内田康夫『風の盆幻想』と巡る高山[4]高山市役所(高山5【4/15】)+銀行建物で見るデザインと立地

[第593回] 高山シリーズ第5回【4/15】  内田康夫『風の盆 幻想』と巡る高山[4]
   富山県の八尾の老舗旅館の若主人 安田晴人が、当初、結婚したいと言っていた八尾の土産物屋の美濃屋の娘の増子が結婚した相手の津島秀之の勤め先が高山市役所。
≪ (妙なことになってきた――)
 浅見は天井のしみを数えながら考えた。
 若女将の夏美が神岡の出身であることをはじめとして、コケットの山田篤子の夫も、美濃屋の増子の夫までもが神岡の人間だった。この符号はいったい何を意味するのか? ただの偶然に過ぎないのかもしれないが、偶然もこう重なると、ただごととは思えなくなってくる。 ・・・≫
≪「私も誘われて、山田君のお通夜に行きました。神岡から一緒に行ったのは四、五人でしたかね。津島君は夫人同伴で来てました。彼は高山市役所に勤めてましてね、八尾出身の女性を奥さんにしていた。増子さんといいましてね、奥さんの実家は八尾で土産物屋をしている美濃屋さんというのですが、そこから山田君の店までは、ほんの目と鼻の先のようなところで、里帰りした時など、山田君の店と多少は付き合いはあったようです。・・・」≫
≪ 津島英之が八尾署の刑事に任意同行を求められたのは、彼が高山市役所を退庁した時である。市役所の玄関を出るのを待ち構えたように、見知らぬ男が二人近づいて来て「津島さんですね」と声をかけた。
   二人の男は警察バッジを示した。退庁者で混雑している中、真っ直ぐに津島を目指して来たところから察すると、津島が執務している時点で、あらかじめ確認していたにちがいない。
「ちょっとお訊きしたいことがあるので、八尾署までご同行ください」
 一応、敬語は使っているが、紋切り型のゴツい口調だ。そして刑事に左右から挟まれるようにして、覆面パトカーに乗せられた。
   そういう状況を、津島は携帯電話で増子に連絡してきた。午後五時半を少し回った時刻のことである。・・・≫
   津島英之氏は犯人ではなかったのだが、犯人と疑われて警察に連行され、それを浅見光彦が助けるわけだが、その津島英之氏は神岡の生まれだが、高山の生まれで神岡に来ていた夏美と知り合い、津島氏の勤め先も高山市役所となる。
   その高山市役所が↓
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( ↑ 高山市役所。 南南西側から見たもの。)
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( ↑ 高山市役所。 西南西側から見たもの。)








   高山市役所については、
[第204回]《飛騨天満宮(高山市)下‐冤罪を晴らす神・菅原道真(12)。高山市の白山神社。高山市役所》https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201309article_9.html 
[第359回]《伝統的建造物群保存地区(高山市)でも、そっくりな交番と公衆便所―安川交番、高山警察。市役所、裁判所》https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201510article_9.html
でも写真入りで取り上げてきましたが、なかなかいいデザインと思う人もあるかもしれませんが、な~んかこう、「新興宗教の本部みたいな感じのデザイン」て感じがしないでもない外観デザインの建物です。
   ↑の2枚の写真のように、西側の地上から見た感じだとそうでもないのですが、東側から見たり、あるいは、西側からでも離れた場所から見たりすると、「なんか、新興宗教の本部みたい」て感じがしないでもないのです。

    さて、ここで問題です。
【問題】 下記の2枚の写真の建物は、一方が新興宗教の本部の建物で、他方が市役所の建物です。どちらが市役所でしょうか?

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・・・・・という問題を出されて、はたして、誰もが正しく答えることができるだろうか・・・?
【解答】
A 崇教真光世界総本山〔高山駅の跨線橋部分の西側窓から見たもの。望遠レンズを使用しての撮影なので、肉眼で↑のように見えるわけではない。〕
B 高山市役所〔飛騨高山美術館の窓から見たもの。〕
まあ、2つ見比べると、やっぱり、市役所の方がまだしも市役所みたい・・て感じはするかもしれないが、市役所の建物だけ見ると、なんか、新興宗教の本部みたい・・て感じ、しませんか?

