滝野川会館と筒。「一里塚」バス停から本郷通り・蝉坂を経て上中里駅―平塚神社と浅見光彦【14/15】

[第626回]
[21] 滝野川会館
   本郷通りが、駒込から東大農学部の前の方へ行く道と田端駅の西口の方へ行く道に分かれる三叉路の、旧古河庭園の側でもなく、滝野川小学校の側でもない側、東側に「滝野川会館」がある。地図によっては、「滝野川図書館」と書いてあるものもある。
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↑  「滝野川会館」の建物は、けっこう大きな建物で、かつ、なかなか、デザインに凝った建物である。特に↑の左寄りの円筒形の筒みたいのは、あれは中はどうなっているのだろう?
  歩道橋には「滝野川会館前歩道橋」と書いてある。 だから、この交差点の名称は「滝野川会館前」交差点と言うのかと思ったのだが、グーグル地図とかを見ると、「西ヶ原」交差点と出ている。↓




( ↑ 「旗」マークが「西ヶ原」交差点、「滝野川会館前歩道橋」。 )
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↑ 歩道橋の上から見た「滝野川会館」。
    「西ヶ原会館」ではなく「滝野川会館」。 北区滝野川 という地名は今もあるが、この場所ではない。それなら、なぜ、「滝野川会館」とか「滝野川小学校」とか言うのかというと、「東京都北区」は「滝野川区」と「王子区」の2つが合併してできたものらしく、それゆえ、北区西ヶ原にあっても、滝野川会館、滝野川小学校、滝野川警察署、滝野川公園 という名前になっているようだ。
※ 滝野川会館 http://www.takikan.com/

   この建物全体が図書館なら相当大きな図書館だが、実はそうではない。 図書館は地下1階にある。地下1階には図書館の他、食堂がある。 午後6時までだが、この付近、食堂とか喫茶店とかがあまり多くないので、滝野川会館の地下の「レストラン」というのか食堂というのかは、図書館や滝野川会館利用者でなくても使えるので、浅見光彦は平塚亭がお気に入りとしても、食事などはここを利用するといいかもしれない。
   で、このでっかいビル、図書館は地下1階の何割かのスペースだとして他に何が入っているのかというと、公民館みたいな機能があるようだが、それだけでなく、「大ホール」とか「小ホール」とかもあるようだ。

   で、↑の写真の筒形になった所、あれ、中はどうなってるか、気になりませんか?  建築探偵団としては、これは確認しないではおれない!  ・・・・ということで、そこに行って見ると、筒の中は、↓
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↑ ・・・・なんか、すごい! と言えばすごいが、だから何やねん、といえば、だから何やねん・・。
   こういう公共施設で、構造と機能に関係のないデザイン・意匠に凝った建物を作るというのをどう考えるべきか。その部分に費用をかけなければその分の経費を節約できるのではないかと考えることもできるのだが、一方、デザイン・意匠にかける費用というのはムダ金なのか? 町の景観に寄与するのであれば、それは費用をかける価値があると考えることもできるかもしれない。 ↑の場合、地下1階への入口であり、東京都美術館の地下1階の入口もそうなのですが、このスペースがあるから、地下1階の図書館やレストランが、「いかにも地下」という感じではなく、なかば1階のような地階の雰囲気を持っているとも言えるわけで、その点で価値があるとも言える。

   この滝野川会館に入ってみようと思ったのは、建築探偵団として↑の円筒形の中を確認したいということもあり、地下1階の食堂で夕食をとるためということもあったのですが、それより大きな目的として、北区の図書館であれば、ゼンリン住宅地図の東京都北区のものを置いているのではないか、と考え、それを見たいと思ったからでもありました。
   ・・・・ところが、周囲の区のゼンリン住宅地図は置いてあるのですが、東京都北区のものは見当たらない。他の人が閲覧中なのか? と思ったのですが、付近のテーブルでゼンリン住宅地図を見ている人は見当たりませんでした。 これは、もしかして・・・・・。
   もしかすると、ここ、浅見光彦が通ったという滝野川小学校の道路を隔てた向かいにある滝野川会館にある滝野川図書館に、ゼンリン住宅地図の東京都北区のものを置いておくと、それで浅見邸の場所を調べて訪問しようというヤカラが続出すると考えて、あえて、北区のゼンリン住宅地図は置かないようにしたのだろうか? ・・・・なんか、ありそうな気がしないでもない・・・・。なぜなら、私自身が浅見邸の場所を調べようと思って来館したのだから・・・・・(^^)/

