内田康夫『風の盆 幻想』と巡る高山[1]喫茶店「ロスト」を探すー高山シリーズ第5回【1/15】
[第590回] 高山シリーズ第5回(1) 内田康夫『風の盆 幻想』と巡る高山【1/15】
「推理小説」でも、西村京太郎の「推理小説」は「単に時刻表を見ただけで書いたような小説」が多いし、山村美紗だの夏木静子だのになれば、もはや、どうかしてんじゃないかて感じがしてくる。『名探偵コナン』なんてのは、警察を実際よりもあまりにもいいように思いこんでいるとともに、FBIだの公安だのを正義の味方みたいに描いており、これは、そんな漫画を子供に読ませて洗脳させようという魂胆のものと思われるとともに、犯罪のトリックはともかくもそこにあっても、そういう犯罪に至るまでの動機という点がまったくない。「子供向けだから」ということもあるのかもしれないが、「子供向け」ならたいした動機もなく人殺しをやる人間が続出するというのはもっとおかしい。これら、「推理小説論」について、いつか述べてみたいようにも思うが、この点、内田康夫の「浅見光彦シリーズ」はけっこう面白い。内田自身が述べているが、内田の作品は、「旅情」と「人情」と「推理」の3つで構成されているというのだ。その「人情」の部分として「動機」が存分に描かれているところが他の多くの駄作推理小説とは異なる。なにより、多くの「推理小説」では登場する「名探偵」が殺人事件があると、「興味がわいてきた」だの「面白くなってきましたね」だのと不謹慎な文句を口にすることが多く、実際にあった事件ではないと思いながらも読んでいて不快感を覚えることがあるのに対し、内田康夫『風の盆 幻想』(2013.実業之日本社文庫)では、登場人物の「内田康夫」から知人が関わった殺人事件の解明を推理好きの浅見光彦に依頼しようとして「どうかね、面白そうだろう」と言われたのに対し、浅見は「何を言ってるんですか。仮にも人一人が殺されたのを面白がっていいはずがないでしょう。不謹慎ですよ」ときっちりと発言している。そのあたり、作者の内田康夫はきっちりと認識できており、「推理小説」の場合、実際の事件とは異なり、本当に人が殺されたわけではないので、読者は面白がって読んでもいいとしても、登場人物にとっては実際にあった事件なのだから、読者が面白がって読んでもいいとしても登場人物が「面白くなってきましたね」などと言ってはいけないはずなのだが、そういう発言が出る「推理小説」が多くて眉をしかめるのだが、内田康夫の場合はそのあたりの認識がきっちりとできているところが他の多くの「推理小説」作家とは異なる。
その内田康夫『風の盆 幻想』での話の場所は、富山県の八尾、かつては八尾町だったが今は富山市の一部になったらしい所がメインの場所で、サブの場所として岐阜県の神岡と高山が登場する。 内田がなかなかよく配慮しているなあと思うのは、小説の中でとはいえ、人が殺されたり死体が遺棄されたりする場所は、名所旧跡とか公共的な場所とかであって、ここだろうと思われる一般人の店とかで殺されたりはしないという点である。観光名所みたいな場所でなら、小説の中で人が殺されようが遺体が遺棄されようが、かえって、観光名所として訪ねる人が増えてその地にとってはプラスになるくらいだが、個人の店とかで殺人があったとかなると、たとえ、小説の中での話にしてもイメージが良くないので、それは避けるようにしているようだ。
『風の盆 幻想』(2013. 実業之日本社文庫)の巻末には、≪ この作品はフィクションです。実在する人物、団体とはいっさい関係ありません。 ≫と書かれており、さらに、『熊野古道殺人事件』(2010.角川文庫)の巻末には、≪ この作品はフィクションであり、文中に登場する人物、団体名は、実在するものとはまったく関係ありません。なお、風景や建造物など、現地の状況と多少異なる点があることをご了承ください。≫とも書かれている・・・・のだが、片方で、作中の登場人物の「内田康夫」は、浅見光彦は実在して東京都北区西ヶ原に住んでいると述べていて、『熊野古道殺人事件』(2010.角川文庫)では、登場人物の「内田康夫」は大学教授の松岡と、≪「しかし、どうして小百合さんは、浅見の家の電話番号が分かったのかな?」「それはきみのせいだろう」「えっ?僕のせいとはどういう意味だ?」「小説に書いているじゃないか。浅見家が北区西ヶ原にあると」「あっ・・・・」 内田は愕然とした。小説の巻末に〔この小説はフィクションであり、登場する人物、団体は実在のものと一切関係ありません〕と断り書きをしてあるけれど、そんなものは効果がないらしい。≫などと書いてある。
≪ 風景や建造物など、現地の状況と多少異なる点があることをご了承ください。≫という方については、内田康夫の小説は、なかなかよく取材して書かれており、小説の話の展開とは別に、一度、そこに行ってみたいという気持ちになるようなものが多く、≪現地の状況≫をきっちりと取材した上で書かれていると思ったのだが、どこが≪現地の状況と多少異なる点がある≫のだろうと思ったのだが、名所旧跡とか公共施設とかの場合は、≪現地の状況≫のまま描かれているのだけれども、大規模でない商店とかの場合は、モデルになった店がどこか特定されないように、その場所に行っても、小説の中で描かれているものと≪多少異なる点がある≫書き方がされている、ということのようだ。
それから、「浅見光彦シリーズ」は内田が小説に書いたものをもとにした、テレビドラマがあり、漫画にされたものもあるのだが、漫画の「浅見光彦シリーズ」より小説の方がいいと私は思う。 どうも、漫画というのか劇画というのかになったものともとの小説では、もとの小説の方が優れている場合が多く、横溝正史『犬神家の一族』(角川文庫)なんてのは、漫画の『犬神家の一族』は話の内容まで変えてしまっていて、漫画のものを読んで、変だなと思ったところが小説を読むと、そうだろうなと思える。『八つ墓村』の濃茶の尼の「たたりじゃ、たたりじゃ」は名演技だったと思うけれども・・・・、ドラマの『八つ墓村』の結末は小説と少し違う。
今回、その内田康夫の『風の盆 幻想』(2013.実業之日本社文庫。 2005年9月に幻冬舎より発行。)に出てくる場所のうち、岐阜県高山市の何か所かに行ってみた。
『風の盆 幻想』では、メインの場所は富山県の八尾であり、殺された人間も八尾の人間で殺された場所も八尾なのだが、登場人物が高山で人と会う予定にしていたという場面があり、別の登場人物がかつて高山のK病院に勤めていたという話があり、さらに別の登場人物の勤め先が高山市役所となっている。何より、「内田康夫」と浅見光彦が高山に来て高山ラーメンを食べる場面がある。 「推理小説」の場合、「ネタバレ」と言うらしいのだが、カラクリを読んでいない人に言うのは良くないという説があるのだが、内田康夫の小説はそうではないと思う。基本的なカラクリを知ってから読んでも十分に読める内容を備えていると思う。 カラクリさえわかってしまえば面白くもない小説というのは、それは「推理小説」としても、あまりレベルの高い小説ではないものだと思う。 内田康夫の小説はそうではないと思うので、述べて問題はないと考える。
『風の盆 幻想』のメインの場所は富山県の八尾だが、冒頭の「プロローグ」は高山から始まる。
≪ 宮川沿いの本町通りを、鍛冶橋の交差点から南へ百メートルほど行ったところに「ロスト」という喫茶店がある。本町通りは観光スポットの一つ「高山陣屋」に繋がり、「陣屋朝市」と、鍛冶橋を挟んで東の対岸にある「宮川朝市」のあいだを行き来する観光客でいつも賑わう、いわば高山のメイン通りの一つだ。 ≫
この「ロスト」という喫茶店に、八尾から来た男が客として来店し、カレーライスを注文して食べるのだが、台風の影響で交通事情が悪いためか、約束の女性が来ない・・・・という所から話は始まる。
