梁の強度検査機械は役立つか?ソロモンマホガニーはマホガニーでない―機械プレカットは信頼できるか[6]
[第431回]機械プレカットは信用できるか、及、プレカット工場を異常に信用する男2例[6] 機械プレカットは信用できるか[6]
【1】-6 機械プレカットの長所と問題点(続き)
(サ) 《「音の伝わり方」から梁の強度を調べる機械》
(株)一条工務店の工場見学会では、「音の伝わり方から梁の強度を調べる検査機」というものを見せて、それを実演して見せていました。 「梁の強度は、同じ厚さのものであっても同じではありません。 それを調べることができればいいのですが、力を加えてどこまで加えれば壊れるかやればわかるとしても、それでは使えなくなってしまいますから、他の方法で強度を調べることができないかということで、一条工務店がプレカットの機械のメーカーと共同で開発したのがこの機械です」、「梁の片方の木口面を打撃して、緑・黄・赤のどれかのランプが点灯する。 緑がつくとその梁は相当に強い、黄色だとそれほど強くない、赤がついた時は、その木は梁としては使用しない方がいいということで、そういう木は、もっと、力が加わらないところで使用するようにしています」と説明係が話していました。
私が最初にこの話を聞いたのは、浜松の工場での工場見学会に随行した時だったか、浜松での中途入社の従業員を対象とした研修の時だったか、どちらが先だったか記憶がはっきりしないのですが、両方でこの話は聞きました。 それはたいしたものだとその時は思いました。 そういったことをしていない会社の方がずっと多いはずですから、そうやって強度を調べているというのは、それだけ良心的ではないかと思いました。

(↑ (株)一条工務店・日本産業(株) 浜松工場 )
その後、栃木工場での工場見学会に行った時も、やはり、説明係は、この検査機を実演させてみせて、同様のことを話していました。
もっとも、逆に、え? と思ったのは、「一条工務店では、アメリカ合衆国のオレゴン州ポートランドに(株)一条U.S.A. という材木会社を持っており、(株)一条U.S.A. が現地で加工した木を日本に運ぶようにしています。 アメリカ合衆国産の米松(ダグラスファー)という木を梁として使用していますが、日本の商社から買うと、 「セミカスケード」か、それより下の「コースト」と言われる米松しか買えませんが、現地で買うと、「セミカスケード」より上の「カスケード」という分類の米松を買うことができます。 又、商社を通じて買う場合、丸太のまま日本に運んできて日本で角材に加工することになり、丸太のまま運んだのでは、実際には、削り落として使用しない部分まで運びますが、(株)一条U.S.A.では、現地で丸太から角材に加工して角材の状態で日本に運ぶので、使用しない部分は現地で削り落として、使う部分だけを運ぶことができるので、運送の費用も節約することができるのです」といったことを話していたのです。 しかし、中途入社の社員対象の新入社員研修で、講師役の人が話してくれたのですが、「今は、一条は、商社を通じて買うものと、(株)一条U.S.A.から日本に運んでくるものと両方あります。」「両方を、まぜて使っています」と教えてくれたのです。 どちらのものでも、不良品ということはないので、使って悪いということはないのですが、工場見学会では、説明係が、「一条工務店では、梁桁材を日本の商社を通じて購入するのではなく、アメリカ合衆国のオレゴン州ポートランドに一条U.S.A.という材木会社を設けて、現地で購入して現地で角材に加工して日本に運ぶということをしています。 米松でも、現地で購入した方が目が詰まった良い木が買えますが、一条工務店のように現地に材木会社を持つということをしていない会社では、商社を通じて購入するしかありませんから、一条工務店と同等のものは買えないことになります」といったことを話していました。 そして、バスでの工場見学会の際に、行きに見込客にバス中で見ていただくように作成したレーザーディスクでも、ナレーターが同じようなことを話していました。 実際には、(株)一条工務店でも、現地で(株)一条U.S.A.が買ったものと日本の商社を通じて買ったものと両方を使用していて、両方のどちらがその契約客のお宅で使われることになるかはわからなかったのですが。 そうなると、どちらであっても、不良品ではないとしても、現地で買ったものを一条工務店では使用しているとお客様には説明しておきながら、日本の商社を通じて買ったものがそのお客様の家で使われるということもあるということです。 それでは、嘘をついていることになりませんか。 なりますでしょ。 日本の商社を通じて買ったものでも、別にそれは不良品ではないのですが、現地で買った日本の商社から買ったものより目が詰まった良い米松を使っていますと言って契約させて、実際はそうではない、というのでは、客を騙していることになるのと違いますか。
米松(ダグラスファー)には、アメリカ合衆国からカナダにかけてのロッキー山脈の西側にあるカスケード山脈でとれる「カスケード材」、「セミカスケード」、その西のコーストレーンジス山脈でとれる「コースト材」があり、カスケード材が最も目が詰まっており、続いて、セミカスケード材、その下がコースト材らしい。 コースト材の下に、「ツーボード」だったかそういう名称に分類されるものがあったはずです。 現地で買えば、カスケード材が買えるが、日本の商社を通じて買うと、セミカスケードかコーストだというのです。 実際に、どれだけ目が詰まっているか詰まっていないかはわかるのかというと、最初の研修の時に講師として説明してくれた人は「ある程度、見ればわかります」と言い、浜松の工場で置かれている米松を見て、「これは、現地で買ったものですね」「こちらは商社から買ったものですね」と指さして言ってくれたのですが、その時点では、よほど経験のある人でないとわからないものかと思ったのです。 しかし、何回か一条工務店の浜松工場・栃木工場・「西東京工場」(山梨県上野原市)に足を運んで見てきた結果、わかるようになりました。 目の詰まり方がぜんぜん違う木が2種類あるのです。
実際には、現地で買っているものと商社を通じて購入しているものがあるのに、「一条工務店は現地で買っているから商社を通じて買う場合よりも目が詰まったいい米松を使えるのです」とお客様に話していたというのは、それでは嘘つきですが、できるだけ良いものを安く買おうという努力の結果であったというのであれば、商社を通じて買ったものでも、それは不良品ではないので、まあ、嘘つきがいいわけではないとしても、不良品ではないのだから、悪くないのかなと考えることもできるかもしれません。
しかし、ここで問題です。 梁桁材の一方の木口面を打撃して、音の伝わり方から、その木が目が詰まっているかどうかを調べて強度を調べる機械というのが、浜松工場や栃木工場にはあって、工場見学会の時に実演して見せていたわけですが、別にそんなもので打撃して調べなくても、現地で買ったものと商社を通じて買ったものなら、現地で買ったものの方が目が詰まっているというのは、「見ればわかる」のです。 一目瞭然なのです。米松(べいまつ)と言われてもどんな木か知らないという人は見てもわからないかもしれませんが、特別にものすごい修練が必要とかいうものではないのです。ある程度、見てくればわかるのです。
そうなると、現地で買ったものは、打撃で調べる機械でコンと叩くと、おそらく、緑が点灯するものが多いと思うのですが、商社を通じて買ったものは、もしも、現地で買ったものの基準に合わせて判定を出せば、黄色か赤が点灯してしまうものが多いのではないでしょうか。 そうなると、それらは、廃棄はしないとしても、「切って、もっと力が加わらない他の場所で使う」という使い方をしなければならないのでしょうか。 (株)一条工務店はそんな使い方しかできないようなものを買っているのでしょうか。 そういったことを考えると、あれ? とか思いだすわけです。
さらに、目の詰まり方が同じであっても、節があるかどうかで音の伝わり方が変わったりはしないのだろうか、とか思いませんか。 疑問を感じた時に質問すると怒られる会社なんです、(株)一条工務店という会社は。 だから、だんだんと質問しなくなりました。 でも、そう思いませんか。 節がいくつかある木とあまり節の無い木なら、目の詰まり方が一緒でも音の伝わり方は変わるのではないか、と。
そして、梁の場合、柱と違って、木口の断面で見ると、上下に長い長方形の形状に切って使いますが、木の目、木の年輪が上下に並んでいるように切られた梁材と、横に並んでいるように切られた梁材では、同じ目の詰まり方でも、音の伝わり方が同じでも、梁に過重がかかった時、上下に年輪が重なるように切られた梁材の方が強いのではないか。 すべての梁材を横にではなく上下に年輪が重なるように切ることができれば良いのですが、実際は、木材をできるだけ有効に利用したいと考えるとそうもいきません。 その結果、上下に年輪が重なるように切られた梁材と横に年輪が重なるように切られた梁材が出てきますが、それは目の詰まり方が違うわけではないので、木口面をコンと叩いて音の伝わり方から強度を調べるという方法では、1本の木から加工してものなら、どちらも同じ結果が出てしまうのではないのか。 そう考えると、あの機械って、工場見学会の時には、大道芸人の芸みたいに、なんか、すごい! とか感動しますが、実際には、どれだけ信用できるのだろうか・・・・・とか思ってくるわけです。
[第426回]《木造建築に際し機械プレカットは信用できるか―[1]寸法違いの丸太梁、ホゾ穴のない土台、鉋がけ不良の柱》https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201607article_7.html (エ)で、上下に年輪が重なるように切断された米松(ダグラスファー)の梁で、本来なら、辺材側を下、芯材側を上に加工するべきであるのに、辺材側を上、芯材側を下に加工した梁が工事現場に送り届けられたということがあったことを述べました。 もし、梁桁材の木口面をコンと叩いて音の伝わり方から梁の強度を調べるということをやるのなら、継手(つぎて)・仕口(しぐち)といったものを加工するより前に検査をすることになります。 ということは、その梁の強度が強いか弱いかを調べて、これは梁として使っていいですよとなった後で、辺材側と芯材側のどちらを上に加工するかは決まるということになります。 もし、芯材側が上、辺材側が下となるように使用するなら大丈夫という「判定」であったとしても、それを上下逆に加工したとするとどうなるでしょうか。音の伝わり方から強度を推定する検査機械というのは、機械自体はその梁がどちらが上として加工されるかわかるわけではないのです。