   浅見邸の場所だが、ゼンリン住宅地図で調べなくても、内田康夫『佐渡伝説殺人事件』にわかりやすく書いてあるので、『佐渡伝説殺人事件』を読めば、だいたいの場所はわかる♪
   内田康夫『熊野古道殺人事件』(2010.4.25.角川文庫)には、
≪ 「しかし、どうして小百合さんは、浅見の家の電話番号がわかったのかな?」
「それはきみのせいだろう」
「えっ? 僕のせいとはどういう意味だ?」
「小説に書いているじゃないか、浅見家が北区西ヶ原にあると」
「あっ・・・・・」
 内田は愕然とした。小説の巻末に〔この作品はフィクションであり、登場する人物、団体は実在のものと一切関係ありません〕と断り書きをしてあるけれど、そんなものは効果がないらしい。≫
と書かれている。 ということは、内田の小説の記述をもとに浅見邸を捜す人がいるのかもしれない。

≪ 「いましがた、坊ちゃまに電話がありました」
「ふーん、どこから?」
「それが、名前を言わないんです。ただ『浅見さんはいますか』って言うので、『うちは全員浅見ですが』と言ってやりました」
 須美子の口振りから察すると、かなり印象の悪い相手だったにちがいない。
「そうしたら、『探偵やってる浅見さん』て言うんです。本職は探偵じゃなくてルポライターなのに、困りますよね」
「まあ、いいさ。それで?」
「それで、出掛けていますって言ったら、伝言を頼まれました」
「ふーん、何だって?」
「それが、変なんです。『明日は旅行を取り止めにしたほうがいい』って」
「明日?」
・・・・・・・・ ≫
( 内田康夫『熊野古道殺人事件』2010.4.25.角川文庫)
   浅見の住所が東京都北区西ヶ原という内田の小説による情報で浅見家の電話番号がわかるということは、104に電話をして、「東京都北区西ヶ原の浅見陽一郎さんのお宅の番号をお願いします」と言えば、浅見家の電話番号を教えてもらえるということか・・・・・・?  かけると須美ちゃんが電話に出るかな? 警察庁のおっさんなんてのが出たら嫌だな・・・・・。
   「本職は探偵じゃなくてルポライターなのに、困りますよね」なんて言っても、内田康夫の小説の読者なら、誰もが、浅見光彦という男は「探偵」が本職であって、「ルポライター」てのは「世を忍ぶ仮の姿」だと思ってるし、どの作品だったか忘れたが、小説中に登場したどこかの警察署の署長も、「『本職はルポライター』とおっしゃるとうかがっておりますが、しかし、それは世を忍ぶ仮の姿で、その実体は名探偵であられる」とか言うておったと思う。
    内田康夫『遺譜 浅見光彦最後の事件(下)』(2017.9.25.角川文庫)でも、
≪ 「今日は別の話で来ました」
「ふーん、どんな事件?」
 どうしてもても事件から離れられないらしい。
「事件ではなく、真面目な話です」
「真面目でない事件なんてあるかい」
「ですから、事件ではないって言ってるんですけど」
 苛々して思わず語気を強めたらしい。さすがに内田も少しは感じたのか、「ほうっ」と言って、「コーヒーでも飲むか」と背を向け、ようやく応接間に通した。
「で、どんな話さ?」
「そろそろ足を洗おうかと考えました」
「えっ?・・・・」
 内田は浅見の足元を見て、「足が汚れているの?」と言った。絨毯が汚れるのを心配したのかもしれない。しかし見たところで、靴下を履きスリッパを履いているから、分かるはずがない。
「そうではなく、商売替えをしようかと考えているのです」
「えっ、ルポライターを辞めちゃうのかい。そうか、ついに探偵業に専念するか」
「ルポライターは辞めるつもりはありませんよ。辞めるのは探偵紛いの生き方です」
「紛いなんて謙遜する必要はない。もう十分、立派に探偵してるよ」
・・・・  ≫
と作者にして登場人物の「内田康夫」も「もう十分、立派に探偵してるよ」と発言しているように、浅見光彦という男は探偵の方が本業であって、ルポライターというのは「世を忍ぶ仮の姿」でしかないと、たいていの人間は思っている。

   『本当にあった笑える話』に読者投稿として載っていた話だが、「彼氏」と一緒に道を歩いていたら、「桜木」と表札の出た家があったので、「彼氏」が、「ここ、桜木さゆみ の家じゃないか? 今、いるかな」と言って、インタホン押しまくった・・・・と出ていた。 漫画家の桜木さゆみ さんの名前はペンネームで本名は「桜木」ではないはずで、「桜木」と表札の出た家も桜木さゆみ の家ではないはずなのだが。 同様に、もし、東京都北区西ヶ原に「浅見」という苗字の家があっても、浅見光彦の家とは限らないわけだ。 というよりも、「本職はルポライター」の浅見光彦の家ならまだいいのだが、「本職は警察庁刑事局長」のおっさんの家だと、うかつに訪問すると、「人相の悪い男」とか出てきて「転び公妨」とかされる危険があって怖いから、充分に警戒して、「訪問は御計画的に!」!ということになる。