   内田康夫『風の盆 幻想』では、高山市役所に勤務している津島英之が実際は犯人ではないにもかかわらず、犯人ではないかと警察から疑われて高山市役所を出てすぐのところで連行されますが、そこで待ち構えていたのは高山警察署ではなく、富山県の八尾警察署の刑事だったようです。 大新町の久美愛病院が移転した跡地に高山警察署の庁舎を建設中のようですが、今現在は、そして、内田康夫『風の盆 幻想』が刊行された当時は、高山市役所の西側、道路を隔てた目の前に高山警察署があります。↓
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( ↑ 高山警察署。)
   警察署の写真は、本当はもっときれいに撮りたかったのですが、うかつに警察署の写真なんて撮影していると、こわ~いのんが「何やってるんですかあ」とか言って襲いかかってくる危険がありますから、もう、怖いわ怖いわで、安心して写真なんて撮れません。 ほんと、こわいですからねえ~え・・・・。 いきなり、暴漢に襲いかかられたら、普通、防ぎますでしょ。ところが、防ぐと、それで、暴行罪だとか傷害罪だとか、公務執行妨害罪だとか称して襲われた側が逮捕・送検される危険があります。 警察漢が、いきなり襲いかかってひとに怪我させても、そちらはおとがめなしです。「警察官は暴力ふるったりしません」とか勝手なこと言って居直るのです。 「嘘は警察の始まり」です。怖いですねえ、警察こそ、「反社会的勢力」と言うべきではありませんか。
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  警官は真っ直ぐ浅見に向かってきて、「ちょっとあんた」と言った。
「すみませんが、ちょっといいですか?」
 一応、丁寧な口をきいているが、明らかに不審尋問である。
「ええ、どうぞ」
「ここではなんやし、ちょっと交番まで同行してもらいたいんやけど」
  警察が頻発する「ちょっと」は便利な言葉だ。強要するようで、そうでもなく、時間的な長さや、拘束するのかしないのかも至極、あいまいなのである。
「いいですよ」
 いずれにしても、抵抗すれば、公務執行妨害なんてことになりかねない。・・・・
   (内田康夫『砂冥宮』2011. 実業之日本社文庫)
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   高山警察署に、いくつか横断幕がかかっていたのですが、そのうちのひとつ↓
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↑ 「だしかんさ 飲酒運転」 と書いてあるのですが、地元の人はわかるのでしょうけれども、非飛騨人は意味がわかりません。
   インターネットで検索すると、《飛騨語林―だしかん》https://www23.atwiki.jp/hidagorin/pages/25.html に、≪ 飛騨では、「はんちくたい」に並び、代表的な方言で、飛騨で生まれ育った人は必ず使う言葉。 特殊でわかりにくい方言ですが、飛騨以外の方にも表情や態度でニュアンスは伝わると思います。(?) 元々は、「はかどらない」という意味で使われていたのが、現在では「だめ」という意味で使われています。 ・・・≫ と出ていました。
   もしも、高山で警察漢から暴力をふるわれそうになったら、「だしかんさ」と言えばいいということでしょうか・・・。 でも、高山の場合、高山のコンビニでは店員が英語を話すくらいですから、「だめだっぺえ」と言っても、理解してくれてもいいですよね・・・。そう思いません?

   高山市役所の少し南、 「ひだしん」 飛騨信用組合 の本部・本店営業部 https://www.hidashin.co.jp/location/branch/honten/ があります。↓
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↑  右の方、カラフルな蔽いで囲まれた部分は、空調の室外機が内部に置かれているようです。 空調の室外機なんて、屋外にあるのはしかたないだろうが・・という程度に思う建築屋もいるのですが、「建築家」はそうではなく、そういった部分を、いかにしてデザインを損なわないか考えます。 この建物では、その空調の室外機の部分を、↑のように、むしろ、特徴的なデザインとして生かしています。 「信用組合」にしては・・・なんて言うと失礼かもしれませんが、一般に、都市銀行に比べて信用組合というと、「いなかくさい」「じじむさい」「とろくさい」「どろくさい」「おしゃれじゃない」というイメージがありますが、飛騨信用組合の本部・本店営業部の建物はなかなかおしゃれです。
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↑ 10月下旬の後半、高山では紅葉が本当にきれい♪