結論を言ってしまいましょうか。 結論として、(株)一条工務店・日本産業(株)では、工場で実際に梁桁材を加工する際に、そんな検査機械でコン! なんて、やってないのです。 もともと、あれは、見世物だったのです。 だいたい、上野原の工場にそんな機械があったかどうか。 なかったのじゃないか。 でも、梁桁材は加工して出荷していましたから。 木口の片方をコン! と叩いて、音の伝わり方から、緑か黄色か赤かのランプがついて、赤だったらブ~ゥ! 音がなるというのは、工場見学会に見に来た見込客に見せるためのものだったのです。 実際には、そんなものやってなかった。 なんだ・・・、嘘の多い会社だこと・・・と思って、もう慣れた!と思っていたら、まだまだ、気づいていない嘘があった。
考えてみると、[第427回]《木造建築に際し機械プレカットは信用できるか[2]―二つに割れた梁、大黒柱に大きな節、いいかげんISO》https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201607article_8.html の(オ)で述べましたね。 福島県双葉郡広野町で建てていただいた私が営業担当のお宅で、玄関の真上の位置で、梁が真っ二つに割れていたということがあったことを。 上棟の際に、現場に届いていた材木のブルーシートを開けた段階で気づいたものの、そのまま入れたことがあったことを。 私が、工事担当に、大急ぎで工場に電話して、その1本を加工しなおして届けてもらえないか言ってくれと何度も何度も言ったのに工事担当がきいてくれなかったことを。 その話を山梨県上野原市の「西東京工場」の「工場長」になっていたW邊に話したところ、「な~んだ、言ってくれればいいのにい」と残念がったことを。 真っ二つに割れた梁が工事現場に届いたのは、その時だけでなく、それより少し前にも同じ営業所の営業が担当の工事現場でもあったことも述べましたね。その時は、割れた箇所は腰掛鎌継ぎの継手の位置より下でしたので、そのまま入れたのでは、割れた下半分は落ちてしまうので、又、工事担当が私の広野町の方の時の工事担当とは別人でしたので、工場に電話を入れて、急遽、梁を1本だけ加工しなおして、昼頃、トラックが梁を1本だけ運んできて、その新しく加工したものを入れたわけですが、それほど離れていない期間で近い場所で2度あったわけです。私が一生懸命調査してのではなく、個人的に出くわしたものだけで。 ということは、たまたまではないわけです。
雁屋哲 作・花咲アキラ 画『美味しんぼ(おいしんぼ)』に、「初卵(ういらん)」の話がでていました。雌の鶏が、生まれて最初に産む卵を「初卵(ういらん)」と言って、他の卵よりも栄養分が多く含まれていておいしいという俗説があるものの、それは、初鰹をありがたがるようなもので、別に、合理的な理由があるわけでもなく、初卵が他の卵よりもおいしいとか、栄養分が豊かに含まれているとかいったことは、科学的に立証されたものはないというのです。 しかし、海原雄山と山岡士郎が食の対決をおこなった時、海原が用意した料理がおいしかったことについて、海原は「この卵は初卵だからだ」と言うことがあり、山岡が「初卵をありがたがるのなんか、単なる迷信だ。何の意味もない」と言うが、海原は「それなら、その卵が初卵かどうか、どうしてわかるのだ?」と言う話がありました。 鶏が生まれて最初に卵を産む時、ブロイラーではなく、放し飼いにして買っている鶏が初めて卵を産んだ時に、その卵が初卵だと把握するためには、始終、鶏に目を行き届かせていなければいけない。だから、初卵だとわかる飼い方・育て方をしている鶏が産んだ卵なら、初卵であるかないかにかかわらず、良質なものであるはずだ、と海原は言うのです。 (株)一条工務店が工場見学会で見せていた、木口面をコンと叩いて音の伝わり方から梁の強度を調べるという検査機械ですが、実際に役に立つものかどうか、疑問がありますが、たとえ、そうであっても、そういった方法ででも強度を調べて使おうという姿勢でやっていたのなら、その姿勢で加工したものなら、悪くないものではないかと思うのです。 そして、もしも、そうやって、木口面をコンと叩くことで梁桁材の強度を調べるという機械で強度を調べて、心もとないと思えるものは、梁としては使わずに他のもっと力が加わらない箇所で使うようにするという工場見学会の時に説明係が話しているようなやり方をしていたのなら、真ん中から真っ二つに割れた梁材が上棟現場に届くということはなかったはずだと思いませんか? それだけ、気をつけて梁桁材を見て、加工していたならば、真っ二つに割れたようなものをそのまま出荷するようなことはしていないと思います。 見てないのです。 もちろん、木は出荷する時点で割れていなくても、日が立つうちに割れるということもありますが、出荷する時点で気をつけて見ておれば、ある程度わかるはずなのです。 それを見ていないということでしょう。
『美味しんぼ』には、山岡らが会社の近所の食堂に行くと、袋に入った野菜を袋のまま包丁で切る店があって、山岡は「注文すべて取り消し」と言って店を出るという話がありました。 袋を開けて洗いもせずにそのまま切るなんて、と。 「でも、清潔なんだろ」と副部長が言うと、山岡は、たとえ、清潔なものであったとしても、料理人は、袋をあけて、問題のない食材か自分の眼で調べた上で切るものだ。それが食を提供する仕事についている人間の勤めだと言います。 木口面をコンと叩いて音の伝わり方から梁の強度を調べるという見世物芸みたいな検査機械ですが、実際に役に立つか立たないかにかかわらず、そういうことをやって問題のない材木かどうか調べて加工し出荷しようという姿勢であったならば、真っ二つに割れた梁材が上棟現場に届くということは少ないはずなのです。 それが届いているのです。 かつ、私が、工場に電話して大急ぎでその1本を加工しなおして届けてもらえないかと言ってくれと何度も何度も頼んだにもかかわらず、工事担当は拒否したのですが、その1本、大急ぎで加工しなおして工事現場に届けるという手間がかかったとしても、真っ二つに割れた梁を平気で出荷した人間の方の責任ですからね。その現場の営業担当が手間かけさせたのではありませんからね。 その木口面を叩いた打撃音の伝わり方から強度を調べるという検査機械ですが、実際にどれだけ役にたつものであるかにかかわらず、そういったことでもやってより問題のないものを届けようという姿勢なら、その姿勢の分だけ良い家ができると思います。 しかし、実際には、工場見学会の時に、大道芸みたいにやって見せることで、工事が進んだ段階で、うちの家に使われている木はあまり良くない木ではないのだろうかとお施主様が不安に思うようなことがあった時に、「音の伝わり方から梁の強度を調べる機械で検査した上で使用しているものですから大丈夫です」と言って切り抜けるためのものとして使っていて、実際にはそんな機械による検査なんかやっていない、やっていないのに、「他社にはない強度を調べる機械で調査した上で使っている木ですから心配いりません」などと言うというそういう姿勢であるわけですから、その姿勢の分だけ、真っ二つに割れた梁材が工事現場に届く確率が高くなっている、ということです。 私の方は嘘は言っていませんからね。
[第427回]《木造建築に際し機械プレカットは信用できるか[2]―二つに割れた梁、大黒柱に大きな節、いいかげんISO》https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201607article_8.html の(オ)で述べたように、真っ二つに割れた梁でも、特に、営業担当が相当いいかげんな方の営業ではなく、「お客さんにとってはいい営業だと思う」と他の営業から言ってもらっていた私が工場に連絡して急遽加工しなおして届けてもらうように頼んでもらえないかと何度も懇願してもそれでも工事担当が拒否した会社が(普通は、営業担当がそう言うのではなく、工事担当の方がそういう配慮をするべきものだと思うが)、梁の木口面をコンと打撃して強度を調べる検査機械で検査して赤ランプがついたとしても、何十人が見ている工場見学会の時ならともかく、そうでもない時に、そういう検査をして赤ランプがついたとしても、それを梁として使用するのをやめるか? というと、やめそうには思えないでしょ。 「よそはそんな検査なんてやってないんだから」ということで、たとえ、検査して赤ランプがついても、そのまま使うでしょ。この会社の体質から考えて。 だから、工場見学会の時に、大道芸みたいにやってみせる音の伝わり方から梁の強度を調べる検査機・・・なんて、あんなもん、単なる“ おもちゃ ” ・・・ということです。 おもちゃ。
【なんともいいかげんな 木材の「商品名」】
梁桁材(はり けた ざい)には、(株)一条工務店では、米松(べいまつ)(ダグラスファー)を使い、一番上の位置にだけ、国産の松の丸太梁(野物)を使用していましたが、その米松(ダグラスファー)を、(株)一条U.S.A.が現地で購入した「カスケード材」「セミカスケード材」を使用していると言っていたものの、実際には、商社を通じて購入した「セミカスケード材」「コースト材」とを混ぜて使用していたらしい、という点で、それらは不良品ということではないのだが、言っていることと実際とが違うという点で問題があった。