宮川は実在する。 本町通りも実在する。 もちろん、高山陣屋も実在するし陣屋朝市も宮川朝市も実在する。 鍛冶橋も実在する。 何年か前に訪問した際に、藤井美術民芸館の奥さんが教えてくれた話によると、もともと、鍛冶屋が多く住んでいた場所なので鍛治橋と言うらしい。 鍛冶橋は橋の中央部の両側に「手長」「足長」という妖怪じいさんの像が鎮座している。
[第459回]《飛騨国分寺から鍛冶橋、高山別院照蓮寺をへて東山白山神社へ-東山遊歩道(高山市)前半を歩く(1)》https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201610article_15.html で、鍛冶橋から宮川の南側を見た写真を掲載したので見ていただければと思う。 鍛冶橋のすぐ南側の緑色の端が柳橋。 その向こうの白い橋が筏橋。 さらにその向こうの赤い橋が中橋。
[第358回]《山桜神社 と火の見櫓、 古い町並み美術館-山下清原画展、高山昭和館、鍛冶橋の手長足長(高山市)》https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201510article_8.html に、鍛冶橋の中央の欄干上に鎮座する「手長」「足長」の像の写真を掲載した。 「手長」のおっさんのアップは[第457回]《日の出天満神社(高山市松之木町)参拝 + なぜか場所によって運転が大きく違う高山のドライバー》https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201610article_13.html で公開した。
ひとつ南側の柳橋から北側を見ると、鍛冶橋が見えるが、柳橋から見た鍛冶橋の「手長」「足長」が↓
↑手前(南側)が「手長」、向こう側(北側)が「足長」。
・・・どうも、私が高山に来ると雨が降ることが多い・・・・。
さて、問題は、≪鍛冶橋の交差点から南へ百メートルほど行ったところ≫にあるという喫茶店「ロスト」である。 本町通りを鍛冶橋のすぐ西側の交差点から南に百メートルほど行ったところというと、柳橋から西に来て本町通りと交差するあたりではないかと思われるのだが、ないんだわ。 そのあたりに喫茶店は・・・・。 なるほど、≪風景や建造物など、現地の状況と多少異なる点があることをご了承ください。≫というのは、このことか・・・。
(↑ 本町通り と 柳橋から西に来た道との交差点から本町通りを北に見る。 )
(↑ 拡大すると大きくなるので大きくして見てもらいたい。右側の柱に巻かれた黄色いのに「あんきに寄ってな 本町会」と書かれているが、「あんきに」とは、『ことりっぷ 高山 白川郷』〔2008. 昭文社〕によると、「気楽に」という意味らしい。 )
(↑ 本町通り と 柳橋から西に来た道との交差点から本町通りを南に見る。 )
この交差点の少し北の西側に 山桜神社がある。山桜神社とその火の見櫓については、[第358回]《山桜神社 と火の見櫓、 古い町並み美術館-山下清原画展、高山昭和館、鍛冶橋の手長足長(高山市)》https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201510article_8.html で写真とともに掲載したので見ていただきたい。
この喫茶店「ロスト」で何があったかというと、そこでカレーライスを注文して食べて、女性を待つものの来てもらえず帰った男というのが、八尾の老舗旅館 弥寿多家(やすだや)の若主人の安田春人らしく、この春人が自殺なのか殺されたのか遺体で見つかったのだが、この高山の「ロスト」で誰と会っていたのか・・・・という展開なのだが、ないんだわ。「ロスト」と言うだけあって、その「鍛冶橋交差点から南へ百メートルほど行ったところ」を探しても、見つからんのだわ。 こりぁ、困った。
鍛冶橋の東の南側に安川交番がある。安川交番については、[第359回]《伝統的建造物群保存地区(高山市)でも、そっくりな交番と公衆便所―安川交番、高山警察。市役所、裁判所 》https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201510article_9.html の【5】で写真を掲載した。 [第470回]《十六銀行 高山支店(高山市)、及、警察官のいない「交番」て、そういうのを交番と言うのでしょうか? 》https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201610article_26.html 【3】でも写真入りで掲載した。[第470回]の時には、この交番は無人で、無人の交番を交番と言うのだろうか・・などと思ったものだったが、今回は、ポリさんが中にいた。そこで、ポリさんに「すいませ~ん。喫茶『ロスト』て、どこにあるかわかりませんかあ~あ?」と尋ね、「何かそこであったのですかあ?」とでもきかれた際には、「殺人事件の被害者がどうも立ち寄ったらしいんですけど・・・」とか言うと・・・・、なんか、怖そうだから、やめとこ・・・・。浅見光彦みたいに「ちょっと、警察署まで来てもらえんもんかいのお」とか言われても、浅見光彦と違って「兄上が警察庁刑事局長さまで・・・」とかではないので、やめとこ・・・・。
柳橋の方を見ても、ない。↓
宮川にかかる橋は、高山駅前の観光案内書でもらった「東山遊歩道」リーフレットに掲載の「金森氏六代、頼旹(よりとき)の頃の高山の地割」を見ると、鍛冶橋の南に、中橋、枡形橋と3つしか橋はないが、今は、鍛冶橋の南に、緑の欄干の柳橋があり、柳橋と赤い中橋との間に筏橋がある。
(↑ 柳橋から南を見たもの。 向こうの白い橋が筏橋。 その向こうの赤い橋が中橋。 この写真、なかなかよく撮れていると思いませんか? )
今では慣れたが、最初に高山に来て宮川を見た時、「なんで、この川、北に向かって流れているの?」と思ったものだ。 今まで、新宿から出ている濃飛バスで来たが、今回、初めて名古屋から高山本線の特急「ワイドビューひだ」に乗ってみたが、岐阜から美濃太田までは南側の窓の外に木曽川が西に向かって流れているのだが、美濃太田を過ぎた頃からは、飛騨川が南に向かって流れる。 高山の2駅南の「久々野」の付近でも依然として南に向かって流れているのだが、高山の1つ南の「飛騨一宮」のあたりで、ふと見ると、北に向かって流れているのだ。 そこからは飛騨川ではなく宮川。 飛騨一宮と久々野の間あたりに境目があるらしい。 高山では宮川は北に向かって流れ、富山県に入ると神通川と名前を変えて富山湾に注ぐことになる。 神通川というと、どうも、イタイイタイ病というイメージがあるが、それは神岡鉱山から流れ込んだものが原因のようで、これよりずっと下流(北側)でのことなので、高山付近では影響はないはず。
さて、喫茶店「ロスト」はないのか? 江戸川乱歩『D坂の殺人事件』(江戸川乱歩『明智小五郎事件簿 1』2016.集英社文庫 所収)では、≪「ミュンスターベルヒが賢くも説破した通り」と明智ははじめた。「人間の観察や人間の記憶なんて、実にたよりないものですよ。この例にあるような学者たちでさえ、服の色の見分けがつかなかったのです。私が、あの晩の学生たちも着物の色を思い違えたと考えるのが無理でしょうか。・・・・・・」≫と明智小五郎が述べており、実際、『D坂の殺人事件』ではそうだったようだ。 ましてや、内田康夫『熊野古道殺人事件』』(2010.角川文庫)を読むと、作中の「内田康夫」のことを浅見光彦は「・・・心臓が悪い上に、低血圧で、糖尿で、痔疾で、おまけにアルツハイマーのケがあります」と言っているので、それなら、実際は百メートルもなかったのに「南に百メートルほど行ったところ」と思いこんだか、もしくは、「南に」ではなく他の方角にだったかという可能性もないとは言えないのではないか。 なにしろ、「心臓が悪い上に、低血圧で、糖尿で、痔疾で、おまけにアルツハイマーのケがある」そうだから。