   宮川より東、国分寺通りの北側に、高山信用金庫 川西支店http://www.takashin.jp/shop/branch/002/002.htmlの建物があります。↓
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昨年、高山を訪問した時に、国分寺通りの東の続きである安川通りにある 十六銀行 高山支店http://sasp.mapion.co.jp/b/juroku/info/366/の建物が新しい建物に建替えられたのを見て、相当考えて設計された建物ではあるが、しかし、この場所の建物としては前の建物の方が似合っていたのではないか・・といったことを思い、それを、[第470回]《十六銀行 高山支店(高山市)、及、警察官のいない「交番」て、そういうのを交番と言うのでしょうか? 》https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201610article_26.html で述べて写真入りで公開しました。
  今回、高山信用金庫 川西支店の建物を見て、やっぱり、国分寺通り・安川通りに位置する建物としては、こちらの方が似合っているのではないかと思ったのです。十六銀行 高山支店の新しい建物は、何も考えずに建てた建物ではなく、その場に合うように考えて、同時に斬新な要素、独創的な要素も発揮してと相当考えて設計された建物ではないかとは思うのですが、しかし、安川通りという場所の建物としては、国分寺通りの高山信用金庫 川西支店の建物や十六銀行 高山支店の前の建物の方が似合っているのではないか、かつ、新しく建替えられた十六銀行 高山支店の建物はまったくだめなデザインとかいうものではなく、もしも、飛騨信用組合 本部がたつ高山本線の東側を南北に高山本線と並行に走る両側に市役所や裁判所などがある通りに建てられるのであれば、相当優れたデザインの建物ではないかと思ったのです。 場所として考えた時、あの十六銀行 高山支店の建物は、やっぱり、ハイカラ過ぎるのではないか。 そんなことを飛騨信用組合本部と高山信用金庫川西支店の建物を見て思いました。 どうでしょうか?、

  (2017.10.30.)

☆☆☆☆☆高山シリーズ第5回
1.内田康夫『風の盆 幻想』と巡る高山(1)喫茶店「ロスト」を探す https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201710article_5.html
2. 同 (2)高山ラーメン https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201710article_6.html 
3. 同 (3)「高山の郊外にあるK病院」https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201710article_7.html
4. 同 (4)高山市役所 〔今回〕
5. 旧 野首家住宅 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201710article_9.html
6. 旧 新宮村 郷倉 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201710article_10.html
7. 山岳資料館(旧 高山測候所) https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201711article_1.html
8. 飛騨合掌苑 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201711article_2.html
9. 「飛騨民俗村 文学散歩道」https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201711article_3.html
10.飛騨高山美術館 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201711article_4.html
11.名古屋から高山へ「ワイドビュー飛騨」https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201711article_5.html
12.高山駅から飛騨民俗村へ[上] 西口からの導入路。https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201711article_6.html
13. 同 [下] 玄関が出た家は変か? 「苦労」は「売り」にするものか?https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201711article_7.html
14、新上野橋から三福寺橋、山小屋て、なぜ洋風なの? https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201711article_8.html
15.「旧 吉城郡細江村の民家」(熱田神宮内) https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201711article_9.html

☆☆☆☆高山シリーズ第4回
1.日の出天満神社 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201610article_13.html
2.大八賀神社 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201610article_14.html
3.東山遊歩道(1)高山別院照蓮寺から東山白山神社へ 〔今回〕
4. 〃 (2)東山白山神社・大雄寺 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201610article_16.html
5. 〃 (3)雲龍寺・久昌寺・栄鏡院 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201610article_17.html
6. 〃 (4)洞雲院・素玄寺 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201610article_18.html
7. 〃 (5)東山神明神社 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201610article_19.html
8. 〃 (6)天照寺・法華寺 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201610article_20.html
9. 〃 (7)善応寺1.本堂 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201610article_21.html
10.〃 (8)善応寺2.地蔵堂 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201610article_22.html
11.〃 (9)宗猷寺 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201610article_23.html
12.〃(10)町年寄川上家別邸跡 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201610article_24.html
13.煥章館と煥章館2階から見た東山 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201610article_25.html
14.十六銀行 高山支店、早朝は無人の安川交番 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201610article_26.html
15.新装「高山駅」 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201610article_27.html
16.片流れ屋根のモデルハウス https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201611article_4.html