柱材(はしら ざい)はどうかというと、(株)一条工務店が見込客に見せていたビデオ・レーザーディスクでは、女性ナレーターが「一条工務店の家の柱で使用している桧は東濃桧(とうのう ひのき)」と言っていたにもかかわらず、浜松工場でも栃木工場でも山梨県上野原市の「西東京工場」でも、「東濃桧」とスタンプが押された桧の柱材も置いてあったものの、同時に、「吉野桧」「美作桧」「博多桧」というスタンプが押された桧の柱材もまた置かれていたのだ。吉野というと奈良県の南西部の吉水神社などがある吉野、美作(みまさか)は岡山県北部。博多はおそらく福岡県福岡市博多区の博多ではないか。 博多の街中で桧を造林しているわけではないだろうけれども、福岡県の山林で造林しているものを博多で集めて販売しているのか、その地域の有名な地名をブランド名として入れたものか。東濃(とうのう)とは、岐阜県南部の美濃の東側を指すわけで、有名な桧として「木曽桧」というのがあるが、「木曽桧」とは厳密には木曽地方の天然の桧のことを指し、木曽地方の桧でも造林木の桧のことを「木曽桧」とは言わず、また、天然林の木曽桧はうかつに伐採するわけにはいかないものであり、東濃地方というのは、「木曽桧」の産地の隣くらいの場所であることから高く評価されていますが、吉野桧もまたブランドであり、美作の桧だって何も悪いものではないのですが、ビデオで「一条工務店で使用している柱の桧は東濃桧」と女性ナレーターが話しているのを聞いた上で、工場に置かれている「吉野桧」「美作桧」「博多桧」とスタンプを押された桧材を見ると、なんで、嘘を言うのかなあ~あ・・・という気がしてきたものです。
さらに言うと、巾木・廻縁などに(株)一条工務店では「ソロモン マホガニーを使用しています」と営業は言い、そして、カタログにもそう書かれていたのです。ソロモン諸島とは、インドネシアの東のはしにニューギニア島があり、ニューギニア島は西半分がインドネシア、東半分とその北東部の島がパプアニューギニアという国で、パプアニューギニアの東あたりにソロモン諸島があり、国名もソロモン諸島という国名です。

(↑ 「旗」マークが、ソロモン諸島で最大の島 ガダルカナル島〔第二次世界大戦中、日本軍が餓死した〕 の 首都 ホニアラ )
普通に聞くと、ソロモンマホガニーというのは、ソロモン諸島で産するマホガニーか? と思いそうですね。 (株)一条工務店の営業でもそう思って、お客様に「ソロモン諸島でとれるマホガニー」とか話していた人間がいました。 嘘ですからね。 ソロモン諸島でマホガニーなんてとれませんから。
岡野健(たけし)『木材のおはなし』(1988.2.29.日本規格協会)で「木材の名前」として説明されていますが、木材の名称には、いくつかの種類があって、
和名・・・・日本全国広く通じる名前。 アカマツ、エゾマツ、ケヤキ、ヒノキなど。
一般名・・・・和名、及び、アフリカンブラックウッド、ローズウッドなど広く通じる和名に準じた名前。
地方名・・・・ヒバを能登ではアテと呼んだり、エゾマツを北海道でクロマツと呼んだり。
学名・・・・1867年、パリで国際植物命名規約が決められた、国際的に通じる名前。
市場名・・・・・ラワンはフィリピンでの呼び名で、マレーシアではセラヤ、インドネシアではメランチ。
このくらいは、「まあ、いいか」てところですが、ややこしいというのか、ずっこいというのかが、「商品名」というやつです。
商品名・・・・・輸入業者や加工業者がつけた商品名。
この商品名というヤツがくせものなのです。 岡野健『木材の話』には≪ラワンをフィリピンマホガニーと呼んだり、スプルースを柱の場合はアラスカヒノキ、碁盤にしたら新カヤと呼んだりするので、誤解を招くことがあります。≫と書かれていますが、ソロモンマホガニーもその類で、もともとは、マトアという木なのです。
宮本茂紀編『原色インテリア木材ブック』(1996.9.25.建築資料研究社)によると、≪チークとならぶ代表的高級木材≫のマホガニーは、センダン科で、産地は中南米、アフリカ。 ホンジュラスマホガニー、コバノマホガニーと言われ、≪中南米で採れるホンジュラスマホガニーが最も良質とされる。これはヨーロッパではメキシカンマホガニーとも呼ばれている。アフリカでとれる質のよいものもメキシカンマホガニーと呼ばれるのでまぎらわしいが、この名称は質のよいマホガニーの総称として使われているようだ。・・・東南アジア、オーストラリア、ニュージーランドなどのマホガニーは、木目は美しいが粘りがないので、用途に注意したい。≫≪高級な家具や装飾用材に用いられる。≫というもので、マトアは、ムクロジ科で、産地は東南アジア。≪床材・キャビネットなどに用いられる。≫
食材でも、ヒラタケのことをシメジと言ったり、キャペリンを子持ちシシャモと呼んだりしていますが、木材にも評価が高い木材に近い名称をつけるということがおこなわれているようなのです。 私、子持ちシシャモ好きですし、カニ風味のタラ肉も、赤貝もどきの さるぼう貝もけっこう好きですけれどもね。
『原色インテリア木材ブック』では、≪マホガニーは世界的な優良材であるだけに、まがいものが最も多い材でもある。 樹種が全く違うのに、イメージのよいマホガニーの名をつけたり、あるいは本物のマホガニーと称して使われているものがたくさんある。≫と出ている。 但し、マホガニーもどきの木材というのは、とんでもない不良材なのかというとそういうわけでもなく、『原色インテリア木材ブック』でも、サぺリを≪マホガニーに似た良材≫と評している。 マトアは、決して悪い木ではないので、ヒラタケをシメジなどと言ったりせずに、ヒラタケはヒラタケでおいしいのだから、ヒラタケと言って売るべきだと『美味しんぼ(おいしんぼ)』の登場人物が言っていたが、同様に、マトアはソロモンマホガニーなどと言わずに、マトアと言えばよいと思うのだが、なんか、ややこしい商品名で呼びたい人がいるようなのだ。 特に、ホンジュラスマホガニー・メキシカンマホガニーはいずれもマホガニーであるのに対し、ソロモンマホガニーはマホガニーではなくマトアだというのは、なんともややこしい、というのか、嘘つきではないと言うかもしれないけれども、普通、しろうとさんは「ソロモンマホガニー」と言われるとソロモン諸島産のマホガニーだと思うのと違いますか?
但し、マトアのことをソロモンマホガニーと言い出したのは、(株)一条工務店ではなく、カリモク家具(株)http://www.karimoku.co.jp/ らしい。 カリモク家具の従業員はそのあたりを認識しているだろうかと思い、今はその場所にはなくなったようだが、東京都中央区の都営浅草線「東日本橋」駅の近くにカリモク家具のショールームがかつてあったので、そこに行った時に、ショールームのおねえさんが、「これはソロモンマホガニーという木を使っているんです」と言うので、「ソロモンマホガニーというのは、要するに、マトアでしょ」と言ったところ、そのおねえさんはどう言ったかというと、「え、マトアって何?」。 カリモク家具のおねえさんはそうおっしゃったのです。まあ、ショールームのおねえさんをいじめてもしかたがないので、「だから、パプアニューギニアとかソロモン諸島とかそのあたりで採れる木でしょ」と言うと、「そうです、そうです」ということでした。 だから、ソロモンマホガニーというのは、マホガニーではないのです。ついでに、「東日本橋」だって、もともと、日本橋でもない場所に東日本橋なんて名前をつけてるのですけれども。
東日本ハウス は、今は、日本ハウスホールディングス(株)http://www.nihonhouse-hd.co.jp/ と名前が変わったらしいが、2000年頃、(株)一条工務店の栃木県佐野市の営業所にいた時、展示場に来場された方が、「東日本ハウスでは、柱は総桧だそうです」と言われ、「総桧でもアメリカから桧を輸入しているから高くないんですと言われました」とおっしゃったので、まったくつくづくよく言うよなあとあきれたことがありました。 いいですか。 桧という木は、日本列島の北は福島県、南は台湾の中部まででのみ採れる木であって、「アメリカ合衆国産の桧」などというものは、地球上に存在していないのです。 まったく、ドイツもこいつもフランスもよく言うよなあ~あ・・・・・。 台湾は地理的に日本列島とひと続きの位置にあり、台湾産の桧とか「台桧」というのは、日本の桧に比べて木の肌がいくらか黄色っぽいとかいう話もありますが、日本の桧と同じ種類の木であって、東濃桧とか吉野桧とかと同じく産地の違いですが、「アメリカ合衆国産の桧」などというものはありませんし、「米桧(べいひ)」と言われるのは、ポートオルフォードシーダーという桧と同じ種類の桧とは別の木で、日本の桧と同じくらい強度は強い木だが、日本の桧のような良い香りはしない、もともと、日本の桧よりも値段の安い木だということです。「だということです」というのは、私は材木屋ではないので、自分が取引したことがあるわけではなく、今里隆『これだけは知っておきたい木材の知識』(鹿島出版会)とか宮本茂紀編『原色インテリア木材ブック』(建築資料研究社)とかを見て学習した結果としてのものなので、「だということです」という表現をしているのであって、決してでまかせで言っているのではありません。東日本ハウスのしょーもないおっさんとは違います。
桧に見た目が似ているといえば似ているのかもしれないが、桧のような強度はなくまったく別の種類の木であるスプルースを「アラスカヒノキ」と言ったりということは、私はあんまりいいとは思わないのですが、こういうことは、建築屋・材木屋・家具屋の世界ではけっこうおこなわれてきたようです。 カニ風味のタラ肉はけっこう好きですが、それは、「これはカニ肉ではありません」と正直に書いてあるから好きなのであって、カニだと言われて信じて食わされたのでは、やっぱり「おもろない」ですわな。 「ソロモンマホガニー」は(株)一条工務店が言い出したのではなく、カリモク家具(株)が言い出したらしいのですが、なんだか、マトアはマトアと言えばいいのに、という気が私はします。マトアというのは、決して悪い木ではないのですから。金目鯛は鯛とは別の魚だけれどもおいしいし、「カラフトししゃも」「子持ちシシャモ」はシシャモとは別のキャペリンという魚だけれどもおいしいしね。カニ風味のタラ肉も好きだし、がんもどきも好きだし。「松茸風味の椎茸使用の永谷園のお吸い物」だってけっこう飲むし。本物の松茸なんていったいいつ食べたことやら。
《整理》
マホガニーである「マホガニー」
ホンジュラス マホガニー、メキシカン マホガニー ・・・・・中南米産、アフリカ産の良質のマホガニー。センダン科。
↑
↓
マホガニーではない「マホガニー」
ソロモンマホガニー ・・・・マトアのこと。 パプアニューギニア・ソロモン諸島などでとれる。ムクロジ科。
フィリピンマホガニー ・・・・ラワンのこと。 フタバガキ科。
桧である「桧」
東濃桧、吉野桧、美作桧、台桧・・・東美濃地方産の桧、吉野地方産の桧、美作地方産の桧、台湾産の桧。
↑
↓
桧でないヒノキ科の「桧」