その前提で考えたところ、↓なんて、「ロスト」のモデルの可能性ありそう・・・・・て感じ。
↑ 「 coffee DON 」 。

≪ 「クラシカルな空間で朝のコーヒーを一杯 喫茶ドン」 1951(昭和26)年に開店した高山市内でもっとも古いコーヒー専門店。アンティークショップのような調度品が置かれた店内で、静かな時間を過ごせる。・・・・・≫
( 『ことりっぷ 高山 白川郷』2008.7.昭文社)
鍛冶橋の西側の交差点から本町通りを南に入ってすぐの西側。 ここかな♪・・・・と思ったが、待て待て、「名探偵」はそう簡単に決めつけてはならんぞ、と思って周囲を見まわすと、その向かい、東西の安川通りと南北の本町通りが交差する鍛冶橋交差点の南東のカドに「caferestaurant 花水木」がある。↓
↑ こっちの可能性もあるか・・・・? とも思ったが、しかし、だ。 内田康夫『風の盆 幻想』(2013.実業之日本社文庫)の「プロローグ」には、≪ 男はメニューを見て、カレーライスとコーヒーを注文した。ロストは本来は喫茶店だから、食事のメニューには、せいぜい、サンドイッチかスパゲッティといった軽食のたぐいしかない。≫ときっちりと書いてある。 「caferestaurant 花水木」はレストランと言うだけあって、もうちょっと食事のメニューがありそうだし、表にもメニューが出ているが、≪食事のメニューには、せいぜい、サンドイッチかスパゲッティといった軽食のたぐいしかない≫という店ではない。いかに、糖尿で痔疾でアルツハイマーのケがあったとしても、ここまできっちりと書いている以上、「ロスト」はレストランではなく喫茶店の方に重心がある店だろうから、「caferestaurant 花水木」は違うのではないか・・・・・。
それに、だ。 『風の盆 幻想』では、「内田康夫」は高山に1人で行ったのではなく、浅見光彦と2人で行っており、≪ ・・・ロストは目標の鍛冶橋の交差点から百メートル足らずの、歩道のある通りに面した場所にあった。アーリーアメリカン風のこざっぱりした店で、内田の念願どおりクーラーがよく効いている。店内で最も風の当たる席に座り、二人ともアイスコーヒーを注文した。・・・≫と書かれている。「名探偵」浅見光彦もそこに行った以上、レストランを≪せいぜい、サンドイッチかスパゲッティといった軽食のたぐいしかない≫とは言わないだろう。 「プロローグ」では「百メートルほど」だったが、第三章で浅見と「内田康夫」が訪問した際には「百メートル足らず」と少々短くなった。 となると、やっぱり、「 coffee DON 」か。たしかに、≪歩道のある通りに面した場所に≫ある・・・・が、安川通りと本町通りは「歩道のある通り」でいずれもけっこう長いので、それだけでは他にもありそうでもある。
≪アーリーアメリカン風のこざっぱりした店≫かというと、外観は「アーリーアメリカン風」とかいうものではないが、内部がそういう作りなのか? 入って「内田康夫」と浅見光彦のようにアイスコーヒーを注文してみようかとも思ったのだが、新宿行きのバスの時刻が迫っていたので残念ながら入る時間がなかった。「百メートル足らず」を「百メートル以内」と考えるなら、「 coffee DON 」はありそうである。
もうひとつ、考えられるのは、安川通りと本町通りが交差する鍛冶橋交差点から南方向に「百メートル足らず」というのが、実は、浅見光彦も初めて行った土地だったので方角を勘違いしたという可能性で、東に行くと、やっぱり「歩道のある通りに面した場所」に↓ がある。
↑ 「COFFEE BOGA」。

東西の通りである安川通り(国道158号。鍛冶橋交差点から西、もしくは鍛冶橋から西は「国分寺通り」らしい。)を鍛冶橋を渡って少し東に行くと、通りの南側、北に面して「歩道のある通りに面した場所」にある。 こっちの可能性もありそうだな・・・・・(^^♪
さらに、もうひとつの可能性として、鍛冶橋から南へ「百メートルほど」「百メートル足らず」という場所だが、本町通りではなく、宮川を隔てて本町通りと対称の位置くらいにある、宮川の東側の南北の通りになら↓が見つかった。

↑ 「Cafe Doppio 」 。
『風の盆 幻想』の「プロローグ」には、≪ その日はしかし、台風十一号の前触れで昼過ぎから猛烈な吹きっぷりだった。通りを行く人はあまりなく、ロストもランチタイムの三組のお客が帰ったあとは、ほとんど開店休業状態といってよかった。二字近くになって、この店に一人だけいるウウェートレスの木村香苗が「きょうはもう、お客さんみえませんよ」と言い、マスターの高田功も「そやな、店を閉めようか」と応じた時、男が入って来た。≫と書かれている。 「Cafe Doppio 」の店内におねえさんが1人立っているのが見えたので、「木村さんですか」と尋ねてみようかとも思ったが・・・・・、なにしろ、浅見光彦と違って「兄上は警察庁刑事局長」ではないので、やめた。
しかし、だ。 「内田康夫」と浅見光彦は、『風の盆 幻想』では八尾から高山まで高山本線の特急で行ったのだが、弥寿多家の若主人の春人と待ち合わせていた女性は、電車で来るのか自家用車で来るのかわからないというものだったわけだ。 東西の安川通り・国分寺通りも南北の本町通りもクルマで通ることはできるけれども、この付近は「古い街並み」を「売り」にした「伝統的建造物群保存地区」のすぐ西であり、歩行者が多くて、クルマでは走りやすい場所ではないので、クルマで他から来た人は、何が何でもこの付近までクルマで来ないといけない事情がなければ、この付近ではなく、もっと周辺部にクルマを停めるのではないか。 そう考えると、「ロスト」が実はもっと離れた場所という可能性だってないとは言えないのではないか・・・・・と考えると、安川通り・国分寺通りを西に行って、高山本線の東を高山本線と並行して南北に走る通りとぶつかる交差点のすぐ南の↓

↑ の駅から近くて時間有料駐車場も近くにありそうな「グリニッジ珈琲店」がモデルなんて可能性もないとは言えないのでないか。
「アーリーアメリカン風のこざっぱりした店」といっても、それが内部ならいいでしょうけれども、そもそも、高山は「ふるい街並み」を「売り」にする街ですから、「アーリーアメリカン風」なんて外観で作ったあかつきには、非難を浴びそうな感じですし、「アーリーアメリカン風」で建てるなら、「古い街並み」地区とはある程度離れた場所でないと具合が悪いのではないか。 それとも、和風で「アーリーアメリカン風」の外観だろうか? 「ロスト」は実は「ロフト」のことで、心臓が悪くて糖尿で痔疾でアルツハイマーのおっさんが「ロフト」を「ロスト」に変えてしまったのだろうか・・・・などと考えると、↓

↑ 「挽き立てコーヒー 松倉山荘」 ・・・なんてのも、和風の「ロフト」、《和風の「アーリーアメリカン風」》みたいな感じがしてこないでもない・・・。 もっとも、「日替わり定食」と書いてあるから、≪ロストは本来は喫茶店だから、食事のメニューには、せいぜい、サンドイッチかスパゲッティといった軽食のたぐいしかない。≫には該当しないようだが。
≪「茶房・和雑貨 松倉山荘」 山野草が咲き乱れる庭が自慢のみやげ店兼和風喫茶。手染めのタペストリーなどの作家ものの和小物が充実している。併設の喫茶室では、焼き餅が入った特製田舎ぜんざい600円や、飛騨牛カレーセット700円などの軽食が味わえる。・・・≫
(『楽楽 飛騨高山 白川郷・上高地』2014.5.1. JTBパブリッシング)
