「一条の建物は完璧にいい」の反証2.筋交いの向き・寸法違いの丸太梁-一条工務店の浜松営業【6/ 】

[第693回]
【C】-5
《4》 筋交いの向きが片方ばかり。
  在来木造の構法において、柱は上から下への荷重に対しては相当の威力を発揮しますが、地震・台風・強風など横方向の力に対しては、耐力壁が適切に配置されているかどうかでその強度は変わります。枠組壁構法(ツーバイフォー工法)・木質パネル構法においては耐力壁は合板を使用しますが、在来木造の場合、在来木造でも面の耐力壁を使って建てる会社も最近はあるようですし、SE構法といって「ラーメン式の在来構法」といったものも最近は出てきているようですが、一般的には「戦後型在来木造」(「筋交い式木造」)〔用語として、「貫式木造」「戦前型木造」との対比として使われるが、「貫式木造」は戦後の今でも建てられているし、「戦後型木造」には筋交いを入れるのではなく合板など面を耐力壁として貼る方法をとるものもあるので、「帯に短しタスキにながしの表現」「必ずしも痒い所に手が届いていない表現」であるが)の場合は筋交い(すじかい)を耐力壁に入れます。合板などの面の耐力壁と筋交いという斜め材の耐力壁との違いとして、面の耐力壁は力が全体にかかり接合点も枠組壁構法(ツーバイフォー工法)であれば何か所もの釘での接合点に力が加わり、木質パネル構法であれば接着剤で枠材と接合された接合面全体で受けるのに対して、筋交いという斜め材の耐力壁の場合は柱・梁の交点と柱・土台の交点とにかけて入れ、その交点の部分に力が集中し、柱・土台・梁の内側に入れて圧縮方向に力が加わった時に効く「圧縮筋交い」の場合は圧縮方向の力には役立つが、引っ張り方向の力が加わった時には役立たないのみならず、接合がいいかげんであるとはずれてしまうおそれがあり、いったん、はずれた筋交いはその次に圧縮方向の力が加わった時にも役立たないことになるので、接合点においてきっちりと接合されているかということが大事であるということと、もうひとつ、面の耐力壁は方向がないので、どちら向きに入れるのかという問題がないのに対し、斜め材の耐力壁の場合は、効く方向・効かない方向というのがありますから、地震・台風・強風で力が加わったとき、その力がどのように伝わるのかということを考えて、適切な場所とともに適切な向きで入れる必要があります。この点で、面の耐力壁よりも斜め材の耐力壁は入れ方に注意が必要だということになり、その点で面の耐力壁の方が失敗しにくい面がありますが、線の耐力壁の方が力の伝わり方を考えやすい面もあります。
   さて、1992年の(株)一条工務店https://www.ichijo.co.jp/ の中途入社の新入社員研修で、浜松の展示場に勤務していた古橋(男。当時、40前くらい?)が、「面の耐力壁の場合は方向性がないのに対し、筋交いの場合は方向性がありますが、だから、筋交いを入れる木造は面の耐力壁のツーバイフォー工法より弱いのかというとそうではなく、片方の向きの筋交いばかり入れたのでは、片側からの力には強くて他方からの力には弱いことになりますが、そんな片方の向きの筋交いばかり入れるなどということはしませんから、片方の向きに入れたら次は逆の向きに入れて、その次はまたその逆の向きに入れてというように入れますから、家全体としてはどちらの方向にも強いことになります」・・と話したのです・・・が。 私もその時はそう思ったのです。片方の向きの筋交いばっかり入れて逆の向きの筋交いは入れないバカはあるわけないだろ・・とその時は思ったのです。しかし、在来木造の建物というのは、すべての建物が、筋交いを適切な場所に適切な向きで入れられているか? ・・・。
