所に座っているが、↑のように、江戸時代の「白洲」と同じ発想なのだろうか。 動物園の猿山と一緒で高い所に座ればエライとでも思っているのか(⇒[第309回]《市川動植物園にて。羊の年、2015年(平成27年)。あけおめ。 裁判所て動物園の猿山に似てる・・ 》https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201501article_1.html の猿山の写真を見てください。裁判所と似てますでしょ。)。 なんとも、ちっぽけな野郎だな・・て感じがする。 かつ、日本の裁判所の建物にはからくり屋敷のように一般に知らせていない通路があるらしく、裁判官というのは、質屋の入口みたいな所からヒョイとでてきて、また質屋の入口みたいな所から逃げていく。 やましいところがあるから質屋の入口みたいな所から出入りして逃げるのかもしれない。 東京地裁高裁なんか、入口で空港の搭乗口みたいな手荷物検査までやっているが、命を狙われてもおかしくないようないいかげんな裁判をやっているということを示すものかもしれない。
↓ 奥の「土間」には天井が貼られていない。 梁の架工が見える。↓
(↑ 写真はすべてクリックすると大きくなりますから、ぜひ大きくして見てください。)
↑ ここで見てもわかるように、梁桁材には曲がった木を使用して上が凸になるように入れており、柱にはまっすぐな木を使用している。梁でも曲がった木をそのまま野物として入れているのは屋根を支える上の方の梁であって、その下の梁は角材の梁を使用している。 居酒屋の「はなの舞」「花の舞」「炎」などの居酒屋をチェーン展開するチムニー株式会社http://www.chimney.co.jp/ で、「はなの舞」の店の内装で、明らかに梁に使用されていたことがわかる仕口加工の跡が残っている曲がった松丸太を柱もどきに縦に設置していた店があり、「なんだ、こりぁあ~あ?」と思ったことがあった。 チムニー(株)の「デザイナー」は木造の構造を理解せずに「民家風」の店の内装工事の設計をやっているらしい。2005年、 「1000万円超」の「デザイナー」のひとりに、「普通、ああいう木は梁に使用しても柱には使いませんね」と言って見たところ、当然、「そうですね。あれは変ですよね」という返事がかえってくると思っていたところ、その若造がなんと言ったかというと、「あの曲がっているのがいいんですよお~お」と・・・・・・。 ハア~あ?!? ハア~あ!?! チムニー(株)の「1000万円超プレーヤー」の「デザイナー」様は、木造の構造がまったくわかっていらっしゃらないらしい。 チムニー(株)の店(「はなの舞」「花の舞」「炎」など)は、木造の構造がわかっていない人が「木造古民家風」の内装を設計している、「高山風」と称する似非高山風の内装を設計をしている。そういう人をチムニー(株)は「デザイナー」とか言ってもちあげていらっしゃる。バッカじゃなかろかルンバ♪ て感じがする。(⇒《YouTube-野村監督「バッカじゃなかろかルンバ」(原曲入り)》https://www.youtube.com/watch?v=ewJ6WwU76Rs ) そういう人が「1000万円超プレーヤー」で、私にはその3分の1も払わなかった。チムニー(株)からよっぽど私はなめられていたということらしい。
↓ この部屋何の部屋かわかりますか?