[22] 都営南北線「西ヶ原」駅の上のあたりの本郷通り、及び、『後鳥羽伝説殺人事件』でたどる「一里塚」バス停→「平塚神社前」交差点→JR「上中里」駅。
   ↓は、都営南北線「西ヶ原」駅の南東側の出入口を出たあたりの本郷通りです。
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↑ 都営南北線「西ヶ原」駅の上の地上、本郷通り、北西方向(王子 方面)を見る。
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↑ 都営南北線「西ヶ原」駅の上の地上、本郷通り、南東方向(駒込、田端方面)を見る。




( ↑は、「旗」マークの場所あたりからの写真。 )

   内田康夫『後鳥羽伝説殺人事件』(1985.1.25.角川文庫)では、
≪ 「とにかくお引き取りください。これ以上お訊きになりたいことがおありでしたら、息子の方へ直接お出掛けくださいましな」
「あの、息子さんとおっしゃいますと、いまの方で?・・・」
「あれは次男の方でございます。申し上げておりますのは長男!」
「ご長男はどちらに・・・・」
「警察庁刑事局長をいたしております」
  勝ち誇ったように軀(からだ)を反らせた。野上はほうほうの態で退散せざるをえなかった。・・・・・
  しかし、それにしてもあの老婦人はなぜあれほど権柄ずくみたいな態度で、質問を拒否したのか不思議な気がする。いくら八年前の事故のことを忘れたいからと言って、今回の美也子の事件を解決するためなら、もう少し協力的であってよさそうなものだ――。
  バス停でぼんやり考えていると、洒落たスポーツタイプの車が停まった。
  「駅まで乗っていきませんか」
浅見光彦の顔が笑いかけている。
  「恐縮です」
野上が乗ると、車をスタートさせながら、
「何をお知りになりたいんです。僕が知っていることは話しますよ」
・・・・ ≫
  滝野川警察署の北西側に「国指定史跡 西ヶ原一里塚」というのがあるようです。↓




≪ 大鳥居前に一里塚(日本橋より2里目)があり、(七社神社は)旅人(旅行者)の守護神としての信仰もあります。≫(『北区神社めぐり』 )
  「北区コミュニティバス」というのがあって、「王子・駒込ルート」と「田端循環ルート」の2本で、そのうちの「王子・駒込」ルートは、・・・滝野川小学校―旧古河庭園―花と森の東京病院― 一里塚 ―飛鳥山公園・・・・ というバス停があるようで、浅見邸から最寄りのバス停は「一里塚」バス停で、おそらく、「国指定史跡 西ヶ原一里塚」のあたりにあるのではないかと思われますが、浅見邸を退去して、東京駅から広島方面に新幹線に乗ろうとしていたのなら、「一里塚」バス停からコミュニティバスに乗って「JR駒込駅」まで行って山手線で東京駅まで行くか、逆方向で「JR王寺駅」まで行ってJR京浜東北線で東京駅まで行くかですが、浅見光彦がクルマでバス停の前まで来て上中里駅まで乗せていったということなら、「JR駒込駅」行きに乗ろうとしていたのではないでしょうか。
※ 北区コミュニティバスhttp://www.hitachi-gr.com/bus/bus07/

≪ 車は神社の脇の坂道を下って上中里という駅の前で停まった。
「ここから東京駅まで真っ直ぐです」
「ありがとうございました」
野上は心底礼を言って、車を降りた。
・・・・ ≫
( 内田康夫『後鳥羽伝説殺人事件』1985.1.25.角川文庫 )

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( 本郷通り。 「西ヶ原」駅の上のあたり。 駒込・田端方面に向かう。)
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( 本郷通り。 「平塚神社前」交差点。 左に行くとJR「上中里」駅。 )
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( 「平塚神社前」交差点。 左右の道が本郷通り。向うへ向かう道が「蝉坂」。蝉坂の左が平塚神社。 )
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(↑ ≪神社の脇の坂道≫(「蝉坂」) 「平塚神社前」交差点からJR「上中里」駅方向を見たもの。左は平塚神社。)
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(↑ 「蝉坂」。 左側は平塚神社。左の階段を登った正面が社務所。 直進すると、JR「上中里」駅。 )
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(↑ 上中里駅に向かって蝉坂の左側にある「上中里西方不動尊」「摩利支天」。 )
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( ↑ JR「上中里」駅。 )
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( ↑ 「上中里駅前公衆トイレ」とJR「上中里」駅前ロータリー。 )