☆☆☆高山シリーズ第3回
1.藤井美術民芸館  https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201510article_1.html
2.高山陣屋[1]床の間、釘隠し・・ https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201510article_2.html
3.高山陣屋[2]白洲、土縁庇・・ https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201510article_3.html
4.高山市政記念館 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201510article_4.html
〔番外 宮川にかかる欄干に加圧注入木材使用の橋と 防腐防蟻剤について。 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201510article_5.html 〕
5.桜山八幡宮 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201510article_6.html
6.桜山八幡宮 摂社 天神社 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201510article_7.html
7.山桜神社、古い町並美術館、手長足長 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201510article_8.html
8.宮川交番、高山警察署、高山市役所 他 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201510article_9.html
9.飛騨国分寺、「和風ドーマー」、二重サッシ他 〔今回〕
10.新宿‐高山のバスの予約をインターネットで「後部」を希望すると。「労災」のおかげで歩行困難にされた話  https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201510article_11.html

☆☆ 高山シリーズ第2回は、
(1)国府町村山天神参拝1上枝駅から宮川沿い。https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201409article_2.html
(2)同2 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201409article_3.html
(3)同3浸透桝で雨水処理 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201409article_4.html
(4)あじめ峡、あじか、廣瀬神社、国府小学校https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201409article_5.html
(5)国府大仏、阿多由太神社https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201409article_6.html
(6)飛騨国府駅周辺。「耳付片流れ屋根」https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201409article_7.html
(7)松本家住宅・ヒラノグラーノhttps://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201409article_8.html
(8)松本家住宅・宮地家住宅https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201409article_9.html
(9)宮地家住宅・平田記念館https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201409article_10.html
(10)飛騨民族考古館1 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201409article_11.html
(11)同2 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201409article_12.html
(12)同3 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201409article_13.html
(13)同4 喫茶ばれん、質屋の入口から逃げる裁判官 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201409article_14.html
(14)飛騨高山まちの博物館https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201409article_15.html 
(15)東西反転プランでは玄関だけ移動するのかhttps://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201409article_16.html
〔(16)~(20)の前提、権威主義的パーソナリティーの「デザイナー」が「建築家」の名前で敬意を表した慶應日吉(新)図書館について https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201409article_17.html 〕
(16)高山の町家で曲がった松をわざわざ柱に使用するか? 1 JR日光駅はライトの設計でなければ価値はないか? https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201409article_18.html
(17)同2 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201409article_19.html
(18)同3 マーケティング的発想のない店 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201409article_20.html
(19)同4 店のコンセプトが理解できない建設部長 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201409article_21.html
(20)同5 「酒が飲めない人にも飲める酒」を勧められない「日本酒ソムリエ」 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201409article_22.html
(21)飛騨総社 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201409article_23.html

☆ 高山シリーズ第1回 は、
上 [第202回]飛騨天満宮、松本家住宅他https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201309article_7.html
中 [第203回]「天神」考察。居酒屋はいいかげんhttps://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201309article_8.html
下 [第204回]高山市の白山神社。高山市役所https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201309article_9.html

砂冥宮 (実業之日本社文庫)
実業之日本社
2011-10-05
内田 康夫

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≪ そのうちに、男の老人が「こないだ、安宅の関で・・・・・」と言い出したので、浅見は耳を欹てた。
「安宅の関で殺されたじいさんやけど、おれは見たがや」
(えっ――)
浅見は思わず驚きの声を上げかけたが、・・・・・
・・・・
「その話、警察に言いましたか?」
「警察? なんで警察に言わんないかんがや。わしには関係ないことやし」
「しかし、警察は目撃者を探してますよ。事件当日の被害者の足取りがまったく分からないので、困っているはずです。いまのお話を、ぜひ警察に教えてやってくれませんか」
「そんなん、いややわいや。わしは警察大きらいやし」
・・・・・
「だめやだめや、警察はだっちゃかん。警察みたいなもんに、何で教えてやらんなんがけ
・・・・・ ≫
( 内田康夫『砂冥宮』2011. 実業之日本社文庫 ↑)

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