≪ 電話で聞いたとおり、ロストは目標の鍛冶橋の交差点から百メートル足らずの、歩道のある通りに面した場所にあった。・・・≫というが、鍛冶橋交差点を通る東西の通りである西側の国分寺通り、東側の安川通りも、南北の通りである本町通りも、「歩道のある通り」で、逆にこのあたりでは歩道のある通りはこの2つくらい。 ≪ 傘も持たずに歩いていたのか、男は頭から滝を被ったように濡れそぼっていた。≫というが、本町通りも国分寺通り・安川通りも歩道の上には屋根があるので、本町通りか国分寺通り・安川通りにある喫茶店に入るには屋根がある歩道を通ることが多いのでそれほどは濡れないのではないか。八尾から高山まで、電車で来たのか、マイカーで来たのか。『楽楽 飛騨高山 白川郷・上高地』(2014.4.15.JTBパブリッシング)には、≪車は停めて徒歩で回ろう 駐車場のない施設や店が多いので、車で市街を訪ねるなら、市営神明駐車場(・・)などを利用して、徒歩で観光しよう。さんまちの周辺は、狭い道や一方通行が多いので、運転には注意が必要。≫と書かれているが、本町通り・国分寺通り・安川通りはクルマも通ることは通れるけれども、この付近はクルマより歩いた方がよい場所で、もし、八尾からマイカーで高山まで来ての待ち合わせならもうちょっと周辺部の方が向いているとも思える。電車で来たなら駅近くのコンビニなどで傘を購入することもできたろうし、駅からは、国分寺通りまでの道も歩道があって屋根があるし、≪男は頭から滝を被ったように濡れそぼっていた≫と、そこまで濡れにくいはず・・・・とか、細部まで真剣に読み込んで現地と比較すると矛盾が出てきたりするので、≪風景や建造物など、現地の状況と多少異なる点があることをご了承ください。≫ということなのだろう。
いったい、どこなんだ!?!・・・・と言っても、≪ この作品はフィクションです。実在する人物、団体とはいっさい関係ありません。 ≫と書かれているので、フィクションである以上、どこであるもないもないのだろうけれども、内田康夫が書いた際に頭にあった店というのは、どこかにありそうに思える。 どこか他の場所にあった店の内容と鍛冶橋付近の状況とをミックスさせたものなのか・・・・・・。 作中の「内田康夫」が浅見光彦は東京都北区に実際にいる旨、述べているようだから、≪実在する人物、団体とはいっさい関係ありません。≫と書いてあっても、もしかすると、≪実在する人物、団体と≫何らかの関係があるのかもしれん・・・・が、残念ながら、喫茶店「ロスト」は見つからない。
片っ端から中に入ってコーヒーを飲みまくったのでは胃が悪くなりそうだが、ここの可能性が最も高そう♪ てところ、1箇所でも入ってコーヒーの1杯でも飲んでみたかったが、新宿行きのバスの時刻が迫って入れなかったのは何より残念だった・・・。
次回、高山ラーメン https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201710article_6.html
(2017.10.29.)
☆☆☆☆☆ 高山シリーズ第5回
1.内田康夫『風の盆 幻想』と巡る高山(1)喫茶店「ロスト」を探す 〔今回〕
2. 同 (2)高山ラーメン https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201710article_6.html
3. 同 (3)「K病院」 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201710article_7.html
4. 同 (4)高山市役所 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201710article_8.html
5.旧 野首(のくび)家住宅 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201710article_9.html
6.旧 新宮村 郷倉 ほか https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201710article_10.html
7.山岳資料館(旧 高山測候所) https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201711article_1.html
8.飛騨合掌苑 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201711article_2.html
9.「飛騨民俗村 文学散歩道」https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201711article_3.html
10.飛騨高山美術館 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201711article_4.html
11.名古屋から高山へ「ワイドビュー飛騨」https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201711article_5.html
12.高山駅から飛騨民俗村へ[上]https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201711article_6.html
13. 同 [下]https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201711article_7.html
14.新上野橋から三福寺橋https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201711article_8.html
15.「旧 吉城郡細江村の民家」(熱田神宮内) https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201711article_9.html
☆☆☆☆高山シリーズ第4回
1.日の出天満神社 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201610article_13.html
2.大八賀神社 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201610article_14.html
3.東山遊歩道(1)高山別院照蓮寺から東山白山神社へ https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201610article_15.html
4.・・・・
≪ 「僕なんかより、警察の仕事でしょう」
「いや、それが駄目なのだな」
「どうしてですか? 頭っから駄目だと決めつけるのは警察に対して失礼ですよ。第一、事件発生からまだ一週間も経っていないじゃないですか」
「一週間だろうと何百年経とうと同じこと。警察は動かないからね」
「動かないって・・・ひどいなあ、いくら口が悪いにしても、どうしてそんなに断定的なことが言えるのですかねえ」
「それが言えちゃうんだな。何しろ、警察は殺しだとは思っていないのだから」
「えっ? どういう意味ですか?」
「要するに、警察は早いとこ自殺で処理しちまいたいのさ」
「なるほど、つまり、警察の判断は間違いだって、そう言いたいのですね」
「そのとおり、大間違いのコンコンチキだ」
「しかし、警察がそう判定したのには、それなりの理由があるはずですが」
「おいおい、きみらしくないな。警察の早とちり、事実誤認はいまに始まったことじゃないだろう」
「それはまあ、僕も否定はしませんが。・・・・・・」 ≫