米桧(べいひ)・・・・ポートオルフォードシーダーのこと。ローソン桧とも言う。 桧とは同じ種類の別の木。 桧に劣らない強度があるが、桧のような良い香りはしない。桧よりも、もともと、値段は安い。ヒノキ科。
ラオス桧・・・ヒノキ科。ラオス産。
↑
↓
桧でないヒノキ科でもない「桧」
アラスカ桧・・・・ スプルス のこと。ホワイトウッドとも言う。 見た目が桧に似ているが、 桧とはまったく別の種類の木。桧のような強度はない。マツ科。
千葉県に 木の国工房http://www.kinokuni-koubou.com/ という会社があって、もともとは、親会社が柏市の材木屋で、かつて、静岡県浜松市の(株)一条工務店と共同出資会社で(株)一条工務店柏 という会社を作ってやっていたが、後に共同出資会社を解消して、木の国工房 という名前の会社を設立して独自にやるようになったが、かつての(株)一条工務店と共通するものも持ちながらも、親会社が材木屋だけに、そのあたりにこだわりを持ったものを作っているようだが、10年程前に同社の展示場をのぞいた時、土台に「オーストラリア桧」というものを使っているといって、見本の「オーストラリア桧」というものを持たせてもらったことがあった。ずしっとした重量感があり、たしかに、これは土台として使えばおそらく虫害も出にくいであろうし、柱が沈むこともないだろうし、たしかに、これは悪くないだろうという印象を受けたが、桧という木は日本列島の北は福島県、南は台湾中部までで生える木であって、オーストラリアに桧はないはずで、持った感じ見た感じも桧とは別の木だ。木の国工房 の親会社の万代のHPhttp://e-mandai.co.jp/2007/12/post_30.html には、≪オーストラリア桧(サイプレス)は、オーストラリアの針葉樹です。…≫と出ている。《ウィキペディア―イトスギ》https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%88%E3%82%B9%E3%82%AE には≪イトスギ(糸杉、学名:Cupressus)は、ヒノキ科イトスギ属の総称。サイプレス(英: Cypress)、セイヨウヒノキ(西洋檜)ともいう。≫と出ている。
フリーダムアーキテクツデザイン(株)(本社:東京都中央区。)http://www.freedom.co.jp/ は設計会社で施工は通常別の会社が担当しているが、仕様書で構造材として使用する材木を指定している。それには、柱材は「赤松集成材」と書かれていたのだが、日本産・国産の赤松というものを、わざわざ、集成材にして使用するかな? と思ったのです。もとより、日本の赤松・黒松というのは、建築構造材として使用する時、梁として使用することはあっても、あまり、柱としては使用しないのではないか。「適材適所」という考え方から、日本産の松、赤松(女松、雌松)も黒松(男松、雄松)も、梁として使われても、柱としてはあまり使われないのではないか。 おそらくですが、これは、「欧州赤松」でしょう。 今里隆『これだけは知っておきたい 建築用木材の知識』(1985.鹿島出版会)を見ると、「赤松(女松、雌松ともいう)」は≪ 産地:本州、四国、九州屋久島まで各地に自生する低地性の樹で、松の中では質的にも量的にも代表的なものである。≫と出ています。宮本茂紀編『原色インテリア木材ブック』(1996.建築資料研究社)にも、「アカマツ 赤松。メマツ(雌松)。 Japanese red pine 」は≪産地:日本≫と出ています。『これだけは知っておきたい建築用木材の知識』には、「赤松(女松、雌松ともいう)」と別に、「北洋材(ソ連材)」として「欧州赤松(マツ科)」が掲載されていて、それは≪産地:ヨーロッパ全域、中央アジア、シベリアにかけて広く分布する。・・・スウェーデン、フィンランド、ソ連、ポーランドから大量に輸出される。欧州で最も広く用いられる市場材の一つで、 わが国の雌松に似ている。・・≫ ≪重さ強度とも中くらいで加工容易、耐水性も普通で日本松に比し通直であるが強度は劣る。≫と出ています。普通、日本の松というのは、梁桁材としては使用しても、柱材としては一般にあまり使用しないように思うのです。「松というのは、たいてい、曲がっていますから」と言う営業がけっこういるのですが、そう思って、山に生えている松を見ると、あまり曲がっていない松を見ることがあり、お寺の庭に生えているわざと曲がらせている松と勘違いしているのではないか、という気もしないではないのですが、そうはいっても、まっすぐに伸びる木であることから柱として使うのに適している桧、「まっすぐ」の「すぐ」が「すぎ」になったのではないかとも言われる杉に比べれば、曲がりやすい木であり、「ねばりがある」ということで横向きにして梁に使うことはあっても、柱にはあまり使わないように思うのです。 フリーダムアーキテクツデザイン(株)が柱に使用している「赤松集成材」というのは、あれは、おそらく、≪わが国の雌松に似ている≫≪日本松に比し通直であるが強度は劣る≫という「欧州赤松」ではないかと思います。これも、「欧州赤松による集成材」のことを「赤松集成材」という表現をしたのも、フリーダムアーキテクツデザイン(株)が最初にやったことではなく、「赤松集成材」を販売している材木屋がそういう表現をしたもので、材木屋から言われた表現をそのまま掲載していたのでしょう。もとより、フリーダムアーキテクツデザイン(株)の私立大学の建築学科か建築の専門学校でてきただけの若造でしかない自称「設計士(さま)」がこういったことを理解しているとは考えにくい。
東海住宅(本社:千葉県八千代市)http://www.10kai.co.jp/ では、柱に「ホワイトスプルースの集成材」を使用していた。スプルースというのは、「アラスカ桧」と言ったりもするが、上に述べたように、桧と見た目が似ているが桧とはまったく別の種類の木であって、強度は桧にははるかに劣るもので、それゆえ、造作材として使用はされても構造材として使用されることはあまりない木であったはずで、『これだけは知っておきたい建築用木材の知識』にも≪用途:一般建築用材(特に内部造作材)、その他家具、建具指物、航空機用材など。≫と出ている。ホームセンターに行って見ると、犬小屋などにスプルースが使われているのを見ることがある。その程度の木であると理解していたのだが、東海住宅(株)はホワイトスプルースの集成材を柱に使用していたので、建売屋の建物・不動産屋の建物というのはその程度ということか、と思っていたのだが、2008年、東海住宅(株)の花見川店の店長になっていたT中(男。当時、60歳)が、そのホワイトスプルースの集成材の柱を指さして、「お客さん、この柱は集成材でムクの柱の1.5倍強いんですよ」などと言っていたので、バカか! ホワイトスプルースの集成材が桧のムク材や杉のムク材の1.5倍強いわけないだろうが、と思い、まったく、この人相の悪いヤクザ顔の不動産屋オヤジ、まったくつくづくよく言うよなあ、とあきれたことがあった・・・が、それに比べれば、「赤松集成材」の方がはるかにマシ・・・かもしれない。まあ、日本の赤松を集成材にして使ってはいないと思いますよ。まず、「北洋材」「ソ連材」の「欧州赤松」の集成材でしょう。
今里隆『これだけは知っておきたい 建築用木材の知識』には、「唐松(落葉松ともいう)」≪日本特産の樹でわが国唯一の自生落葉針葉樹である。・・≫と別に、「北洋材(ソ連材)」として「北洋唐松(マツ科)」が出ています。 ≪産地:落葉針葉樹でシベリア、沿海州、樺太、千島に分布する。・・・・日本材の唐松とは異種である。≫≪材は堅く強じんで樹脂分が多く耐水性に富むが、その割合に耐久性が低い。日本の唐松に比し年輪がつんでいて重い。・・≫と出ている。
1980年頃、慶應義塾大学に入学した頃、ロシア語の先生から聞いた話だが、日本の会社では、「英語ができる人」の需要は相当に多いが、同時に供給も多い。 それに対し、「ロシア語ができる人」は供給が少ないのに対して、英語ほど多くないとしても需要はけっこうあるので、だから、需要と供給のバランスを考えると「ロシア語はおすすめですよ」と言われたことがあった。 戦後の日本というのは、「日本はアメリカ(合衆国)のメカケみたいなものだから、ダンナの機嫌をとるのは当たり前だ」とか池田勇人が言ったようなそういう国で、「西側の国」であったのだが、現実に、ソビエト連邦が崩壊してロシア連邦が社会主義をやめるより前から、「社会主義国」ソ連との貿易額は決して少なくなかったのだ。 「赤松集成材」というのも、それではないだろうか。
もうひとつ、胡散臭いと思うのが、けっこう多くの住宅メーカーが使っているらしい「桧集成材の柱」というヤツだ。 「赤松集成材」は、赤松ではなく欧州赤松であろうけれども、5枚ほどの板を貼り合わせて角材に作った集成材の、貼り合わせる元の物は欧州赤松のはずだ。 それに対し、「桧集成材の柱」というのは、真壁の和室で使用するのだが、これは、何かよくわからん木を5枚貼り合わせて、その表面に桧を皮のように貼ったというもので、いわば、「桧メッキ」みたいなものなのだ。「桧集成材」と言われると、たいてい、「しろうとさん」は表面だけでなく中も桧を貼り合わせたものと思うのではないか。 この点については、在来木造で真壁和室を作る場合は、(株)一条工務店のように桧ムクの方が信頼できる。「桧集成材の柱」を真壁和室に使用している住宅メーカーの展示場に行って、営業に「『桧集成材の柱』というのは、表面は桧だとして、中の木は何なのですか」と質問しても、答えることのできる人間は少ないと思う。 木質パネル構法やツーバイフォー工法で真壁和室を作る場合は、柱はあくまで見せるための造作材であって構造材ではないので、何が何でもムクである必要はないが。
赤松(雌松、女松)・・・・日本産。本州・四国・九州屋久島まで。
↑
↓
欧州赤松・・・・ヨーロッパ全域、中央アジア、シベリアにかけて。日本松に比し通直であるが強度は劣る。
いずれも、マツ科。
唐松(落葉松)・・・・日本特産。
↑
↓
北洋唐松・・・産地:シベリア、沿海州、樺太、千島。
いずれも、マツ科。
次回、移動式棚の非常停止装置は実は止移動式棚を買うカネがあったら地べたを買った方が効率よいのに・・ 他 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201607article_12.html
(2016.7.11.)