  ところが、1992年、東京都葛飾区の(株)一条工務店の建築中の工事現場を見に行くと、1階部分、すでに下地の床とはいえ床板が貼られていてけっこう工事は進んでいたのですが、筋交いを見ると、どうも、片方の向きばっかり入っているように思えました。但し、「思えました」というのは決して嘘は言ってはおりませんが、その時点で私は入社1年目でしたし、前職の住宅建築業の会社と通算してもそれほど長くありませんし、前職の会社は在来木造ではありませんでしたし、それほどまだよくわかっていない時期でした。ですから、どうも、片方の向きの筋交いばっかり入っていると思えたし、気になった以上は、見間違いでないかどうかよく見ないといけないと思って何度も見返したのですが、やっぱり、片側の向きの筋交いばかりが圧倒的に多いように思えました。 それで、東京展示場の事務所に戻って、主任で「一級建築士の宮崎さん」にそれを話したのです。「どうも、片方の向きの筋交いの割合が圧倒的に多いように思えたのですが、すでに、工事はけっこう進んでいるので、逆方向のものをこれから入れるということでもなさそうに思えましたが、あれでいいのでしょうか」と。もうひとつ、「筋交いの向きというのは、誰が決めているのでしょう?」とも質問したのです。宮崎さんは、自分自身も(株)一条工務店それほどものすごい実績があるわけでもないと自分で言っていたのですが、それにもかかわらず、新入社員として東京展示場に入社した人間10人以上をつけられて、その10人以上に親切に教えてくれる人でしたが、しかし、「筋交いの向きは誰が決めているのでしょうか?」という質問については、「現場で大工が決めてる」ということでした。「大工が決める」という場合、実際にはかなり優秀な大工もおれば、現実に「大工」と言うレベルに達していない第七か第六みたいな「大工」も世の中にはいます。第二か第三の「大工」に決められたのでは不安ですが、そんなことよりも、たとえ、担当の大工が十分に第九と言うに値する実力の大工であっても、その時に(株)一条工務店の建物は筋交いの場所を決めている人間は大工ではないのであり、筋交いの場所を決めている人間と向きを決めている人間が別人というのは、それはおかしいのではないでしょうか。 これは、設計事務所が設計した建物や設計事務所のおっさんに設計を依頼して設計させた建物にはよくあることで、 「設計事務所のおっさん」というのは、建築基準法はある程度知っていても、それを守っておけばいいくらいの思考しかない人が多いのです。そういう人は耐力壁としての筋交いの数は計算しても向きを考えず、場所は力の伝わり方から考えるのではなく窓や出入口の場所を先に決めて残った所を壁にしてそこに入れることにしただけ・・・という場合が多い。そうやって、決められた筋交いの場所に、向きは「現場で大工が適当に決めて入れてる」というのでは、結果として、必ずしも適切な向きで入らないケースが出てくるのではないか。やっぱり、筋交いの位置を決める人間と向きを決める人間は同じ人間が決めるべきであり、向きを考えずに位置だけ決めるというのは面の耐力壁を使用する枠組壁構法(ツーバイフォー工法)・木質パネル構法であればまだしも、方向性がある耐力壁である筋交いを使用する在来木造ではそれではだめなのではないか。そして、その葛飾区の工事現場では片側の向きの筋交いの占める割合が相当大きいように思えた点については、「そんなの、筋交いの向きなんて、適当だよ、適当。そんなのいちいち気にしてられないよ」と言うのでした。え? 筋交いの向きって、(株)一条工務店では「適当だよ、適当」・・・て、そんな「適当」なことだったの???

   ここで確認しておきたいと思いますが、「適当」という日本語には2通りの意味があります。ひとつは「しかるべく」「当に(まさに)適切なように」という意味で、もうひとつは「いいかげん」という意味です。ここで「一級建築士の宮崎さん」が言った「そんなの、筋交いの向きなんて適当だよ、適当。大工が適当に入れてるよ。そ~んなの、だ~いじょうぶだよ、大丈夫」という発言の「適当」は、「当に適切なように」という方の意味では「いいかげん」の方の意味です。 大丈夫か、そんなので???