(内田康夫『風の盆 幻想』2013.実業之日本社文庫 ↑)
「推理小説」でも、西村京太郎の「推理小説」は「単に時刻表を見ただけで書いたような小説」が多いし、山村美紗だの夏木静子だのになれば、もはや、どうかしてんじゃないかて感じがしてくる。『名探偵コナン』なんてのは、警察を実際よりもあまりにもいいように思いこんでいるとともに、FBIだの公安だのを正義の味方みたいに描いており、これは、そんな漫画を子供に読ませて洗脳させようという魂胆のものと思われるとともに、犯罪のトリックはともかくもそこにあっても、そういう犯罪に至るまでの動機という点がまったくない。「子供向けだから」ということもあるのかもしれないが、「子供向け」ならたいした動機もなく人殺しをやる人間が続出するというのはもっとおかしい。これら、「推理小説論」について、いつか述べてみたいようにも思うが、この点、内田康夫の「浅見光彦シリーズ」はけっこう面白い。内田自身が述べているが、内田の作品は、「旅情」と「人情」と「推理」の3つで構成されているというのだ。その「人情」の部分として「動機」が存分に描かれているところが他の多くの駄作推理小説とは異なる。なにより、多くの「推理小説」では登場する「名探偵」が殺人事件があると、「興味がわいてきた」だの「面白くなってきましたね」だのと不謹慎な文句を口にすることが多く、実際にあった事件ではないと思いながらも読んでいて不快感を覚えることがあるのに対し、内田康夫『風の盆 幻想』(2013.実業之日本社文庫)では、登場人物の「内田康夫」から知人が関わった殺人事件の解明を推理好きの浅見光彦に依頼しようとして「どうかね、面白そうだろう」と言われたのに対し、浅見は「何を言ってるんですか。仮にも人一人が殺されたのを面白がっていいはずがないでしょう。不謹慎ですよ」ときっちりと発言している。そのあたり、作者の内田康夫はきっちりと認識できており、「推理小説」の場合、実際の事件とは異なり、本当に人が殺されたわけではないので、読者は面白がって読んでもいいとしても、登場人物にとっては実際にあった事件なのだから、読者が面白がって読んでもいいとしても登場人物が「面白くなってきましたね」などと言ってはいけないはずなのだが、そういう発言が出る「推理小説」が多くて眉をしかめるのだが、内田康夫の場合はそのあたりの認識がきっちりとできているところが他の多くの「推理小説」作家とは異なる。
その内田康夫『風の盆 幻想』での話の場所は、富山県の八尾、かつては八尾町だったが今は富山市の一部になったらしい所がメインの場所で、サブの場所として岐阜県の神岡と高山が登場する。 内田がなかなかよく配慮しているなあと思うのは、小説の中でとはいえ、人が殺されたり死体が遺棄されたりする場所は、名所旧跡とか公共的な場所とかであって、ここだろうと思われる一般人の店とかで殺されたりはしないという点である。観光名所みたいな場所でなら、小説の中で人が殺されようが遺体が遺棄されようが、かえって、観光名所として訪ねる人が増えてその地にとってはプラスになるくらいだが、個人の店とかで殺人があったとかなると、たとえ、小説の中での話にしてもイメージが良くないので、それは避けるようにしているようだ。
『風の盆 幻想』(2013. 実業之日本社文庫)の巻末には、≪ この作品はフィクションです。実在する人物、団体とはいっさい関係ありません。 ≫と書かれており、さらに、『熊野古道殺人事件』(2010.角川文庫)の巻末には、≪ この作品はフィクションであり、文中に登場する人物、団体名は、実在するものとはまったく関係ありません。なお、風景や建造物など、現地の状況と多少異なる点があることをご了承ください。≫とも書かれている・・・・のだが、片方で、作中の登場人物の「内田康夫」は、浅見光彦は実在して東京都北区西ヶ原に住んでいると述べていて、『熊野古道殺人事件』(2010.角川文庫)では、登場人物の「内田康夫」は大学教授の松岡と、≪「しかし、どうして小百合さんは、浅見の家の電話番号が分かったのかな?」「それはきみのせいだろう」「えっ?僕のせいとはどういう意味だ?」「小説に書いているじゃないか。浅見家が北区西ヶ原にあると」「あっ・・・・」 内田は愕然とした。小説の巻末に〔この小説はフィクションであり、登場する人物、団体は実在のものと一切関係ありません〕と断り書きをしてあるけれど、そんなものは効果がないらしい。≫などと書いてある。
≪ 風景や建造物など、現地の状況と多少異なる点があることをご了承ください。≫という方については、内田康夫の小説は、なかなかよく取材して書かれており、小説の話の展開とは別に、一度、そこに行ってみたいという気持ちになるようなものが多く、≪現地の状況≫をきっちりと取材した上で書かれていると思ったのだが、どこが≪現地の状況と多少異なる点がある≫のだろうと思ったのだが、名所旧跡とか公共施設とかの場合は、≪現地の状況≫のまま描かれているのだけれども、大規模でない商店とかの場合は、モデルになった店がどこか特定されないように、その場所に行っても、小説の中で描かれているものと≪多少異なる点がある≫書き方がされている、ということのようだ。
それから、「浅見光彦シリーズ」は内田が小説に書いたものをもとにした、テレビドラマがあり、漫画にされたものもあるのだが、漫画の「浅見光彦シリーズ」より小説の方がいいと私は思う。 どうも、漫画というのか劇画というのかになったものともとの小説では、もとの小説の方が優れている場合が多く、横溝正史『犬神家の一族』(角川文庫)なんてのは、漫画の『犬神家の一族』は話の内容まで変えてしまっていて、漫画のものを読んで、変だなと思ったところが小説を読むと、そうだろうなと思える。『八つ墓村』の濃茶の尼の「たたりじゃ、たたりじゃ」は名演技だったと思うけれども・・・・、ドラマの『八つ墓村』の結末は小説と少し違う。
今回、その内田康夫の『風の盆 幻想』(2013.実業之日本社文庫。 2005年9月に幻冬舎より発行。)に出てくる場所のうち、岐阜県高山市の何か所かに行ってみた。
『風の盆 幻想』では、メインの場所は富山県の八尾であり、殺された人間も八尾の人間で殺された場所も八尾なのだが、登場人物が高山で人と会う予定にしていたという場面があり、別の登場人物がかつて高山のK病院に勤めていたという話があり、さらに別の登場人物の勤め先が高山市役所となっている。何より、「内田康夫」と浅見光彦が高山に来て高山ラーメンを食べる場面がある。 「推理小説」の場合、「ネタバレ」と言うらしいのだが、カラクリを読んでいない人に言うのは良くないという説があるのだが、内田康夫の小説はそうではないと思う。基本的なカラクリを知ってから読んでも十分に読める内容を備えていると思う。 カラクリさえわかってしまえば面白くもない小説というのは、それは「推理小説」としても、あまりレベルの高い小説ではないものだと思う。 内田康夫の小説はそうではないと思うので、述べて問題はないと考える。
『風の盆 幻想』のメインの場所は富山県の八尾だが、冒頭の「プロローグ」は高山から始まる。
≪ 宮川沿いの本町通りを、鍛冶橋の交差点から南へ百メートルほど行ったところに「ロスト」という喫茶店がある。本町通りは観光スポットの一つ「高山陣屋」に繋がり、「陣屋朝市」と、鍛冶橋を挟んで東の対岸にある「宮川朝市」のあいだを行き来する観光客でいつも賑わう、いわば高山のメイン通りの一つだ。 ≫
この「ロスト」という喫茶店に、八尾から来た男が客として来店し、カレーライスを注文して食べるのだが、台風の影響で交通事情が悪いためか、約束の女性が来ない・・・・という所から話は始まる。