☆ 機械プレカット工場は信用できるか+プレカット工場を異常に信用する男2例
1.寸法違いの丸太梁、ホゾ穴のない土台、上下逆加工の梁 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201607article_7.html
2.真っ二つに割れた梁、玄関正面の大黒柱に大きな節https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201607article_8.html
3.ナンバー非取得のフォークリフトで公道走行、溝なしタイヤのフォークリフトにISO9001https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201607article_9.html
4.工場見学会の弊害。耐火材の鉱物繊維が剥落飛散 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201607article_10.html
5.日本人労働者の労働条件を引き下げる「スト破り」外国人労働者、従業員元従業員をバカにする浜松市長https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201607article_6.html
6.「打撃音から梁の強度を検査する機械」は有効か? ソロモンマホガニーは、実はマトア〔今回〕
7.移動式棚の非常停止装置は実は止まらない。立地条件を考えない工場用地の選択https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201607article_12.html
8.工場に来て、ゴムまりでキャッチボールする「東京大学」学生と注意しない新人類教員による木材の乾燥状態の検査は役に立つか? https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201607article_13.html
9.プレカット工場が大丈夫ですと言えば、逆向きの筋交いでも大丈夫か?(新華ハウジング) https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201607article_14.html
10.在来木造の構造の基本を崩すことに理由を求めず、構造の基本について「絶対の証拠」を求める男(フリーダムアーキテクツデザイン) https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201607article_15.html
【1】-6 機械プレカットの長所と問題点(続き)
(サ) 《「音の伝わり方」から梁の強度を調べる機械》
(株)一条工務店の工場見学会では、「音の伝わり方から梁の強度を調べる検査機」というものを見せて、それを実演して見せていました。 「梁の強度は、同じ厚さのものであっても同じではありません。 それを調べることができればいいのですが、力を加えてどこまで加えれば壊れるかやればわかるとしても、それでは使えなくなってしまいますから、他の方法で強度を調べることができないかということで、一条工務店がプレカットの機械のメーカーと共同で開発したのがこの機械です」、「梁の片方の木口面を打撃して、緑・黄・赤のどれかのランプが点灯する。 緑がつくとその梁は相当に強い、黄色だとそれほど強くない、赤がついた時は、その木は梁としては使用しない方がいいということで、そういう木は、もっと、力が加わらないところで使用するようにしています」と説明係が話していました。
私が最初にこの話を聞いたのは、浜松の工場での工場見学会に随行した時だったか、浜松での中途入社の従業員を対象とした研修の時だったか、どちらが先だったか記憶がはっきりしないのですが、両方でこの話は聞きました。 それはたいしたものだとその時は思いました。 そういったことをしていない会社の方がずっと多いはずですから、そうやって強度を調べているというのは、それだけ良心的ではないかと思いました。
(↑ (株)一条工務店・日本産業(株) 浜松工場 )
その後、栃木工場での工場見学会に行った時も、やはり、説明係は、この検査機を実演させてみせて、同様のことを話していました。
もっとも、逆に、え? と思ったのは、「一条工務店では、アメリカ合衆国のオレゴン州ポートランドに(株)一条U.S.A. という材木会社を持っており、(株)一条U.S.A. が現地で加工した木を日本に運ぶようにしています。 アメリカ合衆国産の米松(ダグラスファー)という木を梁として使用していますが、日本の商社から買うと、 「セミカスケード」か、それより下の「コースト」と言われる米松しか買えませんが、現地で買うと、「セミカスケード」より上の「カスケード」という分類の米松を買うことができます。 又、商社を通じて買う場合、丸太のまま日本に運んできて日本で角材に加工することになり、丸太のまま運んだのでは、実際には、削り落として使用しない部分まで運びますが、(株)一条U.S.A.では、現地で丸太から角材に加工して角材の状態で日本に運ぶので、使用しない部分は現地で削り落として、使う部分だけを運ぶことができるので、運送の費用も節約することができるのです」といったことを話していたのです。 しかし、中途入社の社員対象の新入社員研修で、講師役の人が話してくれたのですが、「今は、一条は、商社を通じて買うものと、(株)一条U.S.A.から日本に運んでくるものと両方あります。」「両方を、まぜて使っています」と教えてくれたのです。 どちらのものでも、不良品ということはないので、使って悪いということはないのですが、工場見学会では、説明係が、「一条工務店では、梁桁材を日本の商社を通じて購入するのではなく、アメリカ合衆国のオレゴン州ポートランドに一条U.S.A.という材木会社を設けて、現地で購入して現地で角材に加工して日本に運ぶということをしています。 米松でも、現地で購入した方が目が詰まった良い木が買えますが、一条工務店のように現地に材木会社を持つということをしていない会社では、商社を通じて購入するしかありませんから、一条工務店と同等のものは買えないことになります」といったことを話していました。 そして、バスでの工場見学会の際に、行きに見込客にバス中で見ていただくように作成したレーザーディスクでも、ナレーターが同じようなことを話していました。 実際には、(株)一条工務店でも、現地で(株)一条U.S.A.が買ったものと日本の商社を通じて買ったものと両方を使用していて、両方のどちらがその契約客のお宅で使われることになるかはわからなかったのですが。 そうなると、どちらであっても、不良品ではないとしても、現地で買ったものを一条工務店では使用しているとお客様には説明しておきながら、日本の商社を通じて買ったものがそのお客様の家で使われるということもあるということです。 それでは、嘘をついていることになりませんか。 なりますでしょ。 日本の商社を通じて買ったものでも、別にそれは不良品ではないのですが、現地で買った日本の商社から買ったものより目が詰まった良い米松を使っていますと言って契約させて、実際はそうではない、というのでは、客を騙していることになるのと違いますか。
米松(ダグラスファー)には、アメリカ合衆国からカナダにかけてのロッキー山脈の西側にあるカスケード山脈でとれる「カスケード材」、「セミカスケード」、その西のコーストレーンジス山脈でとれる「コースト材」があり、カスケード材が最も目が詰まっており、続いて、セミカスケード材、その下がコースト材らしい。 コースト材の下に、「ツーボード」だったかそういう名称に分類されるものがあったはずです。 現地で買えば、カスケード材が買えるが、日本の商社を通じて買うと、セミカスケードかコーストだというのです。 実際に、どれだけ目が詰まっているか詰まっていないかはわかるのかというと、最初の研修の時に講師として説明してくれた人は「ある程度、見ればわかります」と言い、浜松の工場で置かれている米松を見て、「これは、現地で買ったものですね」「こちらは商社から買ったものですね」と指さして言ってくれたのですが、その時点では、よほど経験のある人でないとわからないものかと思ったのです。 しかし、何回か一条工務店の浜松工場・栃木工場・「西東京工場」(山梨県上野原市)に足を運んで見てきた結果、わかるようになりました。 目の詰まり方がぜんぜん違う木が2種類あるのです。
実際には、現地で買っているものと商社を通じて購入しているものがあるのに、「一条工務店は現地で買っているから商社を通じて買う場合よりも目が詰まったいい米松を使えるのです」とお客様に話していたというのは、それでは嘘つきですが、できるだけ良いものを安く買おうという努力の結果であったというのであれば、商社を通じて買ったものでも、それは不良品ではないので、まあ、嘘つきがいいわけではないとしても、不良品ではないのだから、悪くないのかなと考えることもできるかもしれません。
しかし、ここで問題です。 梁桁材の一方の木口面を打撃して、音の伝わり方から、その木が目が詰まっているかどうかを調べて強度を調べる機械というのが、浜松工場や栃木工場にはあって、工場見学会の時に実演して見せていたわけですが、別にそんなもので打撃して調べなくても、現地で買ったものと商社を通じて買ったものなら、現地で買ったものの方が目が詰まっているというのは、「見ればわかる」のです。 一目瞭然なのです。米松(べいまつ)と言われてもどんな木か知らないという人は見てもわからないかもしれませんが、特別にものすごい修練が必要とかいうものではないのです。ある程度、見てくればわかるのです。
そうなると、現地で買ったものは、打撃で調べる機械でコンと叩くと、おそらく、緑が点灯するものが多いと思うのですが、商社を通じて買ったものは、もしも、現地で買ったものの基準に合わせて判定を出せば、黄色か赤が点灯してしまうものが多いのではないでしょうか。 そうなると、それらは、廃棄はしないとしても、「切って、もっと力が加わらない他の場所で使う」という使い方をしなければならないのでしょうか。 (株)一条工務店はそんな使い方しかできないようなものを買っているのでしょうか。 そういったことを考えると、あれ? とか思いだすわけです。
さらに、目の詰まり方が同じであっても、節があるかどうかで音の伝わり方が変わったりはしないのだろうか、とか思いませんか。 疑問を感じた時に質問すると怒られる会社なんです、(株)一条工務店という会社は。 だから、だんだんと質問しなくなりました。 でも、そう思いませんか。 節がいくつかある木とあまり節の無い木なら、目の詰まり方が一緒でも音の伝わり方は変わるのではないか、と。
そして、梁の場合、柱と違って、木口の断面で見ると、上下に長い長方形の形状に切って使いますが、木の目、木の年輪が上下に並んでいるように切られた梁材と、横に並んでいるように切られた梁材では、同じ目の詰まり方でも、音の伝わり方が同じでも、梁に過重がかかった時、上下に年輪が重なるように切られた梁材の方が強いのではないか。 すべての梁材を横にではなく上下に年輪が重なるように切ることができれば良いのですが、実際は、木材をできるだけ有効に利用したいと考えるとそうもいきません。 その結果、上下に年輪が重なるように切られた梁材と横に年輪が重なるように切られた梁材が出てきますが、それは目の詰まり方が違うわけではないので、木口面をコンと叩いて音の伝わり方から強度を調べるという方法では、1本の木から加工してものなら、どちらも同じ結果が出てしまうのではないのか。 そう考えると、あの機械って、工場見学会の時には、大道芸人の芸みたいに、なんか、すごい! とか感動しますが、実際には、どれだけ信用できるのだろうか・・・・・とか思ってくるわけです。