   (株)一条工務店より前に在籍した小堀住研(株)は、もともとは在来木造の会社だったのですが、1970年代の途中から木質パネル構法をはじめ、1990年頃においては、施工棟数は木質パネル構法の方が多くなっていました。木質パネル構法が在来木造より優れた点として、小堀住研(株)は何点かを述べていたのですが、そのひとつとして、在来木造の場合、筋交いには方向性があるが、適切な向きで入れられておればまだいいが、いいかげんな入れ方をしている在来木造が少なからずある、というものがありました。 その在来木造の会社である(株)一条工務店で雇ってもらえたからには、木質パネル構法の側からのそういった批判に対して、きっちりと応えられるようにしておかないと・・・・と思って、建築現場をのぞいてみたところ、どうも、片方の向きばっかり入っていると思える工事現場があった。「思える」といっても、入社1年目でしたので、そんな感じがしたが、実際にはそれほど問題がないように入っていたのか、やっぱり、片方の向きのものが多かったように思ったのですが、それほど自信はなかったのです。それで、ともかく、質問すればどうなのか答えてもらえると思って尋ねたのでしたが、それに対する返答は「適当だよ、筋交いの向きなんて。そ~んなの、だ~いじょうぶだよ」というもので、なんとも、「適当な答え(「いいかげん」な)答え」でした。 そのあたりを見ると、(株)一条工務店の筋交いの入れ方が適切かどうか疑問を感じざるをえませんでした。その前に、筋交いの場所を決める人間と筋交いの向きを決める人間が別の人間というのは、これはおかしい。筋交いの場所を決める時、その筋交いの向きも同時に決めていないとおかしいはずなのです。ところが、筋交いの向きは工事現場で大工が適当に決めて入れている・・・というのでは、その部分において、木質パネル構法や枠組壁構法(ツーバイフォー工法)と比べて、耐力壁の入れ方という点で、真剣さが劣ると言わざるをえません。 そう思いませんか?
   私はこの(株)一条工務店に11年余りもいて、同社に入社した人間のうち1割もいない「永年勤続表彰」として時計をもらった人間ですから、その在籍期間の最初の頃と最後の頃とでは違いもあります。最後の頃、(株)一条工務店の工事現場での筋交いの入れ方・入り方を見ていると、入社1年目に葛飾区の工事現場で見て不安を感じた片方の向きばっかり入っているという工事現場は見かけることはありませんでした。入社1年目の1992年の頃は、「筋交いの向きは、現場で大工が適当に決めてる」というものだったが、その後、改善されて、あらかじめ、図面でどちらの向きか指定するようにしたのかもしれません。 ともかく、「筋交いの向きなんて、適当だよ、適当」という建物が、「すべての面に渡って、同業他社に比べて断然いい」「完璧にすばらしい」かというと、そういう基準で見るならば、あんまりいいとは思えませんね。そう思いませんか? 私は「いいかげん」という意味で「適当」なことを言ってませんからね。


《5》 寸法違いの丸太梁をそのまま入れる。
  1992年、埼玉県川越市で建てられた家の上棟の作業を手伝いに行きました。その頃、(株)一条工務店は、機械プレカットをやって建てているので、手加工の在来木造の会社と違って加工にバラツキがない、また、(株)一条工務店のプレカット工場はAQ認証を取得しておりプレカット工場としてもレベルの高い工場である、というのを「売り」にしていましたが、最近では、在来木造で建てている会社でも、機械プレカットで建てる方が普通になってきており、自社でプレカット工場を持っていなくても、材木業者(材木屋)がプレカット工場を持っていて、そこで加工したものを購入して使用することで、小規模な工務店や個人大工でも機械プレカットをした部材を使うことができるようになっています。今ではハウスメーカーから工務店・個人大工を通じて機械プレカットの方が普通になってきているので、「機械プレカットで加工して建てています」は今は「売り」にはなりません。