   『後鳥羽伝説殺人事件』では、最初、第一発見者から「いやな刑事だ」と不快に思われた野上が、なんとか事件を解明しようと努力し、ほとんど何もないところから、ついに犯人につながる人間を見つけたぞお~お・・・・というところで、犯人の1人である警部から停職させられてしまう。 浅見が野上を訪ね、野上が経緯を話した時、隣室で聞いていた野上の妻はそれを聞いて涙を流す。
≪ 「なんや、どうしたんじゃ」
「ううん、なんでもない」
「なんでもない言うて、おまえ・・・・」
「ただね、男の人って偉いなって、そう思っただけなの」
いそいで野上の脇をすり抜け、台所へ向かった。
「アホか・・・・・、みっともない」
野上は浅見を見て、苦笑した。浅見も擽(くすぐ)ったそうに微笑していた。
「いや、奥さん、偉いのは男ではなく、おタクのご主人ですよ」
・・・・・ ≫
( 内田康夫『後鳥羽伝説殺人事件』1985.1.25.角川文庫 )
   内田康夫の推理小説が、他の大部分の推理小説かの推理小説や刑事礼賛テレビドラマや『名探偵コナン』などと違うのは、刑事というものを「正義の味方」とかスーパーヒーローのようには描いていない、という点である。しかし、「人相の悪い男」とか「いやな刑事」で「チクチクした事情聴取をやる」のは「一種の性癖のようなもの」と言われるような男が、片方でなんとか事件を解明しようとして、そして、そのせっかくの努力を上役から評価してもらえなかったりする。 そのあたりの描き方が、実際にはそんなスーパーヒーローみたいな刑事なんていないだろうがと思われるような馬鹿馬鹿しい刑事ドラマとは異なる。 2つ以上の作品に登場する刑事にしても、長野県警の竹村にしても、警視庁の岡部にしても、スーパーヒーロー―のような登場のしかたはしていない。
   もしも、能力的にも優秀で人間的にも優秀な刑事というものがいたとしても、刑事の場合はそれを職業としてやっているのであり、職業としてやっている人間が、そうでない人間よりもその職業としてやっているものについて優秀であったとしても当たり前であって、国民の側からすれば、すべての刑事に能力的にも人間的にも優秀であってもらいたいものであり、「優秀な刑事」がいたとしても、だからといって、ヒーローの扱いをするべきものではないはずなのだ。 プロ野球の試合でも見ていて、ものすごいプレーをやってのける選手がいたとしても、プロの基準からすれば「当たり前」である場合がある。 もう、何十年も前だが、プロ野球のオールスター戦のラジオの中継に、タレントの前川清が出ていて、「いやあ、プロのピッチャーというのはよくあれだけ速い球を投げますね。また、バッターはよくそれを打ちますね」と言ったところ、解説者の江本孟紀が「ええ、そりぁもう、何しろ、それしか知らんのですから」と発言。 その後、テレビの野球中継で、巨人―阪神 だったかの試合を見ていたところ、巨人のショートに若手内野手がついていて捕球できなかったがエラーには記録されなかったという時、解説者の星野仙一が「あれを取れないショートは一軍の試合に出ないでもらいたいですね」と発言、アナウンサーが「でも、エラーじゃないですから」と言うと、星野は「エラーじゃないと言っても、あれを捕ってこそプロのショートでしょう。あれを捕れないならプロの内野手じゃないですよ。一軍の試合に出ないでください」と言ったことがあった。しろうとがやったなら「たいしたもの」でも、プロがやったなら「当たり前」である場合がある。テレビの刑事礼賛ドラマというのは、そのあたりの認識が欠落している。しろうとなら「たいしたもの」でもプロなら・・というようなものを礼賛している刑事ドラマや「推理小説」は珍しくないのではないか。内田康夫の場合はそのあたりを理解・認識しているのか、安っぽい刑事礼賛ドラマのような描き方のものはない。
   そして、「浅見光彦シリーズ」で浅見は、事件が解明された時、常に虚しさを感じる。解明しなければ良かったのかと疑問を感じたりもする。犯人にも三分の理というのかがあることもあるし、被害者といっても、殺されたことで「被害者」という立場を手に入れたのであって、殺される前においては、むしろ、被害者は加害者で、加害者の方が被害者であったというケースだって存在する。殺人事件が実行される前においては被害者であった殺人事件の加害者を悪者呼ばわりして得意がるような「推理小説」「刑事ドラマ」というのがあると思うのだが、内田康夫の小説がいいのは、そのあたりをきっちりと認識しており、単に、犯罪のトリックを解明して犯人をやっつけて得意がるような三流小説とは異なるところである。