[第426回]《木造建築に際し機械プレカットは信用できるか―[1]寸法違いの丸太梁、ホゾ穴のない土台、鉋がけ不良の柱》https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201607article_7.html (エ)で、上下に年輪が重なるように切断された米松(ダグラスファー)の梁で、本来なら、辺材側を下、芯材側を上に加工するべきであるのに、辺材側を上、芯材側を下に加工した梁が工事現場に送り届けられたということがあったことを述べました。 もし、梁桁材の木口面をコンと叩いて音の伝わり方から梁の強度を調べるということをやるのなら、継手(つぎて)・仕口(しぐち)といったものを加工するより前に検査をすることになります。 ということは、その梁の強度が強いか弱いかを調べて、これは梁として使っていいですよとなった後で、辺材側と芯材側のどちらを上に加工するかは決まるということになります。 もし、芯材側が上、辺材側が下となるように使用するなら大丈夫という「判定」であったとしても、それを上下逆に加工したとするとどうなるでしょうか。音の伝わり方から強度を推定する検査機械というのは、機械自体はその梁がどちらが上として加工されるかわかるわけではないのです。
結論を言ってしまいましょうか。 結論として、(株)一条工務店・日本産業(株)では、工場で実際に梁桁材を加工する際に、そんな検査機械でコン! なんて、やってないのです。 もともと、あれは、見世物だったのです。 だいたい、上野原の工場にそんな機械があったかどうか。 なかったのじゃないか。 でも、梁桁材は加工して出荷していましたから。 木口の片方をコン! と叩いて、音の伝わり方から、緑か黄色か赤かのランプがついて、赤だったらブ~ゥ! 音がなるというのは、工場見学会に見に来た見込客に見せるためのものだったのです。 実際には、そんなものやってなかった。 なんだ・・・、嘘の多い会社だこと・・・と思って、もう慣れた!と思っていたら、まだまだ、気づいていない嘘があった。
考えてみると、[第427回]《木造建築に際し機械プレカットは信用できるか[2]―二つに割れた梁、大黒柱に大きな節、いいかげんISO》https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201607article_8.html の(オ)で述べましたね。 福島県双葉郡広野町で建てていただいた私が営業担当のお宅で、玄関の真上の位置で、梁が真っ二つに割れていたということがあったことを。 上棟の際に、現場に届いていた材木のブルーシートを開けた段階で気づいたものの、そのまま入れたことがあったことを。 私が、工事担当に、大急ぎで工場に電話して、その1本を加工しなおして届けてもらえないか言ってくれと何度も何度も言ったのに工事担当がきいてくれなかったことを。 その話を山梨県上野原市の「西東京工場」の「工場長」になっていたW邊に話したところ、「な~んだ、言ってくれればいいのにい」と残念がったことを。 真っ二つに割れた梁が工事現場に届いたのは、その時だけでなく、それより少し前にも同じ営業所の営業が担当の工事現場でもあったことも述べましたね。その時は、割れた箇所は腰掛鎌継ぎの継手の位置より下でしたので、そのまま入れたのでは、割れた下半分は落ちてしまうので、又、工事担当が私の広野町の方の時の工事担当とは別人でしたので、工場に電話を入れて、急遽、梁を1本だけ加工しなおして、昼頃、トラックが梁を1本だけ運んできて、その新しく加工したものを入れたわけですが、それほど離れていない期間で近い場所で2度あったわけです。私が一生懸命調査してのではなく、個人的に出くわしたものだけで。 ということは、たまたまではないわけです。
雁屋哲 作・花咲アキラ 画『美味しんぼ(おいしんぼ)』に、「初卵(ういらん)」の話がでていました。雌の鶏が、生まれて最初に産む卵を「初卵(ういらん)」と言って、他の卵よりも栄養分が多く含まれていておいしいという俗説があるものの、それは、初鰹をありがたがるようなもので、別に、合理的な理由があるわけでもなく、初卵が他の卵よりもおいしいとか、栄養分が豊かに含まれているとかいったことは、科学的に立証されたものはないというのです。 しかし、海原雄山と山岡士郎が食の対決をおこなった時、海原が用意した料理がおいしかったことについて、海原は「この卵は初卵だからだ」と言うことがあり、山岡が「初卵をありがたがるのなんか、単なる迷信だ。何の意味もない」と言うが、海原は「それなら、その卵が初卵かどうか、どうしてわかるのだ?」と言う話がありました。 鶏が生まれて最初に卵を産む時、ブロイラーではなく、放し飼いにして買っている鶏が初めて卵を産んだ時に、その卵が初卵だと把握するためには、始終、鶏に目を行き届かせていなければいけない。だから、初卵だとわかる飼い方・育て方をしている鶏が産んだ卵なら、初卵であるかないかにかかわらず、良質なものであるはずだ、と海原は言うのです。 (株)一条工務店が工場見学会で見せていた、木口面をコンと叩いて音の伝わり方から梁の強度を調べるという検査機械ですが、実際に役に立つものかどうか、疑問がありますが、たとえ、そうであっても、そういった方法ででも強度を調べて使おうという姿勢でやっていたのなら、その姿勢で加工したものなら、悪くないものではないかと思うのです。 そして、もしも、そうやって、木口面をコンと叩くことで梁桁材の強度を調べるという機械で強度を調べて、心もとないと思えるものは、梁としては使わずに他のもっと力が加わらない箇所で使うようにするという工場見学会の時に説明係が話しているようなやり方をしていたのなら、真ん中から真っ二つに割れた梁材が上棟現場に届くということはなかったはずだと思いませんか? それだけ、気をつけて梁桁材を見て、加工していたならば、真っ二つに割れたようなものをそのまま出荷するようなことはしていないと思います。 見てないのです。 もちろん、木は出荷する時点で割れていなくても、日が立つうちに割れるということもありますが、出荷する時点で気をつけて見ておれば、ある程度わかるはずなのです。 それを見ていないということでしょう。
『美味しんぼ』には、山岡らが会社の近所の食堂に行くと、袋に入った野菜を袋のまま包丁で切る店があって、山岡は「注文すべて取り消し」と言って店を出るという話がありました。 袋を開けて洗いもせずにそのまま切るなんて、と。 「でも、清潔なんだろ」と副部長が言うと、山岡は、たとえ、清潔なものであったとしても、料理人は、袋をあけて、問題のない食材か自分の眼で調べた上で切るものだ。それが食を提供する仕事についている人間の勤めだと言います。 木口面をコンと叩いて音の伝わり方から梁の強度を調べるという見世物芸みたいな検査機械ですが、実際に役に立つか立たないかにかかわらず、そういうことをやって問題のない材木かどうか調べて加工し出荷しようという姿勢であったならば、真っ二つに割れた梁材が上棟現場に届くということは少ないはずなのです。 それが届いているのです。 かつ、私が、工場に電話して大急ぎでその1本を加工しなおして届けてもらえないかと言ってくれと何度も何度も頼んだにもかかわらず、工事担当は拒否したのですが、その1本、大急ぎで加工しなおして工事現場に届けるという手間がかかったとしても、真っ二つに割れた梁を平気で出荷した人間の方の責任ですからね。その現場の営業担当が手間かけさせたのではありませんからね。 その木口面を叩いた打撃音の伝わり方から強度を調べるという検査機械ですが、実際にどれだけ役にたつものであるかにかかわらず、そういったことでもやってより問題のないものを届けようという姿勢なら、その姿勢の分だけ良い家ができると思います。 しかし、実際には、工場見学会の時に、大道芸みたいにやって見せることで、工事が進んだ段階で、うちの家に使われている木はあまり良くない木ではないのだろうかとお施主様が不安に思うようなことがあった時に、「音の伝わり方から梁の強度を調べる機械で検査した上で使用しているものですから大丈夫です」と言って切り抜けるためのものとして使っていて、実際にはそんな機械による検査なんかやっていない、やっていないのに、「他社にはない強度を調べる機械で調査した上で使っている木ですから心配いりません」などと言うというそういう姿勢であるわけですから、その姿勢の分だけ、真っ二つに割れた梁材が工事現場に届く確率が高くなっている、ということです。 私の方は嘘は言っていませんからね。
[第427回]《木造建築に際し機械プレカットは信用できるか[2]―二つに割れた梁、大黒柱に大きな節、いいかげんISO》https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201607article_8.html の(オ)で述べたように、真っ二つに割れた梁でも、特に、営業担当が相当いいかげんな方の営業ではなく、「お客さんにとってはいい営業だと思う」と他の営業から言ってもらっていた私が工場に連絡して急遽加工しなおして届けてもらうように頼んでもらえないかと何度も懇願してもそれでも工事担当が拒否した会社が(普通は、営業担当がそう言うのではなく、工事担当の方がそういう配慮をするべきものだと思うが)、梁の木口面をコンと打撃して強度を調べる検査機械で検査して赤ランプがついたとしても、何十人が見ている工場見学会の時ならともかく、そうでもない時に、そういう検査をして赤ランプがついたとしても、それを梁として使用するのをやめるか? というと、やめそうには思えないでしょ。 「よそはそんな検査なんてやってないんだから」ということで、たとえ、検査して赤ランプがついても、そのまま使うでしょ。この会社の体質から考えて。 だから、工場見学会の時に、大道芸みたいにやってみせる音の伝わり方から梁の強度を調べる検査機・・・なんて、あんなもん、単なる“ おもちゃ ” ・・・ということです。 おもちゃ。
【なんともいいかげんな 木材の「商品名」】
梁桁材(はり けた ざい)には、(株)一条工務店では、米松(べいまつ)(ダグラスファー)を使い、一番上の位置にだけ、国産の松の丸太梁(野物)を使用していましたが、その米松(ダグラスファー)を、(株)一条U.S.A.が現地で購入した「カスケード材」「セミカスケード材」を使用していると言っていたものの、実際には、商社を通じて購入した「セミカスケード材」「コースト材」とを混ぜて使用していたらしい、という点で、それらは不良品ということではないのだが、言っていることと実際とが違うという点で問題があった。
柱材(はしら ざい)はどうかというと、(株)一条工務店が見込客に見せていたビデオ・レーザーディスクでは、女性ナレーターが「一条工務店の家の柱で使用している桧は東濃桧(とうのう ひのき)」と言っていたにもかかわらず、浜松工場でも栃木工場でも山梨県上野原市の「西東京工場」でも、「東濃桧」とスタンプが押された桧の柱材も置いてあったものの、同時に、「吉野桧」「美作桧」「博多桧」というスタンプが押された桧の柱材もまた置かれていたのだ。吉野というと奈良県の南西部の吉水神社などがある吉野、美作(みまさか)は岡山県北部。博多はおそらく福岡県福岡市博多区の博多ではないか。 博多の街中で桧を造林しているわけではないだろうけれども、福岡県の山林で造林しているものを博多で集めて販売しているのか、その地域の有名な地名をブランド名として入れたものか。東濃(とうのう)とは、岐阜県南部の美濃の東側を指すわけで、有名な桧として「木曽桧」というのがあるが、「木曽桧」とは厳密には木曽地方の天然の桧のことを指し、木曽地方の桧でも造林木の桧のことを「木曽桧」とは言わず、また、天然林の木曽桧はうかつに伐採するわけにはいかないものであり、東濃地方というのは、「木曽桧」の産地の隣くらいの場所であることから高く評価されていますが、吉野桧もまたブランドであり、美作の桧だって何も悪いものではないのですが、ビデオで「一条工務店で使用している柱の桧は東濃桧」と女性ナレーターが話しているのを聞いた上で、工場に置かれている「吉野桧」「美作桧」「博多桧」とスタンプを押された桧材を見ると、なんで、嘘を言うのかなあ~あ・・・という気がしてきたものです。