  (株)一条工務店が「売り」にしていたのは、機械プレカットをしていること、そのプレカット工場はAQ認証を取得していること、それにもうひとつ、松丸太梁(野物 のもの)の専用の機械を持っているというのがありました。 松丸太梁(野物 のもの)は、曲がった松の木を最上階の上に交差するように入れる(「しばり に入れる」と言うようですが)ことで、屋根の荷重が四方に分散される、上に凸になった丸太梁を入れることで、屋根の荷重が下に押す力に抵抗することができる、角材の梁桁材と違って繊維が途切れていないことで、その分、強度がある・・とされるもので、特に「地方」においては、上棟の際など、その家の最上階の上に太い丸太梁があるというのは見た目も良く、評価されるものでした。しかし、東京圏においては、浜松の研修で言われたこと、(株)一条工務店の先輩社員から言われたことをそのまま話しても、「要らないよね、そんなの」・・・とか言われ、逆に、「そんなの、欲しがったり、自慢したりするなんて、やっぱり、お宅は浜松の田舎の会社ねえ~え」みたいに言われることがありました。 地震で力が加わった時に、ダグラスファー(米松)の角材の梁と松丸太梁(野物)とどちらがいいのかというと、どうもよく分からないところもあります。 野物は角材の梁と違って繊維が途切れていないと言い、かつ、「しばりに入れる」(2本が並列ではなく交差するように入れる)ことで威力を発揮すると言うのですが、しかし、その「しばりに入れる」ために交差する部分で嚙合わせるように削りますから、削った部分は繊維は途切れていますし、上側に載った丸太梁は、その丸太梁が角材のダグラスファー(米松)の梁に載る部分での仕口のかみ合わせは浅くなります。そのあたりを見ると、たしかに、工事中の見た目は丸太梁の方がいかにも木造という感じがして見栄えはするのですが、実際にどちらが強いのかはよくわからないようなところがあります。そして、松丸太梁は重い。ダグラスファー(米松)の角材の梁もけっこう重いがそれ以上に重い。だから、上棟の作業をする際に運ぶのも大変。 吹き抜けにして松丸太梁を見せるようにするとなかなかかっこいいのではないか・・・なんてことも思ったのですが、(株)一条工務店のベテランの営業の某さんが言うには国産の松丸太を吹き抜けで見せるようにすると、松脂(まつやに)が大量に落ちてきて大変だというのです。そして、阪神淡路大震災の時の記事を見ていると、落下してきた梁の下敷きになって死亡した人があった、というものがありました。構造材は一般的には太いものの方が強度はあるわけで、強度があるものを使った方が建物は破壊されにくいはずですが、いったん、倒壊することになると、構造材の梁が落下してきてそれに下敷きになって怪我をしたり、下敷きになったことで脱出できなくなって死亡したりということがあるようで、その場合、落下してきた梁は大きく重いものであった方が下敷きになった人は怪我したり脱出できず死亡したりする可能性は高いことになります。ダグラスファー(米松)の角材の梁でもけっこう重いのですが国産の松の丸太梁となるとその重さは半端じゃないので、上から落ちて来られたのではたまりません。こういったことを考えると、はたしてどちらがいいのか、どうもよくわからないようなところもあります・・・が、そういうことはあっても、「地方」においては太い松丸太梁が最上階の上に入るというのは喜ばれることの方が多い。東京圏においては「すごい木ですねえ」と近所の人から讃嘆されることもあるけれども、「田舎の家みたい」とか言われることもあり、「要らないよ、そんなのお」とか言われてバカにされることもありました。こういうことを言うと、「そういうことを言うからいかんのだああ~あ!!!」と遠州人は怒るのですが、しかし、「そういうことを言うからいかんのだあああ~ああああ!!!」と言われても、私が言ったのではなく私が見込客から言われたのですから、「そういうことを言うからいかんのだああああああああああああああ!!!」と怒りたいのなら言った人に怒ってもらいたいものです。言われた人間に怒らないでほしいんですが、ところが、遠州人というのは言った人に怒らずに言われた人間に怒るのが好きなんですね。それが遠州人の習性のようです。
   私の場合は、何人かというと日本人である前に関西人であり、今現在は在東京圏関西人なのですが、福島県で5年間暮らした人間であり、何割かは福島県人、何割かは東北人だということもあるのかもしれませんが、松丸太梁は、構造上、あった方がいいのかない方がいいのかはどうもよくわからんのですが、というより、もしかするとダグラスファー(米松)の梁を入れておいた方がいいのかもしれないとも思っているのですが、それでも、あった方がいいよな・・・という感覚があるのです・・・が、都市圏で生まれ育ち「地方」で暮らしたことがない人は「うわっ、いかにも、い、な、かっ!」とか思う人もあるようで、言う人もあります。念のため、お断りしておきますが、これらの表現は私が考えた表現ではなく、私が言われた表現をできるだけ忠実に再現したものですからね。私が言われた表現であって私が言った表現じゃないですからね。