宮川は実在する。 本町通りも実在する。 もちろん、高山陣屋も実在するし陣屋朝市も宮川朝市も実在する。 鍛冶橋も実在する。 何年か前に訪問した際に、藤井美術民芸館の奥さんが教えてくれた話によると、もともと、鍛冶屋が多く住んでいた場所なので鍛治橋と言うらしい。 鍛冶橋は橋の中央部の両側に「手長」「足長」という妖怪じいさんの像が鎮座している。
[第459回]《飛騨国分寺から鍛冶橋、高山別院照蓮寺をへて東山白山神社へ-東山遊歩道(高山市)前半を歩く(1)》https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201610article_15.html で、鍛冶橋から宮川の南側を見た写真を掲載したので見ていただければと思う。 鍛冶橋のすぐ南側の緑色の端が柳橋。 その向こうの白い橋が筏橋。 さらにその向こうの赤い橋が中橋。
[第358回]《山桜神社 と火の見櫓、 古い町並み美術館-山下清原画展、高山昭和館、鍛冶橋の手長足長(高山市)》https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201510article_8.html に、鍛冶橋の中央の欄干上に鎮座する「手長」「足長」の像の写真を掲載した。 「手長」のおっさんのアップは[第457回]《日の出天満神社(高山市松之木町)参拝 + なぜか場所によって運転が大きく違う高山のドライバー》https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201610article_13.html で公開した。
ひとつ南側の柳橋から北側を見ると、鍛冶橋が見えるが、柳橋から見た鍛冶橋の「手長」「足長」が↓
↑手前(南側)が「手長」、向こう側(北側)が「足長」。
・・・どうも、私が高山に来ると雨が降ることが多い・・・・。
さて、問題は、≪鍛冶橋の交差点から南へ百メートルほど行ったところ≫にあるという喫茶店「ロスト」である。 本町通りを鍛冶橋のすぐ西側の交差点から南に百メートルほど行ったところというと、柳橋から西に来て本町通りと交差するあたりではないかと思われるのだが、ないんだわ。 そのあたりに喫茶店は・・・・。 なるほど、≪風景や建造物など、現地の状況と多少異なる点があることをご了承ください。≫というのは、このことか・・・。
(↑ 本町通り と 柳橋から西に来た道との交差点から本町通りを北に見る。 )
(↑ 拡大すると大きくなるので大きくして見てもらいたい。右側の柱に巻かれた黄色いのに「あんきに寄ってな 本町会」と書かれているが、「あんきに」とは、『ことりっぷ 高山 白川郷』〔2008. 昭文社〕によると、「気楽に」という意味らしい。 )
(↑ 本町通り と 柳橋から西に来た道との交差点から本町通りを南に見る。 )
この交差点の少し北の西側に 山桜神社がある。山桜神社とその火の見櫓については、[第358回]《山桜神社 と火の見櫓、 古い町並み美術館-山下清原画展、高山昭和館、鍛冶橋の手長足長(高山市)》https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201510article_8.html で写真とともに掲載したので見ていただきたい。
この喫茶店「ロスト」で何があったかというと、そこでカレーライスを注文して食べて、女性を待つものの来てもらえず帰った男というのが、八尾の老舗旅館 弥寿多家(やすだや)の若主人の安田春人らしく、この春人が自殺なのか殺されたのか遺体で見つかったのだが、この高山の「ロスト」で誰と会っていたのか・・・・という展開なのだが、ないんだわ。「ロスト」と言うだけあって、その「鍛冶橋交差点から南へ百メートルほど行ったところ」を探しても、見つからんのだわ。 こりぁ、困った。
鍛冶橋の東の南側に安川交番がある。安川交番については、[第359回]《伝統的建造物群保存地区(高山市)でも、そっくりな交番と公衆便所―安川交番、高山警察。市役所、裁判所 》https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201510article_9.html の【5】で写真を掲載した。 [第470回]《十六銀行 高山支店(高山市)、及、警察官のいない「交番」て、そういうのを交番と言うのでしょうか? 》https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201610article_26.html 【3】でも写真入りで掲載した。[第470回]の時には、この交番は無人で、無人の交番を交番と言うのだろうか・・などと思ったものだったが、今回は、ポリさんが中にいた。そこで、ポリさんに「すいませ~ん。喫茶『ロスト』て、どこにあるかわかりませんかあ~あ?」と尋ね、「何かそこであったのですかあ?」とでもきかれた際には、「殺人事件の被害者がどうも立ち寄ったらしいんですけど・・・」とか言うと・・・・、なんか、怖そうだから、やめとこ・・・・。浅見光彦みたいに「ちょっと、警察署まで来てもらえんもんかいのお」とか言われても、浅見光彦と違って「兄上が警察庁刑事局長さまで・・・」とかではないので、やめとこ・・・・。
柳橋の方を見ても、ない。↓
宮川にかかる橋は、高山駅前の観光案内書でもらった「東山遊歩道」リーフレットに掲載の「金森氏六代、頼旹(よりとき)の頃の高山の地割」を見ると、鍛冶橋の南に、中橋、枡形橋と3つしか橋はないが、今は、鍛冶橋の南に、緑の欄干の柳橋があり、柳橋と赤い中橋との間に筏橋がある。
(↑ 柳橋から南を見たもの。 向こうの白い橋が筏橋。 その向こうの赤い橋が中橋。 この写真、なかなかよく撮れていると思いませんか? )
今では慣れたが、最初に高山に来て宮川を見た時、「なんで、この川、北に向かって流れているの?」と思ったものだ。 今まで、新宿から出ている濃飛バスで来たが、今回、初めて名古屋から高山本線の特急「ワイドビューひだ」に乗ってみたが、岐阜から美濃太田までは南側の窓の外に木曽川が西に向かって流れているのだが、美濃太田を過ぎた頃からは、飛騨川が南に向かって流れる。 高山の2駅南の「久々野」の付近でも依然として南に向かって流れているのだが、高山の1つ南の「飛騨一宮」のあたりで、ふと見ると、北に向かって流れているのだ。 そこからは飛騨川ではなく宮川。 飛騨一宮と久々野の間あたりに境目があるらしい。 高山では宮川は北に向かって流れ、富山県に入ると神通川と名前を変えて富山湾に注ぐことになる。 神通川というと、どうも、イタイイタイ病というイメージがあるが、それは神岡鉱山から流れ込んだものが原因のようで、これよりずっと下流(北側)でのことなので、高山付近では影響はないはず。
さて、喫茶店「ロスト」はないのか? 江戸川乱歩『D坂の殺人事件』(江戸川乱歩『明智小五郎事件簿 1』2016.集英社文庫 所収)では、≪「ミュンスターベルヒが賢くも説破した通り」と明智ははじめた。「人間の観察や人間の記憶なんて、実にたよりないものですよ。この例にあるような学者たちでさえ、服の色の見分けがつかなかったのです。私が、あの晩の学生たちも着物の色を思い違えたと考えるのが無理でしょうか。・・・・・・」≫と明智小五郎が述べており、実際、『D坂の殺人事件』ではそうだったようだ。 ましてや、内田康夫『熊野古道殺人事件』』(2010.角川文庫)を読むと、作中の「内田康夫」のことを浅見光彦は「・・・心臓が悪い上に、低血圧で、糖尿で、痔疾で、おまけにアルツハイマーのケがあります」と言っているので、それなら、実際は百メートルもなかったのに「南に百メートルほど行ったところ」と思いこんだか、もしくは、「南に」ではなく他の方角にだったかという可能性もないとは言えないのではないか。 なにしろ、「心臓が悪い上に、低血圧で、糖尿で、痔疾で、おまけにアルツハイマーのケがある」そうだから。