↑ 女中部屋だそうです。 女中部屋でも、さすがに群代官所の女中部屋だけあって、けっこう広い・・・が何人で使ったんだろ・・・・。
(↑ どうも、「右に90度回転」させた写真をアップロードすると、回転していない状態でアップロードされてしまうようです。 「右に90度回転」させたものを想定して考えてください。)
↑ 「土縁庇(どえんひさし)」。 下の方も見てください。雪が入り込むのを防ぐためだそうです。 上からの雪を防ぐだけでなく、下の部分でも庭から内側に雪が入ってこないようにしているようで、積雪地の知恵でしょうか。 (インターネットで検索しても、土縁庇とはどれを指すとはっきりと図示したものが見つかりません。 非積雪地の人間にはなじみがなく取り付けることもないもので、積雪地の方にとっては土縁庇は当たり前のものなのかもしれません。「土縁庇」は、高山陣屋で、最初上を見たのですが上は特別の庇でもないようで、上ではなく下の土との縁(ふち)の木のことを言っていると思います。)
屋根とか軒・庇というのは、単に飾りとしてついているのではないのです。 機能上・構造上の目的があって存在するのです。そのあたりをまったく理解できず、「アホの一つ覚え」みたいに「ガルバリウム鋼板による片流れ屋根」で「軒のない家」ばかり設計しているフリーダムアーキテクツデザイン(株)http://www.freedom.co.jp/ の自称「設計士(さま)」に見せてやりたい。「ガルバリウム鋼板による片流れ屋根の軒のない箱型のコンテナ倉庫みたいな家」、それしか知らない。そうしなければならない場所でもなし、そうしなければならない必然もないのにわざわざ「ガルバリウム鋼板による片流れ屋根で軒のない箱型のコンテナ倉庫みたいな家」ばかり作っている、それしかできない。にもかかわらず、それを称して「世界でただひとつの家」とかHPに出している。 屋根・軒は飾りとしてだけ存在するのではない、機能上の目的があって存在する、ということは建築の基本であると思うのだが、基本の「き」がわかっていない自称「設計士(さま)」が多い・・というより、そんなヤツ、設計と言うに値しないと思うのだが・・。
ついでに、「ガルバリウム鋼板」とは何ぞやというと≪1972年にアメリカ合衆国のベスレヘム・スチールが開発したアルミニウム・亜鉛合金めっき鋼板の名称。日本国内ではガルバと略称されることも多い。また、ガリバリウムとも呼称される場合もある。≫(「ウィキペディア―ガルバリウム鋼板」https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AC%E3%83%AB%E3%83%90%E3%83%AA%E3%82%A6%E3%83%A0 )で、トタンとは何かというと≪亜鉛めっき鋼板のうち、主に建築資材として使われているものを指す。亜鉛鉄板、亜鉛鍍鉄板(あえんとてっぱん)などと呼ばれることもある。≫(「ウィキペディア―トタン」https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88%E3%82%BF%E3%83%B3 )で、要するに、トタンは亜鉛メッキ鋼板で、ガルバリウム鋼板はアルミニウム・亜鉛合金メッキ鋼板。 荒っぽい表現かもしれないが、亜鉛メッキ鋼板にアルミニウムが入っているかどうかの違いみたいなもんだ。 ところが、「トタン」と言うと、「トタンなんてえ~え」というくせに、「ガルバリウム鋼板」というと、矢鱈とありがたがって喜ぶ客も客だとは思うぞ。 別にガルバリウム鋼板が絶対に悪いとは言わんが、絶対にいいというものでもないと思う。他にも屋根材はあるし、「ガルバリウム鋼板による片流れのぺったんこ屋根」だと天井裏が低いから入居後に電気の配線をやり直そうと思っても天井裏に入ることもできない。 ぺったんこ屋根にするしかない敷地でやるならしかたがないかもしれないが、なにゆえ、十分な広さのある敷地で、わざわざ、トタンもどきのぺったんこ屋根の軒のない家を作りたがるのか、その発想、おかしいと思う。 これから家を建てようかと考えている人、「トタンもどき(ガルバリウム鋼板)によるぺったんこ屋根の軒のない家」がかっこいいなどと思っているなら、ほんとにそうか、もう一度考えてみた方がいいと思うぞ。 嘘いつわりなく住宅建築業20年超え選手の私が言うんだから。ほんとによく考えた方がいいと思うよ。
↑ 「蔵」 蔵の中は撮影禁止。
↑ 蔵の北側に、何種類かの木材での屋根の葺き方が示されている。写真は「石置長榑葺(いしおき ながくれぶき)」。 乾燥させた「榑(くれ)」は木の目が溝のようになり、木の目が上下になるように貼るらしく、溝のようになった木の目にそって雨水が流れ、雨漏れを起こしにくくなるらしい。
他に、「半榑熨斗葺」「柿(こけら)葺」など展示されている。
↑ 「鬼板」。 鬼瓦にあたるものだが、積雪地なので、瓦は使用せず、木材の屋根材で鬼瓦に該当するものを作っているという。
屋根材にしても、その場所にふさわしいものを選ぶというのは、建築の基本、設計の基礎のはずだが、「アホの一つ覚え」で「ガルバリウム鋼板によるぺったんこ屋根の軒のない箱型住宅」ばっかり、その場所がどういう立地かも考えずに設計するしか能がないフリーダムアーキテクツデザイン(株) の「設計士(さま)」に見せてやりたい・・・が見にこないだろうな・・。 「ガルバリウム鋼板によるぺったんこ屋根の軒・庇のない倉庫みたいな家」がいいと信念もってるヤツというのは。
↑ 「大広間」の西側の廊下から見える庭と池。
※ 高山陣屋について、
《岐阜県公式ホームページ 高山陣屋》http://www.pref.gifu.lg.jp/kyoiku/bunka/bunkazai/27212/
《高山市公式観光サイト 高山陣屋》http://kankou.city.takayama.lg.jp/2000002/2000026/2000203.html
《ウィキペディア―高山陣屋》https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%AB%98%E5%B1%B1%E9%99%A3%E5%B1%8B
(2015.10.4.)