   川越市の建築現場において、上棟の際ですが、柱が立ち梁が載りして、2階の上に、その松丸太梁(野物)をレッカー車で吊って入れようとしたところ、寸法が違ったのです。本来よりもわずかに長かったようです。普段から機械プレカットではなく手加工で加工していて、松丸太梁ではなくダグラスファー(米松)の梁であったなら、最近ではノミが使えない大工(そういうのを「大工」と言うのか? せいぜい、第四か第五か第六と違うのか? と見る人もいますが)がいますが、川越市の(株)一条工務店の上棟現場に来ていた大工さんは、少なくともノミを使うことくらいはできる人で、松丸太梁ではなくダグラスファー(米松)の梁でもとから手加工の仕口であったなら加工し直すということをやってくれたかもしれません。しかし、1つには、松の丸太梁というのは太くて重いだけではなく、硬い! だから、ノミで加工するといっても大変。もう1つは、機械プレカットでは曲線の加工がされており、丸太梁を受ける側の仕口が機械プレカットで曲線の加工である以上、丸太梁の方もそれに合わせた曲線の加工をしないといけないことになり、なかなか大変です。
   2000年頃、栃木県栃木市の上棟現場を手伝いに行った時、柱の下の土台にホゾ穴が加工されていないというものがありました。そういう場合は、しかたがないから、大工がノミでホゾ穴を作って入れるものだと思っていたのですが、ところが、その現場の大工は、まったくためらうことなく、「ホゾを切り落とせえ」と言ったのでした。ホゾのない柱で土台に載っているだけで三角プレートでビスでとめられているだけの柱で、かつ、そこに筋交いの下端がとりついていたのであり、その柱は筋交いが下向きに力が加わった際に土台からはずれてしまうことになるのではないか。ある程度以上の大地震でなければそこまではいかないかもしれないが、少なくとも土台から柱がはずれる方向で力が加わるはずです。もし、私が営業担当の工事現場であったなら、「大工さん、プレカットの方が間違えて余計な手間かけて申し訳ないのだけれども、1か所だけのことだから、どうか、ノミでホゾ穴を作ってもらえませんか」と頼んでみます。しかし、工事担当はそれを見て、何も言わずに大工のやるままにさせていましたし、営業担当は新人ではなく私より年齢は若いが(株)一条工務店での在籍年数は私より古い人で工事課に在籍したこともある人で、私より経験のある営業担当が何も言わない以上は、それより経験は短い者が言うことないと思って黙っていましたが、私が営業担当であれば、「1か所だけのことだから、大変、申し訳ないけれども、どうか、ノミでホゾ穴を作っていただけませんか」とお願いします。お願いしても、「そんなの、ホゾ穴つくらなくても、ホゾを切り落とせばいいよ」と言い張るなら、「それなら、私がノミでホゾ穴を作ってもいいですか」とでも言います。私はノミの1本はクルマのトランクに入れて持っていますし、ホゾ穴の1か所くらいなら、できないこともないでしょう。もともと、音楽とともに美術が得意であった「増位山」ですから、いくら時間がかかってもいいなら、ホゾ穴を作れと言われると、そういう作業はけっこう好きです。大工として食べていくためにはそれなりの速さも必要でしょうけれども、大工じゃないですから、1か所だけホゾ穴を作ればいいなら、時間考えずにじっくりとやります・・・というよりも、大工だって自分が担当して建てる家はいい家を作りたいという気持ちがあるはずですから、あまりにも何か所もでは、それなら別料金くれということになるでしょうけれども、お願いすれば、1か所のことなら、ホゾを削り落とすのではなくホゾ穴を作る方を選んでいい家を作りたいと考えるのではないでしょうか。
   ・・で、その栃木市の上棟現場の場合は、ホゾ穴でしたので、ホゾ穴ならば、私でも小学校の図画工作か中学校の美術の授業の時の彫刻みたいなつもりで作ろうと思えば作れないこともなさそうに思ったのですが、さすがに、仕口を作れと言われると、それは大工さんでないと無理でしょう。川越市の上棟現場では、そこに来ていた大工さんは、通常のダグラスファー(米松)の角材の梁で、もとから機械プレカットではなく手加工で仕口を作るのなら作れる人だったようですが、しかし、松丸太梁というのは硬いし、機械プレカットでは曲線の加工になっている。「こんな硬いもの、切って仕口をやり直そうったって簡単にできねえぞ」と言うのでした。機械プレカットの問題点、特に松丸太梁で機械プレカットの問題点はそのあたりにあります。「機械加工は手加工よりも精度があり、手加工だと加工する人の腕の違いというのもあれば、同じ人が加工してもできのいい仕事とそうでない仕事もあり、失敗することもあるのに対し、機械プレカットの場合はバラツキがない」と(株)一条工務店は言っていたし、(株)一条工務店が言わなくてもそれが機械プレカットの長所だと一般に言われてきました。それは間違いではないのですが、機械プレカットが正確だというのは、あくまで加工する部分についてであって、どこを加工するのか、どの寸法で加工するのかを機械に指示するのは人間なのです。かつ、大工が下小屋で柱や梁を加工する場合は、加工しているのは大工ですが、機械プレカットの場合、プレカット工場でその機械を動かしているのは工場労働者であって大工でもなければ建築技術者でもないのです。そして、あらかじめ、大工が手加工で加工したものが、上棟の際に、寸法が不適切だったと気づいたのであれば、手加工で加工したものならば、短いものを足すことはできないにしても、長いものならそこで加工し直すということだってできないことはないのですが、ところが、機械加工したものはそうはいかないのです。