その前提で考えたところ、↓なんて、「ロスト」のモデルの可能性ありそう・・・・・て感じ。
↑ 「 coffee DON 」 。
≪ 「クラシカルな空間で朝のコーヒーを一杯 喫茶ドン」 1951(昭和26)年に開店した高山市内でもっとも古いコーヒー専門店。アンティークショップのような調度品が置かれた店内で、静かな時間を過ごせる。・・・・・≫
( 『ことりっぷ 高山 白川郷』2008.7.昭文社)
鍛冶橋の西側の交差点から本町通りを南に入ってすぐの西側。 ここかな♪・・・・と思ったが、待て待て、「名探偵」はそう簡単に決めつけてはならんぞ、と思って周囲を見まわすと、その向かい、東西の安川通りと南北の本町通りが交差する鍛冶橋交差点の南東のカドに「caferestaurant 花水木」がある。↓
↑ こっちの可能性もあるか・・・・? とも思ったが、しかし、だ。 内田康夫『風の盆 幻想』(2013.実業之日本社文庫)の「プロローグ」には、≪ 男はメニューを見て、カレーライスとコーヒーを注文した。ロストは本来は喫茶店だから、食事のメニューには、せいぜい、サンドイッチかスパゲッティといった軽食のたぐいしかない。≫ときっちりと書いてある。 「caferestaurant 花水木」はレストランと言うだけあって、もうちょっと食事のメニューがありそうだし、表にもメニューが出ているが、≪食事のメニューには、せいぜい、サンドイッチかスパゲッティといった軽食のたぐいしかない≫という店ではない。いかに、糖尿で痔疾でアルツハイマーのケがあったとしても、ここまできっちりと書いている以上、「ロスト」はレストランではなく喫茶店の方に重心がある店だろうから、「caferestaurant 花水木」は違うのではないか・・・・・。
それに、だ。 『風の盆 幻想』では、「内田康夫」は高山に1人で行ったのではなく、浅見光彦と2人で行っており、≪ ・・・ロストは目標の鍛冶橋の交差点から百メートル足らずの、歩道のある通りに面した場所にあった。アーリーアメリカン風のこざっぱりした店で、内田の念願どおりクーラーがよく効いている。店内で最も風の当たる席に座り、二人ともアイスコーヒーを注文した。・・・≫と書かれている。「名探偵」浅見光彦もそこに行った以上、レストランを≪せいぜい、サンドイッチかスパゲッティといった軽食のたぐいしかない≫とは言わないだろう。 「プロローグ」では「百メートルほど」だったが、第三章で浅見と「内田康夫」が訪問した際には「百メートル足らず」と少々短くなった。 となると、やっぱり、「 coffee DON 」か。たしかに、≪歩道のある通りに面した場所に≫ある・・・・が、安川通りと本町通りは「歩道のある通り」でいずれもけっこう長いので、それだけでは他にもありそうでもある。
≪アーリーアメリカン風のこざっぱりした店≫かというと、外観は「アーリーアメリカン風」とかいうものではないが、内部がそういう作りなのか? 入って「内田康夫」と浅見光彦のようにアイスコーヒーを注文してみようかとも思ったのだが、新宿行きのバスの時刻が迫っていたので残念ながら入る時間がなかった。「百メートル足らず」を「百メートル以内」と考えるなら、「 coffee DON 」はありそうである。
もうひとつ、考えられるのは、安川通りと本町通りが交差する鍛冶橋交差点から南方向に「百メートル足らず」というのが、実は、浅見光彦も初めて行った土地だったので方角を勘違いしたという可能性で、東に行くと、やっぱり「歩道のある通りに面した場所」に↓ がある。
↑ 「COFFEE BOGA」。
東西の通りである安川通り(国道158号。鍛冶橋交差点から西、もしくは鍛冶橋から西は「国分寺通り」らしい。)を鍛冶橋を渡って少し東に行くと、通りの南側、北に面して「歩道のある通りに面した場所」にある。 こっちの可能性もありそうだな・・・・・(^^♪
さらに、もうひとつの可能性として、鍛冶橋から南へ「百メートルほど」「百メートル足らず」という場所だが、本町通りではなく、宮川を隔てて本町通りと対称の位置くらいにある、宮川の東側の南北の通りになら↓が見つかった。
↑ 「Cafe Doppio 」 。
『風の盆 幻想』の「プロローグ」には、≪ その日はしかし、台風十一号の前触れで昼過ぎから猛烈な吹きっぷりだった。通りを行く人はあまりなく、ロストもランチタイムの三組のお客が帰ったあとは、ほとんど開店休業状態といってよかった。二字近くになって、この店に一人だけいるウウェートレスの木村香苗が「きょうはもう、お客さんみえませんよ」と言い、マスターの高田功も「そやな、店を閉めようか」と応じた時、男が入って来た。≫と書かれている。 「Cafe Doppio 」の店内におねえさんが1人立っているのが見えたので、「木村さんですか」と尋ねてみようかとも思ったが・・・・・、なにしろ、浅見光彦と違って「兄上は警察庁刑事局長」ではないので、やめた。
しかし、だ。 「内田康夫」と浅見光彦は、『風の盆 幻想』では八尾から高山まで高山本線の特急で行ったのだが、弥寿多家の若主人の春人と待ち合わせていた女性は、電車で来るのか自家用車で来るのかわからないというものだったわけだ。 東西の安川通り・国分寺通りも南北の本町通りもクルマで通ることはできるけれども、この付近は「古い街並み」を「売り」にした「伝統的建造物群保存地区」のすぐ西であり、歩行者が多くて、クルマでは走りやすい場所ではないので、クルマで他から来た人は、何が何でもこの付近までクルマで来ないといけない事情がなければ、この付近ではなく、もっと周辺部にクルマを停めるのではないか。 そう考えると、「ロスト」が実はもっと離れた場所という可能性だってないとは言えないのではないか・・・・・と考えると、安川通り・国分寺通りを西に行って、高山本線の東を高山本線と並行して南北に走る通りとぶつかる交差点のすぐ南の↓
↑ の駅から近くて時間有料駐車場も近くにありそうな「グリニッジ珈琲店」がモデルなんて可能性もないとは言えないのでないか。
「アーリーアメリカン風のこざっぱりした店」といっても、それが内部ならいいでしょうけれども、そもそも、高山は「ふるい街並み」を「売り」にする街ですから、「アーリーアメリカン風」なんて外観で作ったあかつきには、非難を浴びそうな感じですし、「アーリーアメリカン風」で建てるなら、「古い街並み」地区とはある程度離れた場所でないと具合が悪いのではないか。 それとも、和風で「アーリーアメリカン風」の外観だろうか? 「ロスト」は実は「ロフト」のことで、心臓が悪くて糖尿で痔疾でアルツハイマーのおっさんが「ロフト」を「ロスト」に変えてしまったのだろうか・・・・などと考えると、↓
↑ 「挽き立てコーヒー 松倉山荘」 ・・・なんてのも、和風の「ロフト」、《和風の「アーリーアメリカン風」》みたいな感じがしてこないでもない・・・。 もっとも、「日替わり定食」と書いてあるから、≪ロストは本来は喫茶店だから、食事のメニューには、せいぜい、サンドイッチかスパゲッティといった軽食のたぐいしかない。≫には該当しないようだが。
≪「茶房・和雑貨 松倉山荘」 山野草が咲き乱れる庭が自慢のみやげ店兼和風喫茶。手染めのタペストリーなどの作家ものの和小物が充実している。併設の喫茶室では、焼き餅が入った特製田舎ぜんざい600円や、飛騨牛カレーセット700円などの軽食が味わえる。・・・≫
(『楽楽 飛騨高山 白川郷・上高地』2014.5.1. JTBパブリッシング)