次回は、高山市政記念館をとりあげます。
☆☆☆ 高山シリーズ第3回
1.藤井美術民芸館 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201510article_1.html
2.高山陣屋(群代官所)[1]床の間。釘隠し。朝市。https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201510article_2.html
3.高山陣屋(群代官所)[2]式台。白洲。土縁庇。榑葺き。 〔今回〕
4.高山市政記念館。 「むくり」のある屋根。変形折上格天井。https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201510article_4.html
《番外 宮川にかかる加圧注入木材を欄干に使用した橋 と防腐防蟻剤について https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201510article_5.html 》
5.桜山八幡宮 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201510article_6.html
6.桜山八幡宮 摂社 天満神社 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201510article_7.html
7.山桜神社、古い町並美術館、手長足長 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201510article_8.html
8.安川交番、高山警察署、市役所 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201510article_9.html
9.飛騨国分寺 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201510article_10.html
10.新宿‐高山のバスの予約をインターネットで「後部」を希望すると。「労災」のおかげで歩行困難にされた話 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201510article_11.html
☆☆ 高山シリーズ第2回は、
(1)国府町村山天神参拝1上枝駅から宮川沿い。https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201409article_2.html
(2)同2 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201409article_3.html
(3)同3浸透桝で雨水処理 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201409article_4.html
(4)あじめ峡、あじか、廣瀬神社、国府小学校https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201409article_5.html
(5)国府大仏、阿多由太神社https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201409article_6.html
(6)飛騨国府駅周辺。「耳付片流れ屋根」https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201409article_7.html
(7)松本家住宅・ヒラノグラーノhttps://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201409article_8.html
(8)松本家住宅・宮地家住宅https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201409article_9.html
(9)宮地家住宅・平田記念館https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201409article_10.html
(10)飛騨民族考古館1 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201409article_11.html
(11)同2 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201409article_12.html
(12)同3 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201409article_13.html
(13)同4 喫茶ばれん、質屋の入口から逃げる裁判官 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201409article_14.html
(14)飛騨高山まちの博物館https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201409article_15.html
(15)東西反転プランでは玄関だけ移動するのかhttps://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201409article_16.html
〔(16)~(20)の前提、権威主義的パーソナリティーの「デザイナー」が「建築家」の名前で敬意を表した慶應日吉(新)図書館について https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201409article_17.html 〕
(16)高山の町家で曲がった松をわざわざ柱に使用するか? 1 JR日光駅はライトの設計でなければ価値はないか? https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201409article_18.html
(17)同2 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201409article_19.html
(18)同3 マーケティング的発想のない店 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201409article_20.html
(19)同4 店のコンセプトが理解できない建設部長 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201409article_21.html
(20)同5 「酒が飲めない人にも飲める酒」を勧められない「日本酒ソムリエ」 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201409article_22.html
(21)飛騨総社 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201409article_23.html
☆ 高山シリーズ第1回 は、
上 [第202回]飛騨天満宮、松本家住宅他https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201309article_7.html
中 [第203回]「天神」考察。居酒屋はいいかげんhttps://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201309article_8.html
下 [第204回]高山市の白山神社。高山市役所https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201309article_9.html
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