   2011年、新華ハウジング(有)〔千葉市。2013年に正式に倒産〕で、千葉県市原市の工事現場で筋交いが逆向きに入っていて、その現場の大工も「俺は図面の指示の通りに入れたんだよ」と言うので、「工事責任者」を自称していた植草A二(男。当時、30代なかば)に「筋交いの向きは誰が決めてるのですか」と言うと、「プレカット工場が決めています」と植草Aが言いましたので、「なんで、プレカット工場が決めるのですか。筋交いの場所は設計事務所が決めているのですよね。なんで、筋交いの場所を決めた人と向きを決める人が別人なのですか」と言ったことがあったのですが、植草A二は「プレカット工場が大丈夫だと言ってますから、絶対に大丈夫です、まったく何の問題もありません」と言い張るので、「なんで、まったく何の問題もないのですか。プレカット工場には、普通、建築の構造についてわかる人なんていませんよ。どうして、プレカット工場に筋交いの向きを決めさせているのですか」と言ったのですが、「プレカット工場が大丈夫だと言ってますから、絶対に大丈夫です」と言ってきかない、ということがありました。植草A二は自称「工事責任者」であり、本来、植草が工事現場を見てまわって、間違いのない施工がされているか確認して、不適切な所があれば指摘して対処するのが仕事のはずなのに、植草は工事現場を見に行かない。そもそも、クルマを運転しない「工事責任者」なんて、そこからおかしい。本来、植草が工事現場を見に行って、問題点は対処しないといけないはずなのに、それを私が指摘してあげているのに、それでもまだ、「プレカット工場が大丈夫ですと言ってますから絶対に大丈夫です。まったく何の問題もありませんから」と逆向きに筋交いが入った家を「大、丈夫です、絶対に大丈夫です!」と言い張るのでした。疲れる男です。筋交いの向きを「プレカット工場が決めてる」というのは、おそらく、プレカット工場というのはプレカット工場に届いた図面に向きが指定されておればそれに従ってやるところを、指定されていない場合には「適当に」決めて加工して、図面にも「適当に」書き込んでいる、ということではないでしょうか。この場合の「適当に」というのは「しかるべく」ではなく「いいかげんに」「でまかせに」の方の「適当に」です。
   さらに、2015年、フリーダムアーキテクツデザイン(株)〔本社:東京都中央区。社内公用語は大阪弁〕https://www.freedom.co.jp/ で、アフター課の山本大輔(男。当時、20代前半)が、「プレカット工場が構造を見てますから」と言い張るので、「普通、プレカット工場に構造のわかる人なんていませんよ」と言ってあげたのですが、それでも、「プレカット工場が大丈夫だと言ってますから大丈夫なんです」と言い張り、入居1年で壁と床の間にすき間が出ている家について、構造上、設計に配慮が足らないと思えるものを「まったく、何の問題もありませんからねえ」と「一番大きな声を出したものが勝つ」みたいに言いまくったのですが、あれは明らかに設計ミスですし、プレカット工場は言われた通りに切るだけが仕事であって、言われた内容が適切かどうかなんて判断していません。どうも、建築業界には、プレカット工場というものに対して実状以上に信頼して期待している人がいるようですが、プレカット工場の立場からすれば、構造上、問題がないかどうか、筋交いの向きはどちら向きに入れるべきなのか、といったそういうことまでプレカット工場に判断してもらいたいのなら、その分の報酬も払え! 単に切るだけのカネしか払わずに勝手なこと言うな! と言いたいところでしょう。
   「お~い、これ、どうする?」と大工何人かが言い合っていました。そういう場合ですが、(株)一条工務店が請けた仕事ですから、(株)一条工務店の工事担当が・・・・にしてくださいと言うものではないかと、その時、私は思ったのです。ところが、(株)一条工務店の東京事務所工務課の担当者は黙って何も言わない。だから、大工は、「これ、長いといっても、入れようと思えば入らないことはないが、どうする? 入れてしまうかあ?」と何人かで言い合って、そして、本来よりも長い丸太梁をそのままそこに入れたのでした。