≪ 電話で聞いたとおり、ロストは目標の鍛冶橋の交差点から百メートル足らずの、歩道のある通りに面した場所にあった。・・・≫というが、鍛冶橋交差点を通る東西の通りである西側の国分寺通り、東側の安川通りも、南北の通りである本町通りも、「歩道のある通り」で、逆にこのあたりでは歩道のある通りはこの2つくらい。 ≪ 傘も持たずに歩いていたのか、男は頭から滝を被ったように濡れそぼっていた。≫というが、本町通りも国分寺通り・安川通りも歩道の上には屋根があるので、本町通りか国分寺通り・安川通りにある喫茶店に入るには屋根がある歩道を通ることが多いのでそれほどは濡れないのではないか。八尾から高山まで、電車で来たのか、マイカーで来たのか。『楽楽 飛騨高山 白川郷・上高地』(2014.4.15.JTBパブリッシング)には、≪車は停めて徒歩で回ろう 駐車場のない施設や店が多いので、車で市街を訪ねるなら、市営神明駐車場(・・)などを利用して、徒歩で観光しよう。さんまちの周辺は、狭い道や一方通行が多いので、運転には注意が必要。≫と書かれているが、本町通り・国分寺通り・安川通りはクルマも通ることは通れるけれども、この付近はクルマより歩いた方がよい場所で、もし、八尾からマイカーで高山まで来ての待ち合わせならもうちょっと周辺部の方が向いているとも思える。電車で来たなら駅近くのコンビニなどで傘を購入することもできたろうし、駅からは、国分寺通りまでの道も歩道があって屋根があるし、≪男は頭から滝を被ったように濡れそぼっていた≫と、そこまで濡れにくいはず・・・・とか、細部まで真剣に読み込んで現地と比較すると矛盾が出てきたりするので、≪風景や建造物など、現地の状況と多少異なる点があることをご了承ください。≫ということなのだろう。
いったい、どこなんだ!?!・・・・と言っても、≪ この作品はフィクションです。実在する人物、団体とはいっさい関係ありません。 ≫と書かれているので、フィクションである以上、どこであるもないもないのだろうけれども、内田康夫が書いた際に頭にあった店というのは、どこかにありそうに思える。 どこか他の場所にあった店の内容と鍛冶橋付近の状況とをミックスさせたものなのか・・・・・・。 作中の「内田康夫」が浅見光彦は東京都北区に実際にいる旨、述べているようだから、≪実在する人物、団体とはいっさい関係ありません。≫と書いてあっても、もしかすると、≪実在する人物、団体と≫何らかの関係があるのかもしれん・・・・が、残念ながら、喫茶店「ロスト」は見つからない。
片っ端から中に入ってコーヒーを飲みまくったのでは胃が悪くなりそうだが、ここの可能性が最も高そう♪ てところ、1箇所でも入ってコーヒーの1杯でも飲んでみたかったが、新宿行きのバスの時刻が迫って入れなかったのは何より残念だった・・・。
次回、高山ラーメン https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201710article_6.html
(2017.10.29.)
☆☆☆☆☆ 高山シリーズ第5回
1.内田康夫『風の盆 幻想』と巡る高山(1)喫茶店「ロスト」を探す 〔今回〕
2. 同 (2)高山ラーメン https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201710article_6.html
3. 同 (3)「K病院」 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201710article_7.html
4. 同 (4)高山市役所 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201710article_8.html
5.旧 野首(のくび)家住宅 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201710article_9.html
6.旧 新宮村 郷倉 ほか https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201710article_10.html
7.山岳資料館(旧 高山測候所) https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201711article_1.html
8.飛騨合掌苑 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201711article_2.html
9.「飛騨民俗村 文学散歩道」https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201711article_3.html
10.飛騨高山美術館 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201711article_4.html
11.名古屋から高山へ「ワイドビュー飛騨」https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201711article_5.html
12.高山駅から飛騨民俗村へ[上]https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201711article_6.html
13. 同 [下]https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201711article_7.html
14.新上野橋から三福寺橋https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201711article_8.html
15.「旧 吉城郡細江村の民家」(熱田神宮内) https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201711article_9.html
☆☆☆☆高山シリーズ第4回
1.日の出天満神社 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201610article_13.html
2.大八賀神社 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201610article_14.html
3.東山遊歩道(1)高山別院照蓮寺から東山白山神社へ https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201610article_15.html
4.・・・・
≪ 「僕なんかより、警察の仕事でしょう」
「いや、それが駄目なのだな」
「どうしてですか? 頭っから駄目だと決めつけるのは警察に対して失礼ですよ。第一、事件発生からまだ一週間も経っていないじゃないですか」
「一週間だろうと何百年経とうと同じこと。警察は動かないからね」
「動かないって・・・ひどいなあ、いくら口が悪いにしても、どうしてそんなに断定的なことが言えるのですかねえ」
「それが言えちゃうんだな。何しろ、警察は殺しだとは思っていないのだから」
「えっ? どういう意味ですか?」
「要するに、警察は早いとこ自殺で処理しちまいたいのさ」
「なるほど、つまり、警察の判断は間違いだって、そう言いたいのですね」
「そのとおり、大間違いのコンコンチキだ」
「しかし、警察がそう判定したのには、それなりの理由があるはずですが」
「おいおい、きみらしくないな。警察の早とちり、事実誤認はいまに始まったことじゃないだろう」
「それはまあ、僕も否定はしませんが。・・・・・・」 ≫
(内田康夫『風の盆 幻想』2013.実業之日本社文庫 ↑)
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