さらに言うと、巾木・廻縁などに(株)一条工務店では「ソロモン マホガニーを使用しています」と営業は言い、そして、カタログにもそう書かれていたのです。ソロモン諸島とは、インドネシアの東のはしにニューギニア島があり、ニューギニア島は西半分がインドネシア、東半分とその北東部の島がパプアニューギニアという国で、パプアニューギニアの東あたりにソロモン諸島があり、国名もソロモン諸島という国名です。
(↑ 「旗」マークが、ソロモン諸島で最大の島 ガダルカナル島〔第二次世界大戦中、日本軍が餓死した〕 の 首都 ホニアラ )
普通に聞くと、ソロモンマホガニーというのは、ソロモン諸島で産するマホガニーか? と思いそうですね。 (株)一条工務店の営業でもそう思って、お客様に「ソロモン諸島でとれるマホガニー」とか話していた人間がいました。 嘘ですからね。 ソロモン諸島でマホガニーなんてとれませんから。
岡野健(たけし)『木材のおはなし』(1988.2.29.日本規格協会)で「木材の名前」として説明されていますが、木材の名称には、いくつかの種類があって、
和名・・・・日本全国広く通じる名前。 アカマツ、エゾマツ、ケヤキ、ヒノキなど。
一般名・・・・和名、及び、アフリカンブラックウッド、ローズウッドなど広く通じる和名に準じた名前。
地方名・・・・ヒバを能登ではアテと呼んだり、エゾマツを北海道でクロマツと呼んだり。
学名・・・・1867年、パリで国際植物命名規約が決められた、国際的に通じる名前。
市場名・・・・・ラワンはフィリピンでの呼び名で、マレーシアではセラヤ、インドネシアではメランチ。
このくらいは、「まあ、いいか」てところですが、ややこしいというのか、ずっこいというのかが、「商品名」というやつです。
商品名・・・・・輸入業者や加工業者がつけた商品名。
この商品名というヤツがくせものなのです。 岡野健『木材の話』には≪ラワンをフィリピンマホガニーと呼んだり、スプルースを柱の場合はアラスカヒノキ、碁盤にしたら新カヤと呼んだりするので、誤解を招くことがあります。≫と書かれていますが、ソロモンマホガニーもその類で、もともとは、マトアという木なのです。
宮本茂紀編『原色インテリア木材ブック』(1996.9.25.建築資料研究社)によると、≪チークとならぶ代表的高級木材≫のマホガニーは、センダン科で、産地は中南米、アフリカ。 ホンジュラスマホガニー、コバノマホガニーと言われ、≪中南米で採れるホンジュラスマホガニーが最も良質とされる。これはヨーロッパではメキシカンマホガニーとも呼ばれている。アフリカでとれる質のよいものもメキシカンマホガニーと呼ばれるのでまぎらわしいが、この名称は質のよいマホガニーの総称として使われているようだ。・・・東南アジア、オーストラリア、ニュージーランドなどのマホガニーは、木目は美しいが粘りがないので、用途に注意したい。≫≪高級な家具や装飾用材に用いられる。≫というもので、マトアは、ムクロジ科で、産地は東南アジア。≪床材・キャビネットなどに用いられる。≫
食材でも、ヒラタケのことをシメジと言ったり、キャペリンを子持ちシシャモと呼んだりしていますが、木材にも評価が高い木材に近い名称をつけるということがおこなわれているようなのです。 私、子持ちシシャモ好きですし、カニ風味のタラ肉も、赤貝もどきの さるぼう貝もけっこう好きですけれどもね。
『原色インテリア木材ブック』では、≪マホガニーは世界的な優良材であるだけに、まがいものが最も多い材でもある。 樹種が全く違うのに、イメージのよいマホガニーの名をつけたり、あるいは本物のマホガニーと称して使われているものがたくさんある。≫と出ている。 但し、マホガニーもどきの木材というのは、とんでもない不良材なのかというとそういうわけでもなく、『原色インテリア木材ブック』でも、サぺリを≪マホガニーに似た良材≫と評している。 マトアは、決して悪い木ではないので、ヒラタケをシメジなどと言ったりせずに、ヒラタケはヒラタケでおいしいのだから、ヒラタケと言って売るべきだと『美味しんぼ(おいしんぼ)』の登場人物が言っていたが、同様に、マトアはソロモンマホガニーなどと言わずに、マトアと言えばよいと思うのだが、なんか、ややこしい商品名で呼びたい人がいるようなのだ。 特に、ホンジュラスマホガニー・メキシカンマホガニーはいずれもマホガニーであるのに対し、ソロモンマホガニーはマホガニーではなくマトアだというのは、なんともややこしい、というのか、嘘つきではないと言うかもしれないけれども、普通、しろうとさんは「ソロモンマホガニー」と言われるとソロモン諸島産のマホガニーだと思うのと違いますか?
但し、マトアのことをソロモンマホガニーと言い出したのは、(株)一条工務店ではなく、カリモク家具(株)http://www.karimoku.co.jp/ らしい。 カリモク家具の従業員はそのあたりを認識しているだろうかと思い、今はその場所にはなくなったようだが、東京都中央区の都営浅草線「東日本橋」駅の近くにカリモク家具のショールームがかつてあったので、そこに行った時に、ショールームのおねえさんが、「これはソロモンマホガニーという木を使っているんです」と言うので、「ソロモンマホガニーというのは、要するに、マトアでしょ」と言ったところ、そのおねえさんはどう言ったかというと、「え、マトアって何?」。 カリモク家具のおねえさんはそうおっしゃったのです。まあ、ショールームのおねえさんをいじめてもしかたがないので、「だから、パプアニューギニアとかソロモン諸島とかそのあたりで採れる木でしょ」と言うと、「そうです、そうです」ということでした。 だから、ソロモンマホガニーというのは、マホガニーではないのです。ついでに、「東日本橋」だって、もともと、日本橋でもない場所に東日本橋なんて名前をつけてるのですけれども。
東日本ハウス は、今は、日本ハウスホールディングス(株)http://www.nihonhouse-hd.co.jp/ と名前が変わったらしいが、2000年頃、(株)一条工務店の栃木県佐野市の営業所にいた時、展示場に来場された方が、「東日本ハウスでは、柱は総桧だそうです」と言われ、「総桧でもアメリカから桧を輸入しているから高くないんですと言われました」とおっしゃったので、まったくつくづくよく言うよなあとあきれたことがありました。 いいですか。 桧という木は、日本列島の北は福島県、南は台湾の中部まででのみ採れる木であって、「アメリカ合衆国産の桧」などというものは、地球上に存在していないのです。 まったく、ドイツもこいつもフランスもよく言うよなあ~あ・・・・・。 台湾は地理的に日本列島とひと続きの位置にあり、台湾産の桧とか「台桧」というのは、日本の桧に比べて木の肌がいくらか黄色っぽいとかいう話もありますが、日本の桧と同じ種類の木であって、東濃桧とか吉野桧とかと同じく産地の違いですが、「アメリカ合衆国産の桧」などというものはありませんし、「米桧(べいひ)」と言われるのは、ポートオルフォードシーダーという桧と同じ種類の桧とは別の木で、日本の桧と同じくらい強度は強い木だが、日本の桧のような良い香りはしない、もともと、日本の桧よりも値段の安い木だということです。「だということです」というのは、私は材木屋ではないので、自分が取引したことがあるわけではなく、今里隆『これだけは知っておきたい木材の知識』(鹿島出版会)とか宮本茂紀編『原色インテリア木材ブック』(建築資料研究社)とかを見て学習した結果としてのものなので、「だということです」という表現をしているのであって、決してでまかせで言っているのではありません。東日本ハウスのしょーもないおっさんとは違います。
桧に見た目が似ているといえば似ているのかもしれないが、桧のような強度はなくまったく別の種類の木であるスプルースを「アラスカヒノキ」と言ったりということは、私はあんまりいいとは思わないのですが、こういうことは、建築屋・材木屋・家具屋の世界ではけっこうおこなわれてきたようです。 カニ風味のタラ肉はけっこう好きですが、それは、「これはカニ肉ではありません」と正直に書いてあるから好きなのであって、カニだと言われて信じて食わされたのでは、やっぱり「おもろない」ですわな。 「ソロモンマホガニー」は(株)一条工務店が言い出したのではなく、カリモク家具(株)が言い出したらしいのですが、なんだか、マトアはマトアと言えばいいのに、という気が私はします。マトアというのは、決して悪い木ではないのですから。金目鯛は鯛とは別の魚だけれどもおいしいし、「カラフトししゃも」「子持ちシシャモ」はシシャモとは別のキャペリンという魚だけれどもおいしいしね。カニ風味のタラ肉も好きだし、がんもどきも好きだし。「松茸風味の椎茸使用の永谷園のお吸い物」だってけっこう飲むし。本物の松茸なんていったいいつ食べたことやら。
《整理》
マホガニーである「マホガニー」
ホンジュラス マホガニー、メキシカン マホガニー ・・・・・中南米産、アフリカ産の良質のマホガニー。センダン科。
↑
↓
マホガニーではない「マホガニー」
ソロモンマホガニー ・・・・マトアのこと。 パプアニューギニア・ソロモン諸島などでとれる。ムクロジ科。
フィリピンマホガニー ・・・・ラワンのこと。 フタバガキ科。
桧である「桧」
東濃桧、吉野桧、美作桧、台桧・・・東美濃地方産の桧、吉野地方産の桧、美作地方産の桧、台湾産の桧。
↑
↓
桧でないヒノキ科の「桧」
米桧(べいひ)・・・・ポートオルフォードシーダーのこと。ローソン桧とも言う。 桧とは同じ種類の別の木。 桧に劣らない強度があるが、桧のような良い香りはしない。桧よりも、もともと、値段は安い。ヒノキ科。
ラオス桧・・・ヒノキ科。ラオス産。
↑
↓
桧でないヒノキ科でもない「桧」
アラスカ桧・・・・ スプルス のこと。ホワイトウッドとも言う。 見た目が桧に似ているが、 桧とはまったく別の種類の木。桧のような強度はない。マツ科。
千葉県に 木の国工房http://www.kinokuni-koubou.com/ という会社があって、もともとは、親会社が柏市の材木屋で、かつて、静岡県浜松市の(株)一条工務店と共同出資会社で(株)一条工務店柏 という会社を作ってやっていたが、後に共同出資会社を解消して、木の国工房 という名前の会社を設立して独自にやるようになったが、かつての(株)一条工務店と共通するものも持ちながらも、親会社が材木屋だけに、そのあたりにこだわりを持ったものを作っているようだが、10年程前に同社の展示場をのぞいた時、土台に「オーストラリア桧」というものを使っているといって、見本の「オーストラリア桧」というものを持たせてもらったことがあった。ずしっとした重量感があり、たしかに、これは土台として使えばおそらく虫害も出にくいであろうし、柱が沈むこともないだろうし、たしかに、これは悪くないだろうという印象を受けたが、桧という木は日本列島の北は福島県、南は台湾中部までで生える木であって、オーストラリアに桧はないはずで、持った感じ見た感じも桧とは別の木だ。木の国工房 の親会社の万代のHPhttp://e-mandai.co.jp/2007/12/post_30.html には、≪オーストラリア桧(サイプレス)は、オーストラリアの針葉樹です。…≫と出ている。《ウィキペディア―イトスギ》https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%88%E3%82%B9%E3%82%AE には≪イトスギ(糸杉、学名:Cupressus)は、ヒノキ科イトスギ属の総称。サイプレス(英: Cypress)、セイヨウヒノキ(西洋檜)ともいう。≫と出ている。