   2階の上の丸太梁は、上棟の日に入れなくても、その日は、レッカー車で吊った梁は入れずに下に降ろして、大急ぎで新たに適切な寸法の丸太梁を加工してその工事現場に送り届けてもらうようにプレカット工場に依頼して届けてもらい、届けた時点で丸太梁を入れるということもできたでしょう。しかし、丸太梁は重くて人力で2階の上にあげることはできないので、レッカー車で吊る必要がありますが、上棟の日はレッカー車が来ていますが、別の日に入れようとするとレッカー車は来ていないので、その丸太梁を入れるために、もう一度、レッカー車に来てもらう必要があり、その費用がかかることになります。施主のミスではありませんから、施主にレッカー車の費用を1回分、余計に払ってくださいとは言えません。大工がミスしたわけでもありません。レッカー車は1日分の料金をもらって来たならば、梁を1本余計に動かそうが別料金くれとは言わないとしても、別にもう1日来てくれと言えば、レッカー車がミスしたのでもありませんから、別料金を払ってくれということになるでしょう。ですから、出すとすると(株)一条工務店が出すしかないでしょう。大工としては、(株)一条工務店が、レッカー車の費用は(株)一条工務店で負担するから、別の日に寸法の正しいものを入れるようにしてくださいと言えばそうしたでしょう。その場合も、レッカー車と別に、下で丸太梁をロープで括りつける人間1人ともう1人くらいは営業か工事担当がやるとしても、2階の梁の位置で丸太梁を入れる人間2人は必要ですから、大工は1人ではだめでそれだけの人数がいないといけないことになります。 (株)一条工務店としては、そうしてほしいのか、それとも、寸法が本来よりも長いとしても、無理にでも入れようと思えば入れられないことはないくらいの寸法なので入れてもらいたいのか、そのあたりをどちらにしてほしいのか指示する必要があります。大工の立場からすれば、そのあたりをきっちりと指示してもらいたいはずです。
   その時、工事担当は何をしていたか? その時、工事担当はどう指示したか?
 ・・・・(答え)何もしていなかったのでた。何もしなかった。何も指示しなかった。何も言わなかった。・・・というものでした。 きっと、どう対処していいかわからなかったのだと思います。しかし、それならそれで、自分が経営者ではないのですから、上役に急遽電話を入れて、こういう状況だけれどもどうしましょうか? と尋ねるべきだったのではないか。 その頃、まだ、携帯電話は世の中にあったけれども普及しておらず、かなり金持ちしか持っていませんでしたから、携帯電話はその工事現場にいる人間は誰も持っていなかったと思いますが、かわりに、公衆電話は今よりはるかにあちらこちらにありました。だから、自分で判断できない、判断することを会社から認められていないのならば、「急遽、会社の方に確認したいと思うので、大工さん、レッカーさんも、あと少しで終わるというところを申し訳ないけれども、一度、地べたにその丸太梁を下ろして少し待ってもらえませんか」と言って待ってもらった上で、上役に確認するべきだったのではないかと思います。大工のミスではありませんが、しかし、上棟の前に部材が届いているか確認はしているはずで、その際に寸法が違うものが来ているとは考えなかったでしょうし、寸法が正しいかどうかまで確認している人はあまりないのではないかとは思いますが、それでも、確認しておかなかったという点はあるのですから、工事担当が上役に電話して相談する時間の間、そこで待つくらいのことはしてもいいと思います。もっとも、すぐ上の上役も判断する能力がなかったかもしれないし、工事担当はそう思うから電話してきかなかったのかもしれませんけれども。
   施主は、その大工に仕事を頼んだのではなく(株)一条工務店に頼んだのに、なんで、大工が決めてるんだろうなあ~あ? と思ったのです。 しかし、大工が勝手だとかいうことでもなさそうです。大工だって、どうしたものか、レッカー車で吊った梁を前にして、しばらく何人かで考えていたのです。 でも、工事担当が何も指示しないし、工事担当に指示する能力はないだろうと大工も思っていたのでしょう。で、そこで入れずに丸太梁を地上に降ろしたとしても、(株)一条工務店がレッカー車をもう1日、手配することはないだろうと推定して、又、その丸太梁を地べたに降ろして入れなかったとすると、逆に「なんで、入れなかったんだ」と(株)一条工務店から文句を言われるかもしれないし、入れなかった大工が悪いと言われてレッカー車の費用を出せなんて言われたのではたまったものじゃない。それで、「入れちゃうかあ」となった・・・ということでしょう。