  「浅見光彦倶楽部」というのがあって、1年分の会費を払って入会すると、いくつかの特典があり、ひとつは、内田康夫の小説の登場人物に会員の名前が使われる・・・というのが内田の本の巻末に書いてあった・・・・が。自分の名前が小説に使われるというのはおもしろそうな感じがしないでもない・・・けれども、だ。女性の場合なら、内田康夫の小説に名前が使われたとすると、それは「寅さんシリーズ」で「寅さん」浅見光彦の相手役の女性とかであろうけれども、男の場合だとどういう配役かというと、たいてい、殺される役か殺す役かどっちか、もしくは、「人相の悪い男」として登場する性格がねじくれた刑事の役か、もしくは、浅見光彦の友人か後輩か甥かで殺人犯と疑われて、「浅見、助けてくれえ」と泣きついて、「まあ、警察に泊まってみるのもいい経験だよ」とか突き放されて、この浅見て男、女に対する態度と男に対する態度と、態度、全然違うじゃねえかよお!・・・・と思わされる役とか、だいたいそういう配役なわけだ。 だから、名前を使われる場合は、そういうものだと思っておいた方がよさそうだ・・・・と思ったら、2018年3月、浅見が探偵をやめると宣言した直後、内田康夫は他界してしまった。

   (2018.7.18.)

☆ 平塚神社・平塚天神社と浅見光彦
1.裏口は嫌い。西ケ原駅 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201807article_3.html
2.国立印刷局、滝野川警察署、七社神社 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201807article_4.html
3.花森東京病院、滝野川公園、地震の科学館 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201807article_5.html
4.平塚神社全景、門柱、平塚亭 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201807article_6.html
5.平塚神社参道、社殿、蝉坂からの階段と社務所 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201807article_7.html
6.ユニークな狛犬、扇に日の丸の紋 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201807article_8.html
7.社殿の裏の岡。猫の死骸を「かわいそう」と思うか「気持ち悪い」と思うか https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201807article_9.html
8.菅原神社(平塚天神社)、石室神社 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201807article_10.html
9.城官寺、上中里駅、蝉坂、上中里不動尊、摩利支天 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201807article_11.html
10.旧古河庭園(1)洋館、つつじ園 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201807article_12.html
11.(2)心字池、雪見灯篭、石橋、兜門、染井門 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201807article_13.html
12.(3)茶室、黒ボク石積、崩石積、書庫 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201807article_14.html
13.滝野川小学校、「御子柴邸」 https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201807article_15.html
14.滝野川会館。「一里塚」バス停から「上中里」駅 〔今回〕
15.上中里駅、手摺のありよう、田端機関区、銭湯とサウナ https://sinharagutoku2212.seesaa.net/article/201807article_17.html

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≪ 山根部長刑事には浅見が何を考えているのか、しばらくのあいだ分からなかったらしいが、一人の老人が――老人に限ったことではないが――一万円札を一枚だけ持っていて、小銭はまったく持っていない状態というのは、たしかに不自然だ。
「何か、そのことに特別な意味でもあるんだすか?」
 奥山警部補が、不安そうに訊いた。
「ええ、たとえば、誰かに、東京へ帰る交通費でももらった感じではありませんか? それに、汚れた下着を何日も替えないでいたというのとが、どう結びつくか――です。その点を、警察ではどのように判断されているのですか?」
「警察としては、まだ何も判断は下してねえですけど・・・・
それが何か意味があるのですか?」 ≫
( 内田康夫『鬼首(おにこうべ)殺人事件』2009.7.30.祥伝社文庫 ↑)

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≪・・宮本も頷いてから、言った。
「しかし、それならなぜ名乗り出てこないのだろう?」
「それは、関わりになりたくないということか、あるいは事件に関係ない、何かの理由があるのでしょう」
「それにしたって、捜査に協力してくれてもよさそうなものですよ」
「ははは、市民は一般的にいって、警察は敬遠したいものです。 しかし彼女の場合、そのあとまた電話してきたそうじゃありませんか。悪い人間ではなさそうですよ」
「それはたしかに、電話はしてきましたが、そこまでやってくれるのなら、なぜ現れないかが、かえって不思議ですね」
 宮本はまだぼやいている。 ・・・・ ≫
( 内田康夫『金沢殺人事件』2015.4.20.祥伝社文庫 ↑) 

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