フリーダムアーキテクツデザイン(株)(本社:東京都中央区。)http://www.freedom.co.jp/ は設計会社で施工は通常別の会社が担当しているが、仕様書で構造材として使用する材木を指定している。それには、柱材は「赤松集成材」と書かれていたのだが、日本産・国産の赤松というものを、わざわざ、集成材にして使用するかな? と思ったのです。もとより、日本の赤松・黒松というのは、建築構造材として使用する時、梁として使用することはあっても、あまり、柱としては使用しないのではないか。「適材適所」という考え方から、日本産の松、赤松(女松、雌松)も黒松(男松、雄松)も、梁として使われても、柱としてはあまり使われないのではないか。 おそらくですが、これは、「欧州赤松」でしょう。 今里隆『これだけは知っておきたい 建築用木材の知識』(1985.鹿島出版会)を見ると、「赤松(女松、雌松ともいう)」は≪ 産地:本州、四国、九州屋久島まで各地に自生する低地性の樹で、松の中では質的にも量的にも代表的なものである。≫と出ています。宮本茂紀編『原色インテリア木材ブック』(1996.建築資料研究社)にも、「アカマツ 赤松。メマツ(雌松)。 Japanese red pine 」は≪産地:日本≫と出ています。『これだけは知っておきたい建築用木材の知識』には、「赤松(女松、雌松ともいう)」と別に、「北洋材(ソ連材)」として「欧州赤松(マツ科)」が掲載されていて、それは≪産地:ヨーロッパ全域、中央アジア、シベリアにかけて広く分布する。・・・スウェーデン、フィンランド、ソ連、ポーランドから大量に輸出される。欧州で最も広く用いられる市場材の一つで、 わが国の雌松に似ている。・・≫ ≪重さ強度とも中くらいで加工容易、耐水性も普通で日本松に比し通直であるが強度は劣る。≫と出ています。普通、日本の松というのは、梁桁材としては使用しても、柱材としては一般にあまり使用しないように思うのです。「松というのは、たいてい、曲がっていますから」と言う営業がけっこういるのですが、そう思って、山に生えている松を見ると、あまり曲がっていない松を見ることがあり、お寺の庭に生えているわざと曲がらせている松と勘違いしているのではないか、という気もしないではないのですが、そうはいっても、まっすぐに伸びる木であることから柱として使うのに適している桧、「まっすぐ」の「すぐ」が「すぎ」になったのではないかとも言われる杉に比べれば、曲がりやすい木であり、「ねばりがある」ということで横向きにして梁に使うことはあっても、柱にはあまり使わないように思うのです。 フリーダムアーキテクツデザイン(株)が柱に使用している「赤松集成材」というのは、あれは、おそらく、≪わが国の雌松に似ている≫≪日本松に比し通直であるが強度は劣る≫という「欧州赤松」ではないかと思います。これも、「欧州赤松による集成材」のことを「赤松集成材」という表現をしたのも、フリーダムアーキテクツデザイン(株)が最初にやったことではなく、「赤松集成材」を販売している材木屋がそういう表現をしたもので、材木屋から言われた表現をそのまま掲載していたのでしょう。もとより、フリーダムアーキテクツデザイン(株)の私立大学の建築学科か建築の専門学校でてきただけの若造でしかない自称「設計士(さま)」がこういったことを理解しているとは考えにくい。
東海住宅(本社:千葉県八千代市)http://www.10kai.co.jp/ では、柱に「ホワイトスプルースの集成材」を使用していた。スプルースというのは、「アラスカ桧」と言ったりもするが、上に述べたように、桧と見た目が似ているが桧とはまったく別の種類の木であって、強度は桧にははるかに劣るもので、それゆえ、造作材として使用はされても構造材として使用されることはあまりない木であったはずで、『これだけは知っておきたい建築用木材の知識』にも≪用途:一般建築用材(特に内部造作材)、その他家具、建具指物、航空機用材など。≫と出ている。ホームセンターに行って見ると、犬小屋などにスプルースが使われているのを見ることがある。その程度の木であると理解していたのだが、東海住宅(株)はホワイトスプルースの集成材を柱に使用していたので、建売屋の建物・不動産屋の建物というのはその程度ということか、と思っていたのだが、2008年、東海住宅(株)の花見川店の店長になっていたT中(男。当時、60歳)が、そのホワイトスプルースの集成材の柱を指さして、「お客さん、この柱は集成材でムクの柱の1.5倍強いんですよ」などと言っていたので、バカか! ホワイトスプルースの集成材が桧のムク材や杉のムク材の1.5倍強いわけないだろうが、と思い、まったく、この人相の悪いヤクザ顔の不動産屋オヤジ、まったくつくづくよく言うよなあ、とあきれたことがあった・・・が、それに比べれば、「赤松集成材」の方がはるかにマシ・・・かもしれない。まあ、日本の赤松を集成材にして使ってはいないと思いますよ。まず、「北洋材」「ソ連材」の「欧州赤松」の集成材でしょう。
今里隆『これだけは知っておきたい 建築用木材の知識』には、「唐松(落葉松ともいう)」≪日本特産の樹でわが国唯一の自生落葉針葉樹である。・・≫と別に、「北洋材(ソ連材)」として「北洋唐松(マツ科)」が出ています。 ≪産地:落葉針葉樹でシベリア、沿海州、樺太、千島に分布する。・・・・日本材の唐松とは異種である。≫≪材は堅く強じんで樹脂分が多く耐水性に富むが、その割合に耐久性が低い。日本の唐松に比し年輪がつんでいて重い。・・≫と出ている。
1980年頃、慶應義塾大学に入学した頃、ロシア語の先生から聞いた話だが、日本の会社では、「英語ができる人」の需要は相当に多いが、同時に供給も多い。 それに対し、「ロシア語ができる人」は供給が少ないのに対して、英語ほど多くないとしても需要はけっこうあるので、だから、需要と供給のバランスを考えると「ロシア語はおすすめですよ」と言われたことがあった。 戦後の日本というのは、「日本はアメリカ(合衆国)のメカケみたいなものだから、ダンナの機嫌をとるのは当たり前だ」とか池田勇人が言ったようなそういう国で、「西側の国」であったのだが、現実に、ソビエト連邦が崩壊してロシア連邦が社会主義をやめるより前から、「社会主義国」ソ連との貿易額は決して少なくなかったのだ。 「赤松集成材」というのも、それではないだろうか。
もうひとつ、胡散臭いと思うのが、けっこう多くの住宅メーカーが使っているらしい「桧集成材の柱」というヤツだ。 「赤松集成材」は、赤松ではなく欧州赤松であろうけれども、5枚ほどの板を貼り合わせて角材に作った集成材の、貼り合わせる元の物は欧州赤松のはずだ。 それに対し、「桧集成材の柱」というのは、真壁の和室で使用するのだが、これは、何かよくわからん木を5枚貼り合わせて、その表面に桧を皮のように貼ったというもので、いわば、「桧メッキ」みたいなものなのだ。「桧集成材」と言われると、たいてい、「しろうとさん」は表面だけでなく中も桧を貼り合わせたものと思うのではないか。 この点については、在来木造で真壁和室を作る場合は、(株)一条工務店のように桧ムクの方が信頼できる。「桧集成材の柱」を真壁和室に使用している住宅メーカーの展示場に行って、営業に「『桧集成材の柱』というのは、表面は桧だとして、中の木は何なのですか」と質問しても、答えることのできる人間は少ないと思う。 木質パネル構法やツーバイフォー工法で真壁和室を作る場合は、柱はあくまで見せるための造作材であって構造材ではないので、何が何でもムクである必要はないが。
赤松(雌松、女松)・・・・日本産。本州・四国・九州屋久島まで。
↑
↓
欧州赤松・・・・ヨーロッパ全域、中央アジア、シベリアにかけて。日本松に比し通直であるが強度は劣る。
いずれも、マツ科。
唐松(落葉松)・・・・日本特産。
↑
↓
北洋唐松・・・産地:シベリア、沿海州、樺太、千島。
いずれも、マツ科。
次回、移動式棚の非常停止装置は実は止移動式棚を買うカネがあったら地べたを買った方が効率よいのに・・ 他 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201607article_12.html
(2016.7.11.)
☆ 機械プレカット工場は信用できるか+プレカット工場を異常に信用する男2例
1.寸法違いの丸太梁、ホゾ穴のない土台、上下逆加工の梁 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201607article_7.html
2.真っ二つに割れた梁、玄関正面の大黒柱に大きな節https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201607article_8.html
3.ナンバー非取得のフォークリフトで公道走行、溝なしタイヤのフォークリフトにISO9001https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201607article_9.html
4.工場見学会の弊害。耐火材の鉱物繊維が剥落飛散 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201607article_10.html
5.日本人労働者の労働条件を引き下げる「スト破り」外国人労働者、従業員元従業員をバカにする浜松市長https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201607article_6.html
6.「打撃音から梁の強度を検査する機械」は有効か? ソロモンマホガニーは、実はマトア〔今回〕
7.移動式棚の非常停止装置は実は止まらない。立地条件を考えない工場用地の選択https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201607article_12.html
8.工場に来て、ゴムまりでキャッチボールする「東京大学」学生と注意しない新人類教員による木材の乾燥状態の検査は役に立つか? https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201607article_13.html
9.プレカット工場が大丈夫ですと言えば、逆向きの筋交いでも大丈夫か?(新華ハウジング) https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201607article_14.html
10.在来木造の構造の基本を崩すことに理由を求めず、構造の基本について「絶対の証拠」を求める男(フリーダムアーキテクツデザイン) https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201607article_15.html
この記事へのコメント