   本来より寸法が長かった、といっても、見てすぐわかるほど長かったのではありません。その本来より長い丸太梁を入れた後、その上棟後の建物を見ると、良さそうに見えました。「一条工務店の建物というのは、工事中に見ると、かっこいいですよね」とベテランの某さんに言ってみたことがありました。実際、かっこいいんですよ、工事中に見ると(^^)/ 「完成するとブサイクだけど、と言いたいのでしょうか・・・」なんて笑いながら言われましたが。これは、一般に、枠組壁構法(ツーバイフォー工法)や木質パネル構法の建物は原理としては地震・台風などに強いようにできていても、工事中の見た目という点では、在来木造の方がかっこいい、という点はあり、だから、枠組壁構法(ツーバイフォー工法)・木質パネル構法の会社より在来木造の会社の方が工事現場を見せたがる傾向があるのですが、在来木造の中でも、(株)一条工務店の建物というのは、工事中に見るとかっこいい建物でした。完成するとブサイク・・・かどうかは言わぬが花として・・・。その川越市のお宅も、お施主さんはこんなことは知りません。いい家ができたと思って喜んでおられたのではないかと思います。本来より長い丸太梁を入れたとしても、住んで生活に困るものでもないはずです。しかし、それでも、本来より長い寸法が適切でないものを入れたというのは事実なのです。そして、その時、(株)一条工務店の工事担当は何もしなかった、何もできなかった、というのも事実なのです。福島県いわき市の営業所長だったK野さんが、(株)一条工務店の工事担当のことを「工事担当者が職人に使われている」と言っていましたが、それでしょう。その人にもよるのでしょうけれども、工事担当者の実力がないから、だから、「職人に使われている」状態になるのでしょう。新人の工事担当者が職人に教えてもらうのはいいでしょうし、個々の仕事については実際にその仕事をしている職人の方がよく知っているというのもいいでしょう。しかし、(株)一条工務店としてどうするのか判断すべきところででも、「工事担当者が職人に使われている」という状態は、あまりいい状態ではないのではないか。川越市の現場の場合、大工が越権行為をしたというのではないと思います。大工は「おい、これ、どうする?」「長いといっても、入れようと思えば入れられないことはないが、入れてしまうか? どうする?」と何度も言っていたが、(株)一条工務店を代表する立場であった工事担当は何も言わなかったのですから。何も指示しないから、地べたに降ろしてしまったのでは、レッカー車がいない日に上にあげることはできないし、後日、「なんで、入れなかったんだ」と一条から文句を言われても困るし、ということで入れたのだと思いますよ。その時の工事担当者は若くて経験も浅かった、ということもあるかもしれないけれども、若くて経験の浅い者が担当である時、工事現場で何かあった場合にどうするか、というシステムができていない、というのは(株)一条工務店の問題点だったはずです。おそらく、今も大きくは改善されていないのではないか。 ・・(株)一条工務店の工事担当というのは、竹葉山みたいなもんか? 相撲協会は「白鵬には親方から注意した」と何度も言うけれども、白鵬は注意されたなんてちっとも思ってない。もとより、竹葉山は白鵬の付け人みたいなもんであって親方なんてものではないから、竹葉山が白鵬に注意なんてできるわけない・・・てそんな感じ? いや、そこまではひどくないか・・・。
   そういうのを見て、近藤路夫は「一条工務店の建物は、すべての面にわたって絶対的にいい」「一条の建物は完璧にすばらしい」「一条の建物は構造にしてもそれ以外にしても、すべてにおいて同業他社より絶対的にすばらしい」と言うのですが、なんで、そんなこと言えますか↑?↑?↑  営業は自分を雇ってくれた会社のものを売るのが仕事ですから、「絶対的にすばらしい」ものでなくても、「完璧にいい」ものでなくても、売るのが仕事ですが、実際問題として、↑の状況を見て、「絶対的にすばらしい」「完璧にいい」だのと言えますか? 言えないでしょう。 言う人間は、現場を見にいっていないか、見えない人間かでしょう。 見に行かない人間・見ても見えない人間が愛社精神のある人間ではないはずですよ。見て、はたして、こういうものはどう考えたものだろうか・・と考え、改善できるものは改善しようと努力する者の方が愛社精神のある人間だと思いますよ。違いますか?

  次回、もう少し、反証を述べます。

   (2019.4.